夜の光 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2022
感想 : 196
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101363813

感想・レビュー・書評

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  • それぞれ悩みを抱える天文学部に所属する4人の高校生の友情もの。なんか、良かった。
    『研ぎ澄ませ、研ぎ澄ませ、集中しろ。無駄な時間は一秒もない』というジョーの一文がとても好き。
    高校生、まだまだ人生は長く、これから色々あるし、いっぱい悩めていいなぁと思ったりした。
    そして、結構、坂本司氏の文章、好きだなって思ったので、ほかの小説もこれから読むことでしょう。

  • 私をジョーと呼ぶ人間が、この世に三人だけいる。
    それだけで、私は戦えるのだ。

    初、坂木司さん。
    それぞれがそれぞれに、ままならない夜を抱える天文部の高校生たちの物語。

    4人の高校生、それぞれの視点で1章+エピローグ的な1章の計5章編成。1章につき、日常の謎がひとつ。
    4人それぞれのしんどさが描かれてるのにそれほど重くない。日常の謎も全然派手じゃないけど、この物語の重点はそこじゃない。
    4人の関係性と絆がすごく素敵で、魅力的で、すごく落ち着いた物語だったと思う。
    あまりこう言う雰囲気の小説に出会ったことがない。

    4人の高校生たちはいろいろしんどいことがあって、それでも社会に擬態して生きていくことを”スパイ”と表現している。
    しんどさを超えるために天文部の活動と称して夜を共に過ごすわけだけど、この4人、クラスが同じだったら友達になってないと言うほど性格もタイプもバラバラ。でもだからこそ、いい。普段属してるコミュニティの外に、自分の居場所があることがどれだけ救いになるかがよくわかる。

    あと、4人が4人ともお互いに踏み込みすぎないのもいい。自分の属するコミュニティや社会に違和感を持ってることは察してるけど、それがなんなのかを具体的に他の3人に話したのはギィだけだったはず。またその距離感がいいと思う。
    わかりやすく、仲間で助け合うわけじゃないし、何か大きな事件が起きるわけでもないけど、一番深いところで繋がっている。こう言う人との繋がりもあるんだなって思った。

    あと、全体を通して、嫌な考えの持ち主は出てきても、悪意は出てこなかったと思う。
    特に田代先生の無関心さはいい無関心さで、いいキャラしてるなって思う。ギィとブッチのバイト先の人も優しくて、そこから、それぞれがちゃんと誠実に生きてきたんだろうなって言うのが垣間見える。

    落ち着いた夜に、しっとりと読める一冊だった。



  • 約束は交わさない。別れは引きずらない。大事なのは、自分に課せられた任務を遂行すること。正体を隠しながら送る生活の中、出会う特別な仲間たち。天文部での活動を隠れ蓑に、今日も彼らは夜を駆ける。ゆるい部活、ぬるい顧問、クールな関係。ただ、手に持ったコーヒーだけが熱く、濃い。未来というミッションを胸に、戦場で戦うスパイたちの活躍を描く。オフビートな青春小説。

    どこにでもいそうな高校生4人。
    天文部という繋がりだけで、いつも一緒にいるわけではないけれど、生き辛さを抱えているという共通点で、心の奥底で繋がっている関係性が好き。
    高校を卒業しても、この4人の不思議な繋がりはずっと続いていくのだと、なぜか確信が持てる。
    弱いけど強い、4人のお話。大きな事件は起こらないけれど、不思議と印象に残る一冊。

  • 何度でも読み返してみたくなってしまう本。
    今はそれぞれみんな辛いけれど、乗り越えて行けるって、私も乗り越えて行けるって思わせてくれる。
    読後感のスッキリさが好き。

  • 確かにスパイかもしれない。
    高校の天文学部に所属する4人の男女。
    責任も取らせてもらえない年齢だからこそ、思うように生きられない歯痒さがある。
    それでも彼らは自分の行く手を阻むモノから、密かに逃げる準備をしている。
    口に出さずとも同志だと分かっている、そういう関係性って強いと思う。

  • 第87回アワヒニビブリオバトル「【3日目】おうち時間DEビブリオバトル」4時間目 HRで紹介された本です。
    オンライン開催。チャンプ本。
    2022.05.05

  • 高校の天文学部の青春物語。
    ・季節外れの光
    ・スペシャル
    ・片道切符のハニー
    ・化石と爆弾
    ・それだけのこと

    それぞれ問題を抱えた男子のブッチ、ゲージ、女子のギィ、ジョーが、学校で起きる不思議な事件を解決する。

    思春期特有の生きづらさを、未来への糧にしながら、羽ばたく4人の物語。

  • あらすじと本編の内容が良い意味で全然違って裏切られた一冊。
    高校の天文学部の4人の部員達はそれぞれ周りの境遇と戦うスパイ。個人主義の彼等はかけがえのない絆で結ばれている。夜の観測会シーンで坂木さんお得意のお食事シーンもあり、楽しませてくれた一冊でした。

  • こういう友達、仲間、いいな。

  • スパイのミッションというかたちで自分の置かれている環境から距離をつくり、客観視する姿は、高校生という親も庇護下にいる檻からの脱出、所謂自我の表現、ある種の成長の第一歩を表しているのかと思う。そこ一歩を踏み出すことは一人では成し得ないもので、苦しい状況にいる仲間と同じミッションをしているという共闘があることによって成し遂げたものである。

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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