未見坂 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294766

感想・レビュー・書評

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  • とある地方都市で暮らしている人々の話。
    丁寧な文章で純文学のお手本みたいに感じました。
    読み進めると地方都市と登場人物の過去や現在の状況がだんだんわかってきます。
    「苦い手」のほのぼのしているけど、最後のちょっと寂しいかんじが印象に残りました。

  • 息の長い文体は昔から変わらないけれど、本当に日常の何気ない情景を精緻に描く大家になったのだなと改めて思った。75

  • 山肌にドミノ倒しのように立ち並ぶ鉄塔、緩やかなように見えて実は急な未見坂、そこを走るバス路線、坂の中ほどにある今は老人ばかりが残された市営住宅、寂れた個人商店・・・。
    尾名川流域の架空の土地に住む人たちのささやかな日常を描く物語は、子供の頃のどこか懐かしい匂いと、時代に取り残された寂しさを感じる。
    同じ地域を舞台にした物語ということで「雪沼とその周辺」のような作品でありながら、それぞれの登場人物が重なる安易な連作短編になっていないところもいい。

    堀江さんの作品を読むと、どんなもんだとばかりに意表をつくような小説や、紋切型の仰々しいキャッチコピーで飾られる小説がなんとも薄っぺらく思えて仕方がない。
    なにが起こるわけでもない日々、だれの日常にもありそうな情景が他にはないというほど絶妙の言葉で描かれ、「あ~そんなことあったな~」と懐かしい気持ちにさせてくれる心地よさ。
    自分の中にある原風景を反芻しつつ、いつまでも余韻に浸っていたくなる良質な物語でした。

  • 一箱古本市

  • 傑作『雪沼とその周辺』の姉妹編となる連作短篇集です。
    とはいっても、『雪沼とその周辺』を未読でも十分に楽しめます。

    『雪沼とその周辺』と本作は、どちらも静謐な文章によって紡がれた地域社会を舞台としています。両者の相違点を強いて挙げるとすれば、前者は総じて祝祭的であり、後者は総じて祝祭的でありながら陰影(たとえば入院、死亡、離婚などがもたらす陰影)にも富んでいます。

    いずれも魅力的な作風ですが、印象の強さでいうと、構想の瑞々しさが伝わってくる『雪沼とその周辺』でしょうか。

  • 【本の内容】
    山肌に沿い立ち並ぶ鉄塔の列、かつて移動スーパーだった裏庭のボンネットバス、ゆるやかに見え実は急な未見坂の長い道路…。

    時の流れのなか、小さな便利と老いの寂しさをともに受けいれながら、尾名川流域で同じ風景を眺めて暮らす住民たちのそれぞれの日常。

    そこに、肉親との不意の離別に揺れる少年や女性の心情を重ねて映し出す、名作『雪沼とその周辺』に連なる短編小説集。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    鎮守の森がある丘、常連客が噂話に興じる理髪店、自家製の団子を売るよろず屋……どこかなつかしい雰囲気が漂う架空の町を舞台に、人々の暮らしを丁寧に切り取った短篇集。

    表題作は、都会から戻ってきて、地元の新聞記者になった37歳の女性が主人公。

    小学校にあがる前から兄妹のように過ごしてきた「彦さん」に対する気持ちが変化した瞬間を描く。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • デジャビュ的な出来事を書いていながら何故だか凡庸にならないところが堀江敏幸の天才さで、プロフェッショナルな綱渡りを見ているような、あるいは、大体味がそろっちゃうような洋食じゃなくて、ほんとにうまい薄味の和食を食べたときに「あれ、これなんかうまい」って思うような、際立ったセンスのある人が手間をかけて作った素朴ごはん、って感じ。

    気取ってないけど実は語彙もすごく多い、すらすら読めちゃうけどじっくり読むと結構情報量が多い、いちぶんいちぶんも結構長いし、意外と文章に癖もある。それにこの『未見坂』の場合、子供視点の話なのに、子供以上の視点で書かれているのだけど、それが意外にも気持ち悪くなかったのが不思議だった。「なつめ」は少し冒頭に苦しさの気配を感じたけれど…。

    どちらかというと本人はアカデミズムの領域にいる人であるはずなのに、いやだからこそ岡目八目というのか、しかし、んまいなあ。

  • 200 みちくさ

  • 2013/2/9購入
    2014/7/27読了

  • 武田氏に勧められて、スノボ帰りのバス内で読んだ本。
    どこにでもいる、でも一癖も二癖もある、人たちの日常を切り取った一冊。どこかに影を感じながら、それでも日常を生きていく、その決意を感じとることができる。文章は日常の描写をきめ細かく緻密に描き、読み手は想像力を総動員して文章の世界につかり、徐々にその全貌がわかってくるようになる。こんなに静かで、丁寧な小説は久しぶりだった。
    最後の解説は、自分の言葉を代弁してくれたかのようにしっくりおちてきた。記念すべきブクログ第一弾!

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

堀江敏幸の作品

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