- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101384818
作品紹介・あらすじ
父が消えた。アメ横で買った魚で作ったまずいスープを残し、サウナに行くと言ったきり忽然と。以来、母は酒浸りになり、おれの日常もざわつき始め、なんとか保っていた家族は崩壊寸前。悲劇のような状況は、やがて喜劇のように展開し-(「まずいスープ」)。表題作をはじめ、人生に潜む哀しさと愛おしさを、シュールな笑いとリアリズムで描いた三編を収録。気鋭が贈る人間讃歌。
感想・レビュー・書評
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通常の小説は、主人公の目線であったり思考をベースに話しが進んでいくがこの人の場合は数人の思考や行動が同時進行していく。舞台を観ている時は、観客は主人公を観ているときもあるし実は舞台装置を観察している人もいる。と思えば脇役の名演技に関心していたり舞台全体を作品として観ている人もいる。そういう楽しみかたが出来る小説である。
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うーん。
シュール。
何となく雰囲気がトイカメラの写真の感じ -
訳のわからない事態を、妙に落ち着いて通過する人たちを描いた三作。おもしろいです。
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なにが・・どうってことないのですが おもしろい!
まずいスープに意味を求めるわけでもないし
お父さんやお母さんおばさん(マーのお母さん)を責めるわけでもないし
友だちが いい加減な事しながらも 家柄や親の地位でいいところに就職が決まっても、うらやましがるわけでもなく ただたんたんと 自分のできることをできるだけやって(がんばるわけではない)生きている。
そんな男の子の話なんですが とってもおもしろかったです。
ほかに「どんぶり」「鮒のためいき」が入ってますが 同じように おもしろいです。
電車の中や人の多いところで読むのは おおすすめできません!
笑いをこらえられるレベルを超える文章が ときどき練りこまれていますので。。。。うふふ♪ -
スープが好きです。
だから、このタイトルに驚いて手にとってしまいました。
入れる具材、ベースの味付け、その日その時の判断で二度と同じ味にはならないのだから、
思うようにいかない、泥の様にまずいスープが出来上がる日だってあるのかもしれない。
誰かの、その日起こったことをたんたんと記した日記のようなお話。
主題とは関係ないものをつい凝視してしまう視点のずらし方や、思考のとび具合が「私も良くやってるなぁ」とリアリティを感じて、面白い描写だと思いました。
--ー冗談のようだが、冗談みたいだな、人生は -
「事実は小説よりも奇なり」とはよく耳にする言葉だけれど、これはまさしくそんな小説だった。いや小説なんだけれども。でもこの小説には私たちがつまらない日常を忘れるために縋り付くような背伸びしたフィクションの感じが全くしなくて、東京の下町を歩いている時に雑踏に紛れて聞こえてきたような妙なリアルさがある。それでいて陳腐なフィクションの何倍も面白いのだから驚かされざるを得ない。淡々としていて、奇妙に暖かい。この独特の雰囲気は小説を本業としていないからこそ出せるものなのだろうか。