ドラマチック・チルドレン (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425191

感想・レビュー・書評

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  • このノンフィクションで描かれている「ピースフルハウス・はぐれ雲」に、初版発行のじつに25年後に伺い、子どもたちと交流する機会があった。スタッフの方からこちらの作品を教えていただき、手に取った。
    実際に子どもたちと接した感想は「意外に普通の子たち」。
    この作品を読んだ感想は「子どもたち一人ひとりにドラマチックな背景がある」。
    どちらの印象も正しいんだと思う。

    どんなに元気で素直な子どもに見えても、それぞれ何か抱えているものがある。でも、それははぐれ雲に住む子どもたちに限ったことではない。私たち全員がそう。
    乃南さんが後書きに書いている通り、「彼らは特別な子どもではない」「境目は誰だって容易に越えられてしまう」「アンバランスな為に、頭からつんのめってしまった」のだ。私は子どものころ運良く踏みとどまっただけで、大人になってからつんのめってしまったこともあった。

    どうにかバランスを取って他人と、社会と接していくという、誰もが直面している普遍的な課題のノンフィクション言える。

    映画「もみの家」も併せておすすめしたい。

  • 感想
    子供達は本当は何を求めているのか。生徒と教師ではない。仲の良い上級生。目線を合わせて、立場に立って。でも時には厳しさも求められる。

  • このご夫婦の様な立派な人間って本当にいるんだなあ。そして、どうしようもない親も…。子育てに正解ってあるんだろうか?子育ての難しさは、誰もが感じる事の様な気がする。

  • 富山市の郊外で、非行、不登校、引きこもりなどの問題を抱えた子どもたちを育てる「ピースフルハウス・はぐれ雲」を経営する川又直(かわまた・なおし)、佳子夫妻と、「はぐれ雲」にやってくる子どもたちの心の交流を描いたノン・フィクション作品です。

    この作品の中心に位置しているのは、中井恵という少女です。彼女は一度は非行から立ちなおり、だれもが無理だと思っていた高校に合格を果たしながらも、周囲に流されやすい自分を変えなければならないと思い詰めて四か月に渡ってはぐれ雲から姿をくらましてしまいます。そんな彼女を川又たちは温かく迎え入れ、やがて恵は川又と同じように誰かのために寄り添う仕事をしたいと考えるまでに成長します。

    「はぐれ雲」で恵の一番の友達になった一つ年上の少女・藤原友美も、恵がやってきたことをきっかけに成長を遂げていきます。恵が高校に合格したことに激しいライヴァル心を燃えあがらせた友美は、熱心の勉強に取り組み、やがて「はぐれ雲」から巣立っていくことになります。

    とはいえ、川又は神様ではありません。「はぐれ雲」には、なかなか社会復帰を果たせない鈴木るりのような少女もいます。彼女はそんな自分自身を受け入れることができず、彼女の母親も娘を受け止めることができないでいます。

    一人ひとりがそれぞれ異なる困難を抱えている子どもたちに誠心誠意向き合っている川又夫妻に敬意をおぼえます。

  • 不登校や引きこもりを立ち直らせる施設を営む夫婦。そこに預けられる数々の事情をもった子供たち。いや、もはや子供とは言えない年齢の引きこもりも。単にメンタルが弱いだけではなく、非行少年少女。施設からの家出。小説にしては散らばった文章だなと思ったら、ノンフィクション。

    型にはまる必要はないし、型にはまれない人もいる。
    どんな風にしても生きていける、どんな風にも前には進めるという勇気をもらえる本。

  • 終盤までノンフィクションと知らずに読んだ。非行はともかく、殆ど描かれていない閉じこもり型不登校の子たちは、悪いことなんか何もしていないのにどうして刑務所のような施設で生活しないといけないのかと、他人事じゃなくて反発を感じた。社会復帰をするにはそういうことが必要なのかな…。主宰の経験から来る自負や威圧感も苦手で導入部は読み進めるのを躊躇するくらいしんどかった。恵が脱走する辺りからは物語として自分や現実から切り離して読めてほっとした。非行少女だったことが嘘みたいな恵の成長が出来すぎた物語染みていて眩しかった。

  • 人はいつからでも、何歳からでも、やり直すことが出来る。
    それはきっと真実なのだろう。
    でも、変わろうとする意思がなければ人は変われない。
    誰に強制されても、本当に変わりたいと願わなければ変わることなんて出来ない。
    結局のところ、自分自身が一歩を踏み出すしかないのだろう。
    川又は驚くほど忍耐強く子どもたちに接している。
    他人だから持てる忍耐と許容のような気がした。
    親なればこそ子どもに期待もする。夢もみる。
    子なればこそ親に甘えもある。理解してほしいと屈折した表現もする。
    互いに「どうしてわかってくれないの!」という思いがあるのかもしれない。
    わかってほしいなら言葉にしなくちゃ伝わらない。
    親なら言わなくても察してよ!わかってよ!どうして私をちゃんと見てくれないの!
    そんな思いを持ってしまう気持ちはよくわかる。
    でも…もしかしたら、親も同じような思いを抱いているのだろうか?
    似たような題材をテーマにした「明日の光をつかめ」というドラマがあった。
    ノンフィクションとドラマの違いはあっても、すべてが解決できるわけではない。
    むしろ、失敗を重ね、悔いを残したまま送り出さなければならないことのほうが多いかもしれない。
    それでも、前を向いて進んでいこうとする川又さんには頭が下がる。
    自分を大切にする。
    自分以外の人間を大切に思う。
    そして、生きていることの意味を知る。
    道に迷ったときこそ、そのことを思い出さなくてはならないと思う。
    でも、人ってそれほど強くないんだろうなとも思うけれど。

  • 無邪気な子どもって時に恐ろしい。

  • 非行や引きこもりなど様々な問題を抱える子供たちを預かる施設のお話。フィクションではあるけど実話に基づいているらしい。主催者の川又夫妻の子供たちに接する態度には頭が下がるというか、見習いたいものがある。子供たちも色々で親も色々で根気よくつきあい寄り添い、難しいな。もしも自分の子どもが心を閉ざしてしまったら、私はどうだろうな。自分の人間性が試されるよね。考えさせられる内容でした。
    ただ、登場人物の子どもたちが多く、メインの子以外は誰が誰でどうなったのかがわかりにくかった。

  • 小説と思って読み始めたら、ドキュメンタリー作品でした。

    富山市郊外にある『ピースフルハウス・はぐれ雲』で、心に問題を抱えた子供(成人も)を預かり、共同生活を通じて立ち直らせるために奮闘する川又夫妻。
    子供たちが悩み迷い惑う様子が、読んでいて胸に響く。

    わが子が、同じような迷い道に入り込む可能性も、そしてこの作品中の母親のように私が自分を不幸だと思い込む可能性も、十分あり得ることだと想像しながら読み、苦しくなった。
    このような施設を運営していくのは本当に大変で、でも無くてはならない大切なものだと痛切に感じた。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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