青雲はるかに〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101444352

感想・レビュー・書評

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  • 主人公范雎の大望と壮絶な生きざま。折々、人生に対する示唆として、なるほどと思うところあり。下巻での展開が楽しみ。2024.2.13

  • <上下巻を通してのレビュー>

    中国・戦国時代後期、貧家の三男に生まれた范雎は、苦労して学問を身につけ、密かに待望を抱きつつ、諸国を巡っていた。
    その途上、謎の佳人原声に逢う。
    やがて故国の魏で仕官した彼は、仕事先の斉で襄王に謁見したことが主人の思わぬ誤解を招き、極刑に処せられる。
    奇跡的に命拾いした范雎は、心に復讐を誓いつつ、潜伏する・・・・・・

    「秦の名宰相」范雎(張祿)の苦難の時代を、雄大なスケールで情感豊かに描く。



    諸国を巡っていたころの范雎はあまり好きになれず、失意のうちに故国に帰国して須賀に仕え、極刑から奇跡的に生き延びたことによって人格に深みが増していったのですね。
    「復讐」をずっと心に秘め、かつ自分の野望を実現させるために秦に赴き、昭襄王の下で誠実かつ綿密に仕事こなすことによって王から深い信頼を寄せられ、秦という国の弱点を見事に克服していったのでしょう。
    戦争に勝っても領地をあまり広げることの出来なかった秦が、范雎の作戦をもとにした戦争に勝ち、順調に領地を広げて中国統一に一歩近づいたと言えなくもありません。

    危機にあったときに助けてくれた人には必ずお礼をし、復讐の気持ちは決して忘れない。
    これは私も忘れたくない思いですね。

    惜しむらくは、王稽と鄭安平を安易に昭襄王に推薦しなければ、もっと范雎の活躍が見れたのになぁ・・・・・というところです。

  • 下が楽しみ

  •  戦国時代、不遇の前半生の末に秦の宰相となって活躍した范雎の物語。ちょうど先だって読んだ同じ著者の「楽毅」の活躍した直後の話なので各国の関係がわかりやすかった。とはいえやはり戦国時代の秦・趙・韓・魏・斉・楚などの関係は複雑怪奇で混乱する。文庫解説にこれはすぐれた恋愛小説であると書かれているように、通常の歴史物の武将や参謀たちの人物譚とは少し趣きが違う。秦で登用されて生き生きと活躍する後半はともかく、不遇時代の前半は周りに現れるいずれ劣らぬ清楚な美女たちとの邂逅や交歓のシーンが次々と繰り返されて調子が狂う。これはいったい何の小説なのかという気にさえなる。それとともにこれは執念深い復讐譚でもある。死の淵から女性たちの助力で生き延びてその恥辱を雪ぐという一念が最後の秦・趙大会戦につながるのだからすごいスケールだ。ただ范雎の人間的な魅力となるとどうなんだろうな。青雲の志を持ち続けたすぐれた人物なのはわかるけど、好漢というにはいまひとつな気が。女性にもてすぎるので親近感が湧かないのかな(笑)。

  • 秦の宰相ハンショの物語。昭襄王の宰相となった男の物語で、拷問を受けて便所で半殺しにされた魏の宰相に復讐の話。逃亡劇は丁寧だったのだけれど、宰相になったところは意外にあっさり描かれていて食いたりなさが残る。

  • 9784101444352 507p 2007・4・1 

  • ようやく、長編に手を出してみました。
    復讐と愛の、どちらも強い動機になるものです。

  • 近攻遠交策で有名な范雎が主役です。前半(上巻)は范雎が魏で辱めを受け、後半(下巻)は報復する話が中心になります。
    しかし、范雎については個人的にはあまり好きではありません。昭襄王の意向とはいえ范雎が魏冄と白起を排斥したのは、秦の中華統一を遅らせたのではないかなという気がします。魏冄は個人の権益を優先したのですが、白起については忠実な将軍としてひたすら秦の領土を広げようとしていたと評価していて、個人的な恨みを優先した范雎よりも白起のほうが好きです。
    この本では後半は魏冄(ぎぜん)、白起(はくき)の活躍により秦が中華統一に動き出すころの話も読めるのでその点は面白かったです。

  • 6/14

  • 范雎という秦の始皇帝のちょっと前の宰相が主人公で、復讐譚だけども読後は痛快さも後味の悪さも、そのどちらでもない。人間の執念の強さとともに、限界も感じつつ、それでもやりきった爽やかさとやりきれなかった半端さからくるちっぽけさの両方が感じられる終わり方だと思う。ただ、やはり復讐者に、復讐してすっきり!大団円!は与えないのが、宮城谷作品の中のまっとうな因果応報だと思う。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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