大いなる看取り: 山谷のホスピスで生きる人びと (新潮文庫 な 69-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101301815

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  • 東京・山谷。日本を代表するドヤ街。日雇い労働者の街であり、
    漫画「あしたのジョー」に出て来る泪橋はこの山谷の近くにある。

    高度経済成長期の建設ラッシュを裏で支えた街も、今では高齢
    化が進んでいる。日雇い仕事も少なくなり、仕事にあぶれた人
    たちの中には生活保護で暮らす人も少なくない。

    そんな山谷に民間のホスピスがある。「きぼうのいえ」とそれに
    付属する「なかよしハウス」だ。

    モデルはインド・カルカッタにあるマザー・テレサの「死に行く
    人たちの家」。行き場がなく、間もなく死を迎えるであろう人
    たちの為に設けられた施設だ。

    入居者は様々な事情を抱えて「きぼうのいえ」に辿り着く。
    米軍から拳銃500丁を密輸したこともあると語る男性、
    元料理人の男性は施設の職員に感謝のしるしとして手料理
    を振舞う。

    戦時中731部隊に所属していたという男性は、淡々とそこでの
    経験を語り、著者が持参した『悪魔の飽食』を手元に置いたまま
    旅立って行く。

    死を間近にしていかに最後の生を生きるか。暗くなりがちなテーマ
    だが、本書には暗さや高齢者福祉にありがちな理想論は一切
    ない。

    入居者と職員、そして度々施設を訪れて話を聞く著者との間に
    温かい交流があるばかりだ。

    重いテーマだけれど希望がある。看取る側にも看取られる側にも、
    充実感があるからだろう。

    家族に囲まれてもいても幸福な死を迎えられない人もいる。その
    対面に位置するのが「きぼうのいえ」での看取りではないだろうか。

    いかに生きたかも大切だけれど、残された時間をいかに生きるかも
    重要なのだなと思う。自分の人生に満足して、最期は肩の力を
    抜いてふっと逝きたいね。

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