- Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101293165
作品紹介・あらすじ
高知の芸妓子方屋「松崎」で、揃って修業を積んだ澄子、民江、貞子、妙子。姉妹のように睦みあって育った娘たちも、花柳界に身を投じる時を迎える。男と金が相手の鉄火な稼業を、自らの才覚と意地で凌いでゆく四人に、さらに襲いかかる戦争の嵐-。運命の荒波に揉まれ、いつか明暗を分けてゆくそれぞれの人生を、「松崎」の娘・悦子の目から愛惜をこめて描き、生きることへの瑞々しい希望を呼び起こす傑作連作集。
感想・レビュー・書評
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昭和初期。高知の芸妓子方屋「松崎」で出会った4人の娘、澄子・民枝・貞子・妙子。共に修業し芸妓となり、それぞれの道を歩んでゆく。
過酷な芸妓道。大陸に渡り、恋をし、終戦、引揚げ、戦後の混乱からの立ち直り…四者四様の生き様を、かつて姉妹のように過ごした「松崎」の娘・悦子が辿っていく。
幼い時を共に過ごしてきたからこそ、互いの境遇を羨んだり妬んだり、見栄を張ったり突き放したりする。それでも再会すれば、長く隔たっていた距離が一気に詰まるあの感じ、すごくよくわかる。彼女達に降りかかる苦難の数々はあまりに壮絶だけど、この骨太な物語から立ち上る、生きることへの執念に、心が揺さぶられる。
濃密な宮尾ワールド、もっともっと味わいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
淡々と人生が変わっていく様が真実味を感じる。
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胸が締めつけられます…。
この小説の主人公たちは、祖母の年代か。
その時代にこんなことがあったんですね。 -
時代は戦前から戦中、戦後へ。高知の芸妓子方家「松屋」で育った芸妓の娘たちを描く連作短編集。
厳しい花柳界、戦争での混乱、満州など、時代の荒波にもまれながら、明暗を分けていく人生。 -
若い女の子たちが骨の髄まで親にしゃぶられて、モノとして売り飛ばされていく様っていうのは見てて堪えるものがあるわ。つらいわ。
澄子も民江も貞子も妙子も全員つらいけど、特に悦子の心情描写には並々ならぬものがあって、これは作者自身の投影なのかなと思ったら、やっぱりそういうことみたい。つらいね。
なんつーかな、性風俗を題材にした小説なわけだけど、それをエロ目的で消化させてなるものかみたいな情念を感じる。
風景の描写が繊細で生々しくて、吹雪のシーンは読んでるだけで寒さで凍えそうだったし、遊郭の夜はうるさいしって感じだった。
名作ゆえにホントに読んでてつらかった。今もつらい。尾を引く。 -
【読了メモ】20210718
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20180520~0526 4人の芸妓の半生を幼馴染の子方屋の娘の視点で描いている。宮尾先生の流麗な文章にはつい引き込まれてしまうわ。
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読んで損はなし。
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昭和戦争期から4人の芸妓の生き様が描かれた連作短編集。著者独特の色艶の利いた節回しの文章が心地よい。理不尽な境遇を割り切り逞しく生きる姿勢は、現代に生きる自分にはとても持ち得る気がしない。
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この世界と言えば、「椿」のイメージがまた強く。
まだ続く宮尾登美子シリーズ。
綾子シリーズにも登場した、4人の芸妓を主人公とした話。
それぞれを主役に4章で構成されています。
しっかりものの澄子、頭が8分目と周りから言われる民江、食欲にとらわれて短い一生を終えた貞子、そして芸妓から足を洗い、社長夫人になった妙子。
貞子に関しては既に亡くなっていて久しいので、叔母からの話を聞いた綾子視点での話です。
一時期同じ家で同じ様に育てられても、その後の人生はその子の性格で変わって行くのだな、と妙子の兄弟での違った境遇を見て改めて思い、
またその家の正式な娘であり、4人に比べて金銭的に圧倒的に恵まれていて、何不自由ないお嬢様である綾子も、その家に育った故の苦悩があることは数々の本で痛いほど感じ。
「アルマン」という男性が出てきて「椿姫」の事が若干触れられています。この作品も冒頭、不吉花としてこの業界で避ける椿の花の植え込みについての記載から始まります。
この作品と椿姫が相まって、私の中でこの世界の女性と言えば椿、というイメージがより強くなりました。
読んでいる途中、この映画をナンノこと南野陽子さん主演で行っているということをネットで見て、予告編とか見た結果、タイトルはこれだけど中身は完全に岩伍覚書ですね。
鬼龍院花子の生涯と言い、宮尾作品は映画の題材としてだけ持って行かれたような感じなのでしょうか?