歓声から遠く離れて: 悲運のアスリートたち (新潮文庫 な 72-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101332437

作品紹介・あらすじ

類い稀なる才能を持ちながら、勝ち切れなかった人がいる。勝利の女神に翻弄され、己を見失った人がいる。栄光を手にする選手の陰で、最後のピースを探し、暗闇の中で彷徨う彼ら。勝敗が全ての世界で、彼らは何を考え、その果てに何を見つけたのだろうか。人生のままならなさに、懸命に、ときにしなやかに立ち向かう5人の軌跡。文庫オリジナルで贈る、傑作ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 平泳ぎの高橋、なつかしいな。極めることの難しさは、スポーツだけではなく、それはまさに、我々の日常の中にこそ在る。

  • 類希なる才能と、運を手にしたアスリートの
    光と影を読むことができました

    ここにでてくるアスリートは
    恥ずかしながらほとんど知らないひとばかりでした。
    その世界では滅多に得られない結果を
    「出してしまった」人達

    彼らは運と才能で得た栄光がゆえに、
    生涯悩み、抜け出せず、苦しみ続ける

    常に結果を出し続けることの難しさ、
    常に前線にいる類希さを、
    この本で知りました。

    私達が良くTVでみるアスリートは
    それらを超えたひと握りの人達なんだ。

    最後の章に出てくる登山家は
    唯一その困難さをわかったうえで、
    自分の道を進むつよさを感じました。

  • スポーツに取り組む以上、本当の一握りのエリートを除いて負けや、引退や不本意な結果を受け入れる経験は必ずあるもの。努力を重ねつつも栄光にめぐり合えなかったアスリートを丁寧に取材したノンフィクション。次の一文にめぐり合えただけで、綺麗ごとだけではないスポーツの世界の本当の一面を感じました。以下抜粋”「どこの監督も言いますけど、強いチームには必ず陰の部分もあるんです。故障で走れなくなったり、練習についていけずに脱落したり。みんなが芽が出ているわけではない。そういうのを見るのが辛かった」がしかし、誤解を怖れずに言えば、勝利を第一義としたチャンピオンスポーツの世界にはそういう面は抜きがたく存在する”

  • 普段なかなか知ることのできない競技の人の事がよくわかった。こういうニッチな世界(というのは失礼だが)というのも面白い。

  • スポーツ選手も一人の人間。マスコミを通してしか知ることができないのに、それを鵜呑みにしていたのを反省。当たり前のことだけれど、その人に聞かなければ本当のことは分からないんだなぁと思った。

  • 才能があるだけでは勝ち続けられない。一度頂点に立ったタイミングだったり、野心のようなものだったり、性格だったり、日陰にいるアスリートたちが欠いていたものがあった。それが良いとか悪いとかそういう問題ではなくて、世界を舞台にした勝負を続けていくには向いていなかったということなのかな。
    解説の「無闇に努力をしないこと、『努力はした』というのは自分への言い訳」というのも納得。

  • スポーツノンフィクションやスポーツドキュメンタリーとは、トップアスリートの成功の裏側にある努力譚を記したり、かつて栄光に彩られた選手が困難の中にある様子を描いたりするものがほとんどだと思う。それはそれで興味深いし、読んでいて感動したり、刺激をうけたりするのだけれど、本書あとがきで高橋秀実が語るように、そうしたノンフィクションやドキュメンタリーは「『努力』を軸にした人生訓話」という側面が強く、時に説教めいたりもするので、読んでいて疲れたり、読むこと自体気が引けたりすることがある。

    その点、本書『歓声から遠く離れて 悲運のアスリートたち』は、「人生訓話」めいてないので、ノンストレスですいすいと読むことができた。あらゆる不遇な状況に翻弄され、期待されながらも結果がだせなかったということを描く点にこそ、一般の読者としてリアリティを感じたのも読みやすかった理由の一つ。

    「〈不運〉と決めつけられるのは決して気持ちのいいものではないかもしれませんが、そうした不遇を経験した人間にしかわからない知恵や、強さを描ければと思っております」と、本書の著者、中村計は書く。単なる訓話や悲劇の英雄譚にならぬよう、丹念に謙虚にアスリートを描こうとする中村計の筆致も一見の価値あり。

  • 覚めたドキュメンタリーでよかった。

  • スポーツの面白さは陽の部分ばかりではない、と思わさせる。「歓声から遠く離れて」というタイトルに惹かれた。雑誌連載のタイトルは「不運の名選手たち」というが、こっちのほうがいいのではないか。才能はあっても、それを最高峰の舞台で輝かせることがどれだけ奇跡的なことか。一方で、比類無き才能の輝きは、その一瞬を持ってして人を魅了し、そこには必ず物語が生まれ得るとも感じた。女子マラソンのランナー、プロゴルファー、三段跳びの日本代表選手、平泳ぎの日本代表選手、そして登山家。いずれも活躍ぶりはよく知られているアスリートと何ら遜色はないが、ただ一線が違ったのだ。時代の流れや人間関係、理由を挙げればきりがない。その悲運さが、またおもしろいと思ってしまう。今まで知ることができなかった、スポーツの別の面を見せてくれる本だと思った。

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著者プロフィール

1973年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部卒。スポーツ新聞記者を経て独立。スポーツをはじめとするノンフィクションを中心に活躍する。『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社)でミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』(集英社)で講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『佐賀北の夏』『歓声から遠く離れて』『無名最強甲子園』などがある。

「2018年 『高校野球 名将の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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