ロシア幽霊軍艦事件: 名探偵 御手洗潔 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800240

作品紹介・あらすじ

湖から一夜で消えた軍艦。秘されたロマノフ朝の謎。箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして“密室”から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた――。御手洗潔が解き明かす、時を超えた世紀のミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 『アナスタシアは少なくとも2人の男性に愛されていた、そこにロシア皇女としての力と気品を感じるのである。』ロマノフ王朝最後の皇女アナスタシアの数奇な人生を余すところなく描写した。ロシア帝国のボルシェビキは皇帝ニコライ二世の目前で皇女達を凌辱した上で殺害した。この遺恨を胸に生き延びたアナスタシア。彼女が日本軍人と共に箱根の芦ノ湖に巨大な軍艦と共に現れるミステリーの真相は奇跡としか言えない。ボルシェビキに凌辱されてできた子どもの遺恨が時空を超え、憎悪と愛情が噴出する。幽寂とした中に一閃を感じ取れる傑作だった。

  • 島田さんの歴史ミステリはほんとにおもしろい。
    2月革命でロマノフ王朝は終わりを迎え、ニコライ2世の末娘アナスタシアは悲惨な運命を辿る。
    そんな中出会った日本人と共に、ドイツのドルニエDoxで芦ノ湖に降り立つ。
    愛する人とベルリンではぐれ、以降アナアンダーソンとして生き、アナスタシアの真偽裁判が行われ、認められずに生涯を終える。

    ボルシェヴィキによる虐待やイパチェフ館で行われたとされる虐殺は読んでてほんとにしんどかった。
    ロシア革命や、アナスタシア論争のことは全く知らなかったけど、フィクションとしておもしろく読めた。


    幽霊軍艦のパートもとてもワクワクした。湖に巨大軍艦が現れるなんて、これぞ島田さん。
    富士屋ホテルいつか泊まってみたいなあ。それにしてもドルニエDox調べたけどすごい。巨象恐怖症なので、あの規模のものが飛んでるなんてもはや恐怖である。新千歳に模型がある?らしいので見てみたい。

  • 幽霊船とロシア皇女の話がどう繋がるのか気になって、早くページを捲りたいとワクワクしたのは初めてかもしれない。
    好奇心に急かされながら読み進めていった。
    随分変わった名前だったから、その名前には何かしらの意味合いはあるだろうと思っていたけれど、まさかそのような意図があったのだとは思わなかった。
    読みながら自分なりに予想してみたのだが、掠りはするものの「ああそっちか⁈」となってもう楽しくて楽しくて。すっかり御手洗の世界に惹きこまれていた。

    平八はずっとアナスタシアのことを思っていたんだな…と僅かなすれ違いに心がギュッとなってしまった。時代が時代でなければ二人は幸せになれたのだろうか、いや、多分出会わなかったんだろうな。その時代だから出会えたんだろう。

    アナの不可解な言動について自分なりに考えていたけれど、どうしてそんな事をするのか理解できずにいた。
    母国語も話せず記憶も曖昧で、嘘をついているようにしか見えない。それなのに自分は王族だと言い続ける。
    私は多分この人は本当にお姫様なのだろうとは踏んではいたがまさか怪我によるものだったなんて。ましてや脳の損傷のせいだなんて考えすらしなかった。
    言えない秘密があるのだろう、としか考えなかった。

    調べてみたら実際にいるようだ、ちょくちょく調べながらもう一度読んでみると面白いかもしれない。

    石岡と御手洗が安定に面白くて可愛くて。
    そして御手洗の推理の素晴らしさは相変わらずだった。

  • 整理しながら読むと、分かるストーリーだが、少し難しい本だと思う。でも、どんどん謎が分かっていくたびに少し興奮して、面白かった。

  • おもしろかった!かなり壮大なお話。史実とフィクションがからまってドキドキするお話だった。

  • これはまた大作だ。
    導入部に石岡先生が語るとおり、奇抜なトリックや奇怪な館や凄惨な殺人事件に巻き込まれるわけでなく、なのにこれまでの作品に優るとも劣らない大きな謎と壮大なストーリーが秀逸な異色作。石岡先生曰く、御手洗探偵の学者としての一面を垣間見たというけれど、こちらとしては著者の知性と問題意識、学者性を垣間見たというかんじ。
    第一次対戦下、ロシア革命とロマノフ政権、処刑された皇帝一家の生存者と名乗る女性の真偽。史実に残る不可思議から、戦争と政治に翻弄された女性の壮絶な生涯を描き出した見事な作品。後書きもとても有意義。ほんとなんでも書ける方なんだなー。

  •  大正時代の日本、箱根芦ノ湖に突如現れ、一夜にして姿を消した巨大軍艦の謎に御手洗潔が挑む。相変わらずスケールが大きくて夢のあるミステリだなあ。ロマノフ王朝最後の皇女、アナスタシアの生存説も、ロマンがある。

     自らをアナスタシアだと主張した「アナ」という女性が実在したことは知らなくて、読み終わるまで島田さんの創作かと思っていた。思ったより史実が含まれていて驚いた。

     (小説内の)真実は切なくて、救いがなくて辛い。アナスタシアの過去はただでさえ重たいのに、ちょっと描写がくどいかも・・・。ところどころ展開が無理やりな感じもしたけど、歴史ミステリーとしても楽しめた。

  • 文庫になるのを待っていたので購入

  • 人が死なない御手洗。おどろおどろしてないし。
    爽やか。最後は恋愛小説か、もしくは伝記みたい。
    アナスタシアに纏わる話は今回初めて知った。
    歴史の解釈としても面白い。もしかしたら本当にそんな人生とドラマがあったのかも。
    歴史の謎まで解いちゃう御手洗潔、
    彼はその時暇だったからみたいだけど、ちょっと新鮮。

  •  ロシア最後の皇帝ニコライ2世の四女アナスタシア「生存説」を下敷きにした歴史ミステリ。実在の「アナスタシア」僭称者のアンナ・アンダーソンをめぐる描写は一応史実を元にしているが、ロシア革命・内戦やシベリア出兵の時代考証や、(「生存説」の「証明」に援用する)脳科学・脳障害の理解は、いかにも付け焼刃の知識の継ぎ接ぎで、あまりにも大雑把すぎてつっこみどころが多い。表題の「幽霊軍艦」のトリックは「よくぞそこに目をつけた」と感心する事実がネタ元だが、これも実は(物理的にも歴史的にも)無理がありリアリティを欠く。フィクションとはいえ、歴史修正主義や陰謀論の手口(部分的に正しいピースを恣意的なフレームに当てはめる)で作られた歴史像は非常に危険である。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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