南冥の雫 満州国演義八 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.22
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本棚登録 : 159
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (618ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101343273

作品紹介・あらすじ

ミッドウェー大敗と本土初空襲。それは帝国の翳り。四郎は比島で抗日ゲリラの憤怒を体感した。少佐となった三郎は変転する戦を見つめ、太郎は自らの罪過が招いた惨劇に震えた。そして敷島次郎は劣弱な囚人部隊を率い、インパール作戦に加わる運命にあった。若き日駆け抜けた満州、彼の地より遠く離れた緑の地獄で男は何を想うのか。食い破られてゆく絶対国防圏。白骨連なる第八巻。

感想・レビュー・書評

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  • 流転の果てに、ひとつの浪漫が虫葬に沈む。戦争って、国家って、人の命って、一体何なんだろう。

    • kurodayさん
      yosshakingさん、フォローありがとうございます。これからもよろしくお願いします!!
      yosshakingさん、フォローありがとうございます。これからもよろしくお願いします!!
      2018/10/24
  • 次郎、南方の山林に散る・・・・・・。




    満州国もついに、全9巻中の8巻目まで読んでしまった。あと1冊でこの壮大な船戸ワールドを読み終えてしまうのかと思うと、寂しくてならない。


    辻政信
    牟田口廉也
    東條英機・・・・・・


    無能作戦立案、実行、強硬により数万・数十万の死傷者を出した男たち。その屍を尻目に終戦まで生き延びた者たち。

    ある者は、戦犯として挙げられつつも裁かれるのを嫌い自決。(なんと卑怯な。死に逃げず、自らの判断が国をどんな運命に導いたのかを見届ける義務のある人間だろうに)

    ある者は、平和を取り戻した戦後日本で代議士にまで上り詰める。(そもそも、そんな男になぜ票が集まったのかが疑問)

    ある者は、インパール作戦の責任逃れに終始する。
    (あげく、部下の無能さが作戦失敗の要因だと吹聴)


    ・・・・・・・一体なんだったんだろう、そんな一握りの馬鹿たれの出世欲や権勢欲のために生命を散らせていった日本人たちが、浮かばれない。


    ★4つ、9ポイント半。
    2018.10.19.古。

    ※あと1冊で完結ということで、読むのが勿体なさすぎる「満州国演義」、でも、8巻でこんな引き方をされたら・・・・、続きが気になりすぎる。
    すぐにでも9巻目を買いたくなってしまったが、なんとか我慢してもうしばらくは寝かせておこう。

  • かつて満州の大地を蹴り疾駆した浪漫は、遥か南冥の地で覇道の夢の果てに、静かに骸を晒した。
    哀しい。
    いよいよ最終巻が楽しみだ。

  • ついに第八巻まで読み終わってしまった。
    満州から始まったこの壮大な歴史小説も、残りわずか。
    満州国の最後を船戸与一がどのように描くのか、とても楽しみです。

  • 太平洋戦争、ミッドウェー海戦以降悪化する戦況、そして欠乏する物資、声高に精神論をとなえる政府・軍部、破滅への道をたどる日本が克明に描かれる。

    そして、その状況を映し出す様にこれまで歴史を見る役目をしていた敷島四兄弟も、歴史の波に飲み込まれ、破滅への道を突き進んでいる。

    最終巻は、間垣が敷島四兄弟に深く関わる理由が明らかにされる様だ。敷島四兄弟はどうなっていくのか?どきどきしながら最終巻を待つ。

  • 船戸与一の遺作となった歴史冒険小説の第八巻。自らの死期を知りながらも、命を削りながら綴った圧巻の大作。船戸与一が歴史冒険小説を書いたというより、船戸与一が自ら歴史を創ったと言っても良いくらいの濃厚な作品である。

    まるで間垣徳蔵に誘われるかのように、敗戦濃厚な戦争の渦に巻き込まれていく、敷島四兄弟。船戸作品に薔薇色の結末を期待してはいけないのだが、この巻で敷島四兄弟が破滅への道を突き進む姿がより明確になった。

    役人の太郎は自らが撒いた種で危機を迎え、大陸浪人の次郎は期せずして囚人部隊を率いてインパール作戦に加わる。陸軍少佐の三郎にもソ連の脅威が迫り、四郎までもが関東軍に召集される。

    残すは最終巻。まさか…結末を考えるだけで暗澹たる気持ちになるが、読まずには居れない。

  • 1928年~1945年の17年間の満州の歴史。登場人物4兄弟の視点で語られる。満州事変から第二次世界大戦終結までの流のなかで、南京事件、張鼓峰事件、ノモンハン事件、葛根廟事件、通化事件と有名な事件が次々と起こり、4兄弟それぞれの立場で事件と向き合う様子が描かれる。満州の歴史を詳しく知らなかったので、勉強になった。何が正しくてなにが正しくないのかなんてだれにもわからないと感じた。

  • 舞台は満州から東南アジア。兵站を無視した作戦に、末端兵士が翻弄される。馬賊の二郎はインパール作戦で死亡。

  •  船戸与一の畢生の大作「満州国演義」シリーズを初めて手にしたのはたしか7、8年前。新潮文庫版の刊行が始まった頃だ。書店の平棚に積まれた「満州国演義一 風の払暁」の表紙と帯の文面に心を動かされ、ペラペラとページを繰ったのがきっかけ。文庫本刊行に合わせて第四巻「炎の回廊」の途中まで読み進めたものの、雑事に紛れそこで中断。その後の展開はどうなるのかな?時々脳裏によぎるものの時間だけが過ぎていった。

     昨春、本の整理をし始めた時に再会した。本の整理は家人から言われ続けていることだが、自由時間が増えたことだし、のんびりやろうと覚悟を固めて、第一巻から再読し始めた次第。そして先日、「満州国演義八 南冥の雫」を読み終えた。再会できて本当に良かったと思う作品だ。本の整理は進んでいない。

     本作「満州国演義八 南冥の雫」は、1942年(昭和17年)4月から1944年(昭和19年)6月に至る時代を描く。太平洋戦争開戦後の日本軍の快進撃が一転、破滅への道を突き進む悲劇の時代だ。巻を重ねるごとに広範囲になる口絵地図。本巻では、太平洋を俯瞰し、東はハワイ諸島、西はインドを見渡す広大な地図だ。

    「小説」という方法を駆使して「歴史」の真実を抉り出そうとする「満州国演義」シリーズ。第二巻「事変の夜」著者後記に「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない。これが本稿執筆の筆者の基本姿勢であり、小説のダイナミズムをもとめるために歴史的事実を無視したり歪めたりしたことは避けて来たつもりである」とある。今でも記憶に残る言葉だ。著者のこうした姿勢が本作「南冥の雫」にも貫かれている。

     表題「南冥の雫」の響きはずしりと重い。辞書を検索すると「南冥」とは「南方の大海」とある。ミッドウェー海戦、ソロモン海海戦、アッツ島玉砕・・・各地で繰り広げられた戦争で「雫」のように消えていった多くの命を象徴しているようだ。

     こうした時代に、敷島四兄弟はそれぞれ、激動の歴史現場に立ち合う。長兄太郎は満州国の首都新京で国内外の転変するる情勢に翻弄されつつ、自ら招いた悲劇に慄く。四郎はフィリピンで戦争の悲惨な状況を目撃、関東軍特殊情報課に所属することに。三郎は南方戦線や大陸打通作戦の現場を目撃、ソ満国境機動部隊の中隊長に。読み進めるうちに、まるで自分が80年前の歴史の現場に立ち合っているように感じてしまう。引き込まれる作品だ。

     次郎は蘭印スマトラ、ジャワ島、ビルマ・・・南方方面を転々と。そして運命の糸に引き寄せられるように囚人部隊を率いインパールの地に。虫葬、蛍飯・・・終章に描かれるインパール作戦の情景はあまりにも悲惨だ。精神論に終始し兵站を軽視し過ぎた「成吉思汗作戦」。ほんの79年前、今頃の時季に行われた作戦だ。私たちは決して忘れてはならない。常に問い直すべき現実だ。本作を読み改めてそう感じた。

     いよいよ最終巻へ。「満州国演義九 残夢の骸」に進むとしよう。どんな結末が待ち受けているのだろうか。

  • 昭和18~19年くらいが舞台になっている。今巻の最後で次郎が死んだ。南洋の森の中で赤痢にかかり蛆に蝕まれるように死んでいった。四兄弟のなかで一番生き抜く力がありそうに思えたのに一番先に去っていった。生き抜く技術をもっていても生き抜く甲斐をもう失っていたのかもしれない。
    第1巻では日本人ながらに馬賊を率いてさっそうとしていたのに、いつの頃からか違う姿になり果ててしまった。いや、いつの頃からかではなく、馬賊をやめたときからだろう。次郎は最後に馬賊として駆けていた満州の大地を思い出した様子。

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