いつかX橋で (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (580ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101341521

作品紹介・あらすじ

空襲ですべてを失った祐輔は、仙台駅北の通称X橋で特攻くずれの彰太と出会う。堅実に生きようと靴磨きを始める元優等生と、愚連隊の旗頭となり不良街道まっしぐらな正反対の二人。お互い反発しつつも、復興の街で再スタートを共にする。そして、いつかX橋の上に大きな虹を架けようと誓い合う。不遇な時代に選ばれてしまった人間に、何が希望となり得るのか-心震える感動長編。

感想・レビュー・書評

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  • 終戦間際から戦後までの仙台を舞台にした物語。

    空襲で母親と妹を失い、天涯孤独となった祐輔は自分を見失うことなく、ひたすら真っ直ぐに生きて行く。特攻崩れの彰太と出会った祐輔は…

    動乱の時代をひたむきに真っ直ぐに馬鹿正直に生きて行く祐輔の姿が胸を打つ。人生とはこういうものなのかと納得しつつも、遣る瀬無い思いを感じた作品だった。

  • P572

  • 110511

  • 若者が希望を持ち始めてやりたいことやってくところが楽しくて一気に読んだらクライマックスでどーん!
    びっくりしたけど面白かった。

  • 「邂逅の森」を超える作品に出会いたいものの、トンデモ本にも遭遇させられてしまう熊谷達也の一冊。やっぱり気になるので読んでみれば、うーん、という感じ。

  • 戦後を必死で生き抜いて、幸せをつかめそうなところで
    そんな終わり方って。。。
    誰も幸せになっていないような気がする。

  • 切ない。なんでわたしの好きなキャラ死んでしまうん。久しぶりに青春小説を読みましたがたまにはいいものですね。

  • 戦後の仙台の街を舞台にした、青年たちの絆の物語。

    空襲により、母と妹をなくした土屋祐輔は、仙台駅北の「宮城野橋」、通称「X橋」で、特攻隊くずれの澤崎彰太と出会う。

    師範学校の学生であった祐輔は堅実な生き方を望み、靴磨きで日銭を稼ぐ。一方の彰太は違法なワイン造りに、ケンカ、そして愚連隊の旗頭へと、不良街道をまっしぐら、ウラの世界で成り上がりを目指そうとする。

    まるで正反対の生き方の2人の間には、それでも友情という言葉で簡単に括ることのできない、固い絆が生まれていく。

    そんな2人を温かく見つめる父親のような存在が、2人を自分の店舗に居候させてやる、バー『Louisiana』の主人・徳さんだ。ときに厳しく、ときにユーモラスで、飄々然とした性格の持ち主である徳さんは、我が子のように2人の青年の面倒を見、なにかれと尽力してやる。

    この徳さんと祐輔・彰太との関係もまた、強い絆で結ばれていく。

    そんな徳さんの店に淑子を温かく迎え入れてやる場面(第三章中盤)は、この小説のなかでの僕のお気に入りのシーンの1つだ。簡単に紹介しよう。

    武山淑子は、仙台の大空襲後、母の亡骸を探しに訪れた大願寺の火葬場で、当時、火葬場の手伝いのために住み込みをしていた祐輔と運命の出会いを果たしている(そこで、淑子が祐輔に言った、「たすける、という字が2つで“祐輔”。いいお名前ですね」という言葉も印象的だ)。

    しかし、母の遺骨は見つからず、やがて淑子はやむなく米兵相手の街娼へと身を持ち崩してしまう。そして、「X橋」で祐輔と再会することとなる。

    淑子は我が身を按じ、親切にしてくれる祐輔に強く反発する。凋落した己の姿を、最も見られたくない祐輔に見られてしまったことへの恥じらいを隠さんがための強がりであったのはいうまでもない。

    ある米兵の“オンリー”となった淑子であったが、やがてその米兵に呆気なく捨てられてしまう。冷たい雪の降る街に放り出され、行く宛てをなくした淑子が、傷心を抱えて辿り着いた場所が、祐輔の住まうバー『Louisiana』であった。

    祐輔と淑子は、火葬場で初めて会ったときから、お互いに惹かれるものを感じていたのである。祐輔は、淑子の住まいを徳さんに懇願する。はじめは渋い表情を浮かべた徳さんだったが、祐輔の熱い頼みを聞き入れ、行き場をなくした淑子を迎え入れてやる(もちろん、徳さんは祐輔が頼まずとも淑子を迎え入れていたであろうことは、小説を読めば分かる)。

    そして、祐輔と淑子の2人の新しい生活が始まった。祐輔と淑子、この2人の関係もまた、単なる愛情や思慕という言葉を超越した、強い絆があるように思われる。まだ成人にも達していない幼き2人ではあるが、2人がお互いを思いやる心は果てしもなく深い。それが、とても温かい。

    祐輔と彰太の絆。祐輔と淑子の絆。そんな若者たちを見つめ続ける徳さん。

    終戦直後の不遇な時代にあって、それぞれが暗く重たい過去を背負いながらも生きていかんとする姿は、しかし「不幸ではない」と感じた。生きていくだけでもやっと、明日をも知れぬ生活。そんな時代である。だが、自分が独りで生きているのではない、と強く実感させてくれる仲間や恋人、大人たちがいてくれることは、なんと強く素晴らしいことであろうか。

    そんな濃密な人間関係に胸熱くしていると、小説の最後に衝撃の展開が待っている。深い余韻に満たされて、最後の幾頁を何度も読み返した。

    人間が生きていくうえで、何が明日へと突き動かす原動力となるのか。何が人間を支えているのか。そんなことを深く考えさせてくれる傑作である。ひとりでも多くの人に読んでもらいたい小説だ。

  • 邂逅の森 を読んでからすっかりファンになった作家さんの一人。今回は仙台を舞台にした終戦間際から戦後2-3年後の話でした。
    邂逅の森 ほど迫ってくる感じはなかったものの、前半の空襲の様子や、生き残った人々が必死に生きる様子、その中での人々の絆、描写が見事です!
    あとがきの解説にも書いてあるように、仙台を舞台とした作品が多い作家さんなので、この震災以後、どのような作品を通じて何を訴えかけられるのか、ますます楽しみ。
    他の本も文庫になっていたら読んでみよう。

  • 空襲を受け焼け野原からの復興をめざす仙台。
    その片隅で生きることに必死な2人の若者を描いた作品。
    『いつかX橋の上に大きな虹をかけよう』と夢を語り合い友情を結ぶけれど進む道は別の道。

    不遇の時代で、重苦しい空気が伝わってくる。

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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