せき越えぬ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101357799

作品紹介・あらすじ

東海道箱根の関所には、曰くありげな旅人が訪れる。離縁され故郷に帰る女。江戸から夜逃げをした夫婦……。実直な番士武藤一之介は、親友の騎山市之助から関所に関する法外な依頼をされる。一之介は逡巡するも決断する。友の人生の岐路に際し何もしないのは裏切りも同然。たとえこの身に害が及んでも必ず友を助けなければならない――。関所をめぐる人間ドラマを描いた圧巻の人情時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 若者達が友人を信じ、家を超えて助け合う物語。この若者達の友情が清々しくて爽快だ。
    小田原藩の軽輩の息子と重臣の息子が剣道場を通じて、身分の垣根無く付き合ってきた。この気持ちが続き、関所の足軽や関所で同様にトラブルとなった同輩達とも親しく付き合うようになる。それを通じて関所の不正を協同で質したことにより、関所の番人に抜擢される。
    以前出会った女性と片想いの恋の行方も有りつつ、親友の大罪への手助けをどこまですべきか悩む主人公。やはり、家よりも友情を取った姿に感銘する。

  • 箱根の関所。

    改めて、どうして? ここまで厳しくしなくればならなかったのか、初めて意識しましたね。

    歴史だけではわからないこともあるなぁとしみじみ。

  • 直木賞とってからさらに多くの本が出版された本屋の棚は溢れんばかりだ。手に取って読むとまた新しい違う文体で、やっぱり面白い。最初から面白いから。現代の闇を、事件を江戸時代に置き換えて描いたものが多くてわかりやすいね。箱根関所を超える物語はたくさん見てきたが、関所を守る務めるのは初めてだから、こんな役職にローテーションがあるんだ。最後にトモとの別れがあるのだが、あっさりと簡単に済ませてしまう。もっと身内が咎めを受けるとか思ったが、それは大丈夫みたいですね。関所を渡る人情噺もっと見てみたい

  • 文庫本の表紙絵からは、時代小説の形を借りたライトノベルの様相。しかし、内容はしっかりとした小説。
    思わぬことから箱根関所の番士を命じられた「武一」と、親友の「騎市」とを中心に話が進められる。
    表題作の『関越えぬ』は、武一と呼ばれる若者が、出会った女性に一目惚れをする話し。
    2編目の『氷目付』。箱根関所の番士の武一と彼の上司の話は、現代の新入社員の物語に似通う。
    関所で起こる事件ともつかぬ出来事が3,4,5編と綴られて、最終編でにわかに一転スリリングな展開となる。
    関所番士の武一が、あろうことかある人物の関所破りを騎市から依頼される。命を賭けて、友を助ける友情物語は清々しい読後感をもたらす。

  • 箱根関所をめぐる人間模様という時代物を読んだ。しかも、作者はついこの前に『心淋し川』で直木賞を受賞なさった西條奈加さんです。
    箱根の関所は幕府管轄とはいえ小田原藩に丸投げだったのです。そりゃそう、箱根峠は小田原しか登れない。そこで小田原藩の上級・下級武士たちが関所の役目につくのですが、組織有ればパワハラあり、仲間意識もうまれてくる。

    若き青年「武藤一之介(たけとういちのすけ=ぶいち)」は熱きこころもて親友との交流に、初恋のやるせなさに身をゆだね、日々悩みながら成長していくのだった。

    筆運びよし、いろいろよく調べてあって、はぎれがいいですね。『せき越えぬ』の意味深だこと!小さな章立ての「凉暮れ撫子(すずくれなでしこ)」なんて逸品。

    駅哀愁ものがたり、昔は関所が舞台だった!

  • 関所が物語の中心。
    今で言うと駅とかにあたるのだろうか。空港?

    町中ではないところが舞台というのは(時代が違うから元々だけど)非日常で面白い。
    箱根坂というとやはり駅伝が思い出されて、いつか歩きに行ってみたい…

    ミステリーじゃないけれど、物語に出てきた小さなあれこれが繋がっていて、読み進めていくと、あ、あのことか、と記憶力を試される。

    騎市ほとではないけど、頭で考える派なので武一のように思い立ったら行動な人は憧れる。
    2人の続きが見たい。あと岡衛吉がいい。ずっと交流を続けてほしい。

  • 西條奈加さんの描く登場人物の、対峙する人の心中を推察してその中心にあるものをなるべく大切に汲み取ろうとする様が素敵で夢中になって読んでいます。
    武一の関所でのお勤めの日々、様々な問題に直面します。そのひとつひとつに心を動かし、時に怒り不貞腐れ、やきもきしたり。でもそんな日常の中でも心の内で決して動かないひとつの柱として、幼なじみの騎市がいます。
    忙しない日常に埋もれることない武一の心持ちは読んでいて背筋がしゃんとするような気持ちになります。

  • 「箱根の関所破り」である。
    タイトルからして派手な冒険話になりそうだが、そうではなかった。逆に、そうではないからこそ、リアルなのかもしれない。
    キャラ立てが良く、続編が出たら読みたい。

  • 箱根の関所役人の日常が、いつの間にか二宮金次郎やシーボルトまで登場する史実混じりの憂国の志士の物語に変わっていた。
    でも、主要人物の造形が中途半端なのかイマイチ盛り上がりに欠けたなぁ。

  • 最後に盛り上がる。
    箱根の関所のしくみが朧げにわかる。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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