- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101296241
作品紹介・あらすじ
皆が信用する、そんな逸品だけを揃えましょう──智恵も回るし手も早い、京の呉服商「高倉屋」の御寮人さん・みやびが目指したのは、皇室御用達の百貨店になること、そして世界を相手に日本の工芸美術の素晴らしさを知らしめることだった。女だてらにのれんを背負い、幕末から明治を生き抜いて、皇室御用達百貨店「高倉屋」の繁栄の礎を築いた、破天荒な女主人の波瀾の人生を描く一代記。
感想・レビュー・書評
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常に前を向き、背筋を伸ばし、颯爽と突き進む生き様は同じ女性として憧れるばかり、ご主人を無くしてから後の恋物語もとても面白かった。全て順風満帆に生きたようでも、長い人生で様々な岐路に立ち、その時その時で辛い判断を強いられた事も沢山あったであろうと、晩年の回想で胸が痛みました。常に美しい物を見極め、日本人の誇りを持ち、それを現代へと繋げて下さった事に敬意を評します。
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3.9
玉岡かおるが書く女性は「こんなふうになりたい」と思わせてくれる -
玉岡さんの作品、これで何作目か…
主人公のサクセスストーリー。史実とフィクションの接点が見え隠れする作風にしっかりはまってしまった。
最近気づいたこと。
主人公の晩年の過ごし方。
この作品の主人公の御寮人さんは、晩年になって百貨店のベースをイメージして、それを手掛けた。この発想力、実行力に強い感動を覚えた。
自分自身が仕事人としての晩年を迎えたからか、ことをなした人たちの晩年に強い興味を抱く。 -
商家の跡取りの家付き娘みやびの奮闘記。
前向きでパワフルな女傑ってイメージだけど、肉親のあれこれに心を痛める姿は、どんな人生にも、人それぞれの重荷があるのかと思わさせる。
とりわけ、彼女の妹や姪の人生は、明治時代の女性への枷を思わせ、ただただ悲しい。
だからこそ、みやびを祝う最後の客として、彼女の恋に連なる人ではなく、あの人を登場させたのだろうか。希望の光をともすように。
薔薇の模様の包装紙の百貨店は、私にもおなじみです。 -
激動の幕末期から明治にかけて。
日本の都の象徴、天皇は京から去り東京へ。家業の呉服ばかりでなく、京都の産業は市場の急激な縮小、変化にさらされる。その中で、新たなニーズを見出し、新技術を取り入れ、更に持ち前の美意識を活かして家業を、地場産業を護り盛り立てた寡婦の奮闘。
男尊女卑の風潮、開国と不平等条約の理不尽など、ダイバシティ、グローバル化の現代的な要素をも強く感じさせる物語です。
主人公雅の胸のすく活躍の陰にも、性別や出自、植民地主義などによる差別が度々顔を出し、時代背景からさも有りなんとは思いますが、才能溢れる姪の富美に対する仕打ちには思わず怒りに身が震えてしまいます。
世の中、変えなくちゃ。
最後まで読んでから改めて第一章に戻ると、雅同様、様々な回想が去来し人生満ち足りた気分になれました。
久賀さん、どこ行っちゃったんでしょうね。 -
内容(「BOOK」データベースより)
皆が信用する、そんな逸品だけを揃えましょう―智恵も回るし手も早い、京の呉服商「高倉屋」の御寮人さん・みやびが目指したのは、皇室御用達の百貨店になること、そして世界を相手に日本の工芸美術の素晴らしさを知らしめることだった。女だてらにのれんを背負い、幕末から明治を生き抜いて、皇室御用達百貨店「高倉屋」の繁栄の礎を築いた、破天荒な女主人の破瀾の人生を描く一代記。
令和3年1月27日~2月3日 -
古着商を営む高倉屋の跡取り娘として生まれたのが、ががことみやびだ。
それと見込まれ婿に入った哲太郎とともに、幕末の混乱した京都の街で、高倉屋を呉服商として押しも押されぬ店に発展させていく。
失敗や挫折を繰り返しながら、そして思わぬ不運や裏切りに遭いながらも、持ち前の気質で新しい時代の流れを読み、未知の世界に挑んでいったみやび。その逞しさに爽快感を覚えつつ、女ならではの過酷な運命にやはり胸が痛む。
いまもある有名百貨店、高島屋のルーツがモデルだが、その人となりを示す資料はほとんどないらしい。そこを作者らしい力強い肉付けで描き切っていて読み応えがあった。 -
現在でもよく知られている百貨店等で、幕末期までの商家が母体となっている例が見受けられるということは知られている。本作の「高倉屋」もそういう会社がモデルになっているというのは判り易いのだが、それでも飽くまでも「作中の店」である。ディーテールに関しては、作者の想像の翼が大きく羽ばたいて、様々な挿話が登場している。
本作は、“御寮人”と呼ばれる立場の「勢田みやび」の回顧録という体裁で展開している物語である。勢田みやびが明治時代の後半の或る日に、若かった頃からの歩みを振り返り、娘に話して聴かせているという感じだ。
この勢田みやびが生きた時代、「女性である」ということには、「或る種の制約」というようなモノが在ったのかもしれない。が、作中の勢田みやびはそういうことを然程気に掛けているようにも見えない。寧ろ「家付き」ということで、「家=店」を「護る運命」を負っていることを「或る種の制約」と考えている様子が伺える。
そういう「或る種の制約」を負ってしまっていると感じている他方で、持ち前の旺盛な好奇心と負けん気で、可能な範囲で闊達に行動しているという中で次々と起こる色々な事態に向かって行き、息子達の世代へ「家=店」を繋げて行くのだ。
本作に関しては幕末期から明治期の京都に関して「街の人達の目線」で語られていることが殊更に面白かった。
<禁門の変>は、街の人達にとっては「生命が危険に晒され、財産が損なわれる戦禍」という以上でも以下でもない。そういう中での様々な挿話が在る。そして、皇室や公家達が東京へ遷ってしまったという大きな変化の中で模索された街の未来、それを担う商人達と職人達という視点での様々な挿話が在った。
本当に「色々な意味で興味深い」という物語であった… -
202004/