母なる凪と父なる時化 (新潮文庫 つ 17-3)

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  • 新潮社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101361239

感想・レビュー・書評

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  • 大学の時…?に、確か借りて(もらってない…よね)…読んだヤツを再読。
    なんか急にタイトルが思い浮かんできて、無性に読みたくなりました。
    函館舞台だったこともすっかり覚えてなかったよ…

    …そうそう、この「男の子だなぁ」っていう感じ。
    そして
    鬱々とした気分の時に読んだっていう記憶。
    純度の高い暴力と狂気に憧れなかったわけではないけれど
    結局、周囲と理性とに折り合いつけながら生きることを選んだ分だけ
    今も昔も(きっと何度読んでも)わずかに共感できない部分が残ってしまう。
    そしてそこが「あぁ、男の子だなぁ」の理由なのだけれど
    だからこれはもう、
    ぜひ、エネルギー有り余ってる男の子に読んでもらいたいな、と。

    学生時代を終えて何年も経った今読んでみると
    自分の中で、なんだか色んなことが繋がっていって
    「もしかしたら、この本は出会うべくして出会った本だったのかもなぁ」
    なんて
    思ってみたりはしてる。

  • 高校1年生のセキジは、同級生のリンチを受けて東京の学校を離れ、函館の高校に通うことになります。そこで彼は、自分とそっくりの風貌をした、レイジという少年と出会います。

    密漁に手を出し、ハルカという二つ年上の看護士と関係をもち、山谷という暴力団関係者と関係のあるレイジと行動をともにしながら、セキジはしだいにレイジのうちにもう一人の自分を見るようになります。

    自分とよく似たレイジを通して、それまで自分の知らない世界を見ることになるセキジの体験が生き生きとえがき出されているように感じました。

  • 人生・初・仁成でした。
    文字から映像が浮かぶほどに、函館に馴染んでいる自分。だからこそ感じる良さと悪さ。僕が対象?題材?つまり“函館”に近すぎるのかもしれませんね。自分の体験や景色とオーバーラップするという意味で。
    一切の先入観を排して読めば、普通に楽しめると思います。それ(先入観の排除)は、僕には難しかったかも。あと暴力=青春という安易な定義には、ちょっと賛同しかねます。でも、高校生って、そんなものかも知れませんね。

  • 芥川賞を取った時に立て続けに10冊ぐらい辻仁成の作品を読んだ記憶があるのだが、
    資本主義へのアンチテーゼみたいな感じの内容のが多かったような気がする。
    この作品は函館の情景に関する描写が秀逸で印象に残っている。

  • 好きな街、函館が舞台なので面白く読んだけれど、意味もないような暴力シーンが嫌で評価が☆4から3になった

  • 大人になるためにひとつの壁を超えることは読んでいて
    とても気持ちが良い。

  • デビュー作である「ピアニシモ」の完全なるリプライズである。ただしやはりここでもかつてあった「ロックの人が書いた小説」といった印象は全くない。全体的に非常にリアルで情感のある文章になっている。5月に函館にいき、街自体がもつそこはかとない哀しみのようなものに非常に惹かれたことからこの小説を読もうと思った。やはり舞台となる街の雰囲気を知っているかどうかというのは(特にこの作品においては)大きな意味があったと思う。

    ただし、少年が駆け抜けた短い夏の物語として非常に印象深いのだが、それと同時にどうしても食い足りない部分を感じてしまう。

    レイジと山谷の関係の描写がいまひとつ弱くそのため山谷をレイジが死に追いやるところの緊張感がはっきりしない。また僕は結局ハルカと関係を持ってしまうわけだが、ハルカをはさんだレイジと僕の関係も特に描写がなく曖昧なままだ。

    またタイトルもそれ自体は印象的であるが、この物語に果たして会っているかどうかというとちょっと疑問である。レイジの父親に関する描写は出てくるが、「父なる時化」というイメージではない。全体的にちょっとはしょりすぎでは?という印象が否めない。もう少し長篇として書き込んで欲しかったと思うのは贅沢だろうか?

    マコトとハルカの二人の年上の女性へのあこがに関する描写が、この年頃特有の感情と相まってみずみずしい。

  • 他の書評のところで何度も見かけて、読む気になったのですが、辻仁成は初めてです。
    最初に感じたのは、アラン・シリトーに代表されるイギリスの”Angry
    young
    men”との類似性。もっともアラン・シリトーなど読んだのは、はるか彼方の高校時代のためにすっかり忘れているけれど。
    鋭利な刃物のような鋭い文体です。私の大好きな開口健の、形容詞の羅列により鑿と鏨で一刀彫を彫るような力強い文体と違い、彫刻刀で板に鋭い線を彫り込むように物語を形成していきます。会話文に「」を使わず、文の最後に”ー”を付けることでに表現する手法も、会話文を物語の中に融合させるのに役立っています。
    ちょっと仕事がドタバタしたときに読むのはつらかった。もう一度、じっくり読むべき作品でしょう

  • 芥川賞候補

  • そっくりな同級生との出会いははまりこめず。
    密漁など高校生にあわない重さ。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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