遠くの声に耳を澄ませて (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101384313

作品紹介・あらすじ

端々しい感性と肌理細やかな心理描写で注目される著者が紡ぎ出す、ポジティブな気持ちになれる物語。看護師、会社員、母親。その淡々とした日常に突然おとずれる、言葉を失うような、背筋が凍るような瞬間。どん底の気持ちを建て直し、彼らが自分ひとりで人生に決断を下すとき何を護り、どんな一歩を踏み出すのか。人生の岐路に立つ人々を見守るように描く、12編の傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 雑誌「旅」でも連載小説だったようで、短編12編、1年間というところでしょうか。
    各短編、旅に出た人、旅人を待つ人の想いを、鮮明にというより曖昧さの中から模索して読む感じです。
    松尾芭蕉の “旅に病んで夢は枯野をかけめぐる”という一句が「うなぎを追いかけた男」にでてきます。全編に共通する心情という感じです。
    「アンデスの声」は、既視感があり、「国際放送が選んだ日本の名作」からの再読でした。3作目あたりで、登場人物の重なりに気が付き、読み直しました。それぞれ、読み切りできる短編ですので、状況説明は不十分で曖昧さを持たせてあります。気が付かなかった事もあるかもしれません。
    「アンデス」の倒れた祖父の容態を心配していた瑞穂は、「秋の転校生」や「白いたび」でその優しさを愛されていますし、「うなぎ」で芭蕉の句を思う濱岡さんは、「クックブック」で若き日を語られています。短編のつなぎの想像も楽しいですね♪

  • なんだか懐かしい想いに包まれる短編集。説明はつかないが、説明なんていらないのだ。感じ入る、という感覚、気持ち。温かくも一本筋の通った揺るぎない“何か”が、ただそこにあるという感じ。またいつか読み返したくなる一冊。

  • pー270のページ数なのに12の作品

    短編は苦手と思ってる、読解力なくて
    読み取れない。

    しかし宮下奈都の「遠くの声に耳を澄ませて」は違ってた。

    たぶんいろんな感性が合うのだろう、
    細やかで、心理描写がよく分かる「自分なりに」
    嫌なこと、悲しいこと、何とも知れない困ることが作者と同感できるのだろう。
    ーどこにでも猫がいる「短編の題」
    ーミルクティ
    クックーブックの五日間
    とくに感情移入した。
    作品の中でも繋がっているところもある

    やはりこれらの中にも、作者の見守るような優しい眼差しがある。
    読後このほんのなかから
    また、歩き始める人がいるだろう。

  • 熱に浮かされたような恋に朱鞠内湖へと旅行に出かけ、その風景に熱を覚まされて自分の道を見つける二人を描いた「クックブックの五日間」ほか、屈託の日々からちょっとだけ前を向く短編集。

    宮下さんの短編集です。特に理由もなく手に取ったのですが、気楽に読めました。ただ、ちょっと心に引っかかるお話がなくてするすると読み終わってしまった感だったのが残念でした。もう少し丁寧に心理描写を重ねたらよい作品になったのでは、と思いました。
    作中に出てくる登場人物がそこはかとなく繋がっているのが読みどころで、あっちのエピソードとこっちのエピソードがふっと時空を超えてつながったりします。キーワードは台湾と鳥取県か。出てくる登場人物をよく覚えておきましょう。

  • それぞれ独立した話かと思いきや、微妙に登場人物の繋がりがあり面白かった。
    各話、各主人公目線の語りになっていて主人公の名前がほとんど出てこないのではじめは気づかなかった。
    一番多く登場するのは、濱岡さんかな(名前は出ずとも、マンションの管理組合のおじさんという立ち位置で)。
    宮下さんらしい、静かで淡々とした温かい短編集だった。
    「どこにでも猫がいる」「クックブックの五日間」「ミルクティ」が好み。

  • 読後感、スッキリ!

  • 時間と空間の奥行きと、人とひとの関わりから心に生まれるひっかかりを柔らかく描いている。
    それぞれの作品の登場人物がリンクしていて、リンクしている存在に主役は大なり小なり心をざわつかせている。
    このざわつきが、遠くの声なのかなぁ。

  • 白湯みたいな、たまに物足りないけれど、間違いなく体にいいという確信があるのがこの人の作品。「快感」や「悦楽」に近い「幸せ」と、「満足」や「充分」に近い「幸せ」があるとしたとき、この人は後者を描く。そしてそれがとてつもなく見事。

  • 12の静かな心の旅

  • 短編集
    どこかの話が少しつながっている、
    もう少し先が読みたい。
    誰かの声に耳を傾けて。
    ホッとする作品。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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