- Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101448336
作品紹介・あらすじ
脂まじりの雨が降る街を、巨大でいびつな銀色の月が照らしだす。銀天公社の作業員が、この人工の月を浮かべるために、月に添って動くゴンドラで働いている。そこは知り玉が常に監視し、古式怪獣滑騙が咆哮する世界だ。過去なのか、未来なのか、それとも違う宇宙なのか?あなたかもしれない誰かの日常を、妖しい言葉で語る不思議な7編。シーナ的言語炸裂の朧夜脂雨的戦闘世界。
感想・レビュー・書評
-
新潮1997年1月号滑騙の夜、6月号銀天公社の偽月、1998年1月号爪と咆哮、1999年7月号ウポの武器店、文學界1998年10月号塔のある島、2000年6月号水上歩行機、書下ろし高い木の男、を2006年9月新潮社から刊行。2009年10月新潮文庫化。上空に人工月がある休戦中の街での出来事を綴った7つの連作短編集。いずれもストレートなディストピア小説。化学戦があった後の汚染された世界。生体兵器なんかも登場し、もの悲しさ漂う様子が興味深い。ただし気は滅入る話です。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021/01/01 読了
薄い一冊ながら、ものすごく濃密な「シーナワールド」が展開している。
舞台は、脂雨の降る未来の世界。光を求める人々のために、その一帯を照らす「偽月」が上がる、荒廃した町。
物語に特定の主人公はおらず、それぞれの短編がこの「偽月」に関係がある(直接にはないと思われるものもあるが)世界で繰り広げられる。
ともかく荒廃した未来であり、「知り玉」とか「村田肺魚」とか、これまた椎名さんの小説に登場する意味不明な異形の生き物が次々と登場し、リアリティを与える。果たしてこの世界で人類は一度滅亡・衰退してしまったのであろうか、そう思えるほどである。
中でも一番印象に残ったのは「爪と咆哮」。最初はなにのことか全く分からず読み進めてゆくが、登場人物たちは脳髄だけ取り出され、一つの巨人の別々の器官として生き続けているという内容だ。この設定には度肝を抜かれた。
椎名さんのSFの中で、一番印象に残ったのは、若い頃に読んだ「アドバード」であろうか。それと同じくらい、世界観がものすごい。読み始めるだけでたちまち異世界がリアルにそこに展開する。
一部「武装島田倉庫」に登場する人物が出てきており、世界観が共通しているらしいが、忙しくて買ってからずっと読めていない。今度読んでみたい。 -
椎名誠のSFは夜中に読むと迫力か増す気がする。
-
イマイチ盛り上がらない。武装島田倉庫は最高だったけど。
-
濃密な「シーナ的なもの」にどっぷりと浸る。身悶えしちゃいそうなほどの快感。椎名誠さんはこの中の「塔のある島」で、ついに日本SF文学の頂点を極めたかもしれない。
-
普段SFというジャンルを読まないので、これがSFとして平凡的な作品なのか、奇抜な作品なのか、冷静な判断ができずにいるのだが、恐らくは奇抜なのだろうと思う。
作品が肌に合わないのか、そもそもSFというものが肌に合わないのか分からなかったが個人的には 『全体的にわけわからんが、でも椎名誠節が面白いから、まぁOK』 というのが正直な感想。
最後の「高い木の男」という作品は凄く良かった。これだけ、妙に浮いているとは思うのだけど、何か意味があるのだろうか? -
この本の評価なのですが、微妙・・・です。ただ一つ言えるのは「この小説は他国語に翻訳できない」ということ。何とかなりそうなのは漢字という表意文字を持つ中国語のみ。他の言語への翻訳は不可能だろう。小説が読者に何かを伝えるものだとするならば、翻訳不能ということは小説であるための必要条件を満たしていないのではと疑問を感ずる。この小説は例えるならば「抽象画」のような小説で、良いと思えば良いのだが、感性が合わなければ最悪という評価になる。理解するより感ずる小説なのだ。
シーナさんのSF小説(いや超常小説といった方が適切か)は『アド・バード』『武装島田倉庫』『水域』『雨がやんだら』『ねじのかいてん』『胃袋を買いに。』『地下生活者』『中国の鳥人』そして本書と読んできたが、これほど異様な世界を持つ椎名氏と「怪しい探検隊シリーズ」その他ハートウォームなエッセイを書くシーナさんが同居することが驚異である。一つの頭の中にこのように異質な世界が同居するのはおそらく天才か狂人ということだろう。私はシーナさんのエッセイの熱烈な支持者であり、シーナさんを狂人扱いすることなど絶対にできない。怪しいといえば怪しいのだが、シーナさんは天才だと私は言いたい。 -
すごく好きです
-
脂雨が降りしきる街を照らす人工月を軸とした短編集。
泥濘とした世界でありながらも懐かしさがあるシーナワールド。