浮かれ三亀松 (新潮文庫 よ 21-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (489ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101376240

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わるのが惜しくなるような、そんな本に巡り合うことがあります。これもそうです。といいますか吉川潮先生の本はすべてそう。今回も味わい尽くすようにゆっくりと時間をかけて読みました。
    戦前から戦後にかけて活躍した芸人、柳家三亀松の一代記。都都逸、さのさ、三味線漫談、そのどれを取っても一級品。
    芸もさることながら、私生活のハチャメチャぶりといったらありません。数多の芸者と浮き名を流し、元宝塚スターとの結婚式を抜け出して愛人宅を回って別れ話をつける。
    金遣いも派手そのもの。借金してまで飲み歩き、芸人仲間に奢る、裏方連中に心づけを振る舞う。まさに江戸っ子の見栄ですね。
    個人的に感激したといえば、私が仕事をしている「岩見沢」が出てきた場面。戦中、北海道巡業で岩見沢を訪れたのですね。舞台で「皆さんも大事な物は防空壕に入れておいたほうがいいですよ」と言ったものだから、巡査に咎められます。それをとっさの機転で切り抜け、楽屋連中から「さすが先生。いい啖呵を切る」と褒めそやされ、株を上げます。
    三亀松が人気絶頂の時に岩見沢へ来て、こんなエピソードを残すなんて感激です。
    これで吉川先生の「江戸っ子芸人三部作」はすべて読了。春風亭柳朝、廣澤寅造、そして柳家三亀松。どれも痺れました。参りました。至福の時間でございました。

  • 三亀松さんの藝が
    突出しているのはむろんのこと
    その藝を
    こよなく愛した
    贔屓の人たちの
    歓声と拍手が
    伝わってくる

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著者プロフィール

演芸評論家、小説家。1948年生まれ。
立教大学卒業後、放送作家、ルポライターを経て演芸評論の道に。
1980年からは小説を書きはじめ、「芸人小説」というジャンルを切り開く。
2003年~2014年、落語立川流の顧問をつとめる。
著書に『江戸前の男』(新田次郎文学賞)、『浮かれ三亀松』(以上、新潮文庫)、『流行歌 西條八十物語』(大衆文学研究賞、ちくま文庫)、『談志歳時記』(新潮社)、『芸人という生きもの』(新潮選書)などがある。

「2016年 『深川の風 昭和の情話それぞれに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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