美の世界旅行 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101346236

感想・レビュー・書評

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  •  岡本太郎の文章って、よくわかんないんだけど、なんかパワフル。読み終わってから頭の中で反芻しても、けっきょく何だったっけ?となる。 でもその熱だけは胸に残る。

     巻末の解説によると、岡本太郎は「芸術はうまくあってはならない、きれいであってはならない、心地よくあってはならない」という三原則を唱えていたらしい。


     そんなものを凡人は芸術とは呼ばない。天才は感受性が違うらしい。


     冒頭は70年代のインドの旅からはじまる。この章が太郎の感性がもっとも敏感になり、躍動している。彼の美意識がよくわかる。静的できれいなものには目が向かない。暴れまくって猥雑なものに生命力を感じている。ガンジス河の川べりで沐浴する群衆のパワーに圧倒される。
     こういう現実を嫌悪する人は、そこに美を見いだせないが、太郎はそこに美を見出す。


     立ち止まって、目に美しく映るものが芸術ではなく、激しい奔流にもまれながら、魂が雄たけびをあげるような事象が好きなんだ。(自分でも何を言っているのかわからなくなってきたが、太郎の文章ってこんな感じ)
     山深い寺で座禅は組むのは死んでも嫌だが、ねぶた祭りでは先頭に立って山車を引き回すぞ!って感じか?


      自分が一番面白かった章はメキシコのところ。


     現在渋谷駅に常設されている「明日への神話」の制作秘話が興味深かった。あんな重いテーマを一流ホテルのロビーのメインに据えようとしたメキシコの精神性を褒めたたえている。
     生と死が日常のなかで隔てなく同居しているメキシコ(カラベラ祭りとかあるし)は、ケとハレの境を明確にする日本とは価値観が異なる。そういうところが居心地が良かったみたいだ。


     あんな大作なのに、渋谷駅であの作品に目を止めている人はそんなにいないと思う。みんな忙しく過ぎ去っていくだけ。もったいないなぁ。


     うん、我ながらひどいブクレポだ。


     でも太郎の文章は熱いぞ!
     それが伝わればいいや。

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著者プロフィール

岡本太郎 (おかもと・たろう)
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。『岡本太郎の宇宙(全5巻)』(ちくま学芸文庫)、『美の世界旅行』(新潮文庫)、『日本再発見』(角川ソフィア文庫)、『沖縄文化論』(中公文庫)ほか著書多数。


平野暁臣 (ひらの・あきおみ)
空間メディアプロデューサー。岡本太郎創設の現代芸術研究所を主宰し、空間メディアの領域で多彩なプロデュース活動を行う。2005年岡本太郎記念館館長に就任。『明日の神話』再生プロジェクト、生誕百年事業『TARO100祭』のゼネラルプロデューサーを務める。『岡本藝術』『岡本太郎の沖縄』『大阪万博』(小学館)、『岡本太郎の仕事論』(日経プレミア)ほか著書多数。

「2016年 『孤独がきみを強くする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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