君と奏でるポコアポコ ――船橋市消防音楽隊と始まりの日 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101802060

作品紹介・あらすじ

部活ともプロとも違う場で少女たちは音を奏でる。兄からの頼みで船橋市消防音楽隊の説明会に参加した栗原優芽。高校生である彼女は、今まで経験してきた吹奏楽部との違いに戸惑うが、そこに現れたのは帝国芸術大学に通う憧れのフルート奏者・近藤奈々子だった。幼馴染の笹木智子とともに参加を決める優芽。しかし、この楽団は想像以上に難しい場所で……。個性豊かなメンバーと奏でる、新しい音。少女たちの成長を描く青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 皆、それぞれの青春を
    通過して大人になって
    いくんですよね。

    吹奏楽は高校のときに
    体験入部で触れた程度
    だけど、

    幼いときからピアノを
    習っていたので、

    主人公たちの気持ちが
    少しわかる気がします。

    書き込んで書き込んで
    楽譜が真っ黒になって、

    恋愛をして思い悩んで
    哀しみを知って、

    少しずつ奏でる音色に
    深みが加わる。

    不器用で不安で目の前
    のことに一所懸命で、

    それでも、ザ・青春な
    シチュエーションなら、

    本当にたくさんあった
    なあ・・・

    そんな学生時代の遠い
    記憶が蘇って、

    なつかしさに一人静か
    に浸りました。

  • 私自身15年程前に暮らしていた街・千葉県船橋市が舞台。

    駅から海側に向かって進んだ方角、市役所の隣あたりに実際に消防署がありますね。
    街並みの解像度は非常に高いので、物語中に登場するマンションや公園もなんとなーくイメージが出来ます。
    20階建ての駅ビルはFACEのことだろうか?いやそんなデカくないか。

    …と、個人的な思い入れが止まない小説。


    作品自体は音楽小説をベースに、「消防団音楽隊」という更にニッチな所を突いたもの。
    主人公は訳あって音楽隊に臨時入団した高1の女の子。お仕事小説というよりも団内で起こる恋愛に主軸が置かれたお話。
    後述するが、改題もその辺を加味したものではないかと予想。

    音楽の描写については…私にはわからん。いざコンサートが始まったら案外あっさりとした感じ。
    ただ、楽団内の人間関係のいざこざがとてもドロドロしている。ソロパートを巡り憧れの先輩(女性)とギスギスしたり、恋がもつれて三角関係が誕生したり。
    あまつさえ正規消防団員の間ですら派閥的なものが見え隠れしており、読んでいて息苦しい。

    せっかくの「消防団」の要素ももうちょっとリアリティが欲しいな…。
    通常勤務や訓練に加えて音楽隊に参加するのって、文字で書く以上にめちゃくちゃ大変な事だと思う。休日にイベントも入るし、5歳の子どもがいる団員なんかは絶対キツい。小説なので新人隊員の熱い言葉をきっかけに割と爽やかにまとまるけど、お父さん団員がその辺をぼやく場面を入れるだけでもグッと引き締まる気が。本来は大川副隊長辺りがその辺を若者に諭すシーンがあっても良い筈。大川さんはただの脳筋鬼軍曹キャラだし、他の大人も押し並べて頼りない。
    中盤で火災救助現場の場面も挟まるが、実際、現場の中継カメラ映像に消防士の声がこんなはっきりとは入らないだろうし、そもそも顔なんて判別つかないのでは?あとはいくら知り合い&想い人が救助に当たっているといえ、野次馬で駅ビルに登って現場を見下ろすだろうか?
    庁内署長室が四畳半というのはリアルなのか?演出なのか??

    細かいがp177「朝五時」は深夜ではないと思うし、p178「電車も動いていない」はさすがに言い過ぎ。


    そして個人的に一番引っかかってしまった’主人公があまりに主人公過ぎる’点。
    見た目が可愛くて頭も良く、フルートの腕前も憧れの先輩に勘違いとはいえ恐縮出来るくらいに才能があり、社交的。大人からも信頼を得て会議に出てくれと頼まれ、そのくせ恋には鈍感。
    …近年稀に見る完璧超人!
    これでは感情移入はし難いような…。

    最後に。何らかの事情があったのだと察するがタイトルは『ハローファイヤーマン〜』の方が明らかに良かった。


    たまたま寄った船橋の書店で買ったサイン本、先生直筆のペンギンのイラストが可愛かったです。


    1刷
    2021.12.1

  • 東野圭吾とか伊坂幸太郎を読むようになったから、こういう種類の本はどうしても内容が薄いように感じてしまう…。でも良い話だった!

    消防に音楽隊は必要なのか?っていう問い。
    今までは「音楽隊」ってそれ専門の人がやってるもんだと思ってたけど、実際は出動の傍らで音楽もやってる、っていうめっちゃハードな状況だったんだって事実に驚き。

    「少しでも良い演奏をして耳目を惹き付け、船橋市消防に興味を持って欲しい。彼らのことを知って欲しい。そして日々、火災予防の意識を持って生活することで、消防士も市民も傷つかないまちを作っていきたい、と」

    音楽ってあるだけで人の目と耳と心を惹き付けるものだから、その力が広報活動には必然的に適したものなんだなぁ

    -----------------------------------

    楽器懐かしい...。また吹きたくなった。色々な意味で青春だなぁって言いたくなる作品。悪く言えば中途半端?吹奏楽をメインにしたいのはわかるんだけど、足りない!もう少し曲の要素欲しかった。でもやっぱり音楽って誰にでも平等だから「広報」には最適なツールなんだなぁって気づけた作品

  • ちょっと盛込み過ぎかな。
    音楽隊の必要性と市民参加と予算と…。
    タイトルのポコアポコ。が勿体無い。

  • 地元船橋の名と、消防音楽隊という素材に興味を持って手に取った本作は、良くも悪くも非常に真っ当な青春小説だった。

    軽く読めることは良い面でもあるのだけど、個人的には物足りないというのが正直な気持ち。というのも、音楽にも消防にも振り切れていないというか、深掘りが足りなく感じてしまい、甘酸っぱい青春部分は際立っているのだが、そこだけの印象で終わってしまった。

    設定は良いと思うし、キャラの立ち方もまだ小粒ながら光る物があるので、そこをもっと巻き込んだ作品を読みたい。

  • オーディションでの菜々子の演奏と、それを聞いた優芽のところが良かった。あの演奏を引き出しただけでもすごいことだと思う。

  • 設定は面白いけど、なんか筋がブレちゃってた印象。もうちょっと要素を絞って密度を濃くしてくれた方が、夢中になれる気がしました。

  • ストーリーもおもしろく、すらすら読めました。
    ですが、ちょっと話しを盛り込みすぎかなと思いました。

  • 楽器を習ったことのある人には、ぜひとも読んでいただきたいです。
    同じ楽器を演奏しても、人によってその楽器から紡ぎだされる音は違うんですよね。私も過去にピアノを習ったことがあるから、そういう場面を経験したことは何度かありました。不思議ですよねぇ、ただ息を吹き込むだけ、叩くだけ、押すだけ、弦を擦るだけ、みんな同じことをしているのに、音が全然違うってことが。
    各登場人物が紡ぎだす音の特徴を、その人の心情を交えて上手く表現しています。著者も何かしらの楽器を演奏したことがあるんですかね?でないと、あのような描写はできないと思いました。

    最後の演奏シーン「エル・カミーノ・レアル」は、実際に船橋市消防局音楽隊の演奏を聴きながら読むと、ものすごーーーく感動します!終盤のアップテンポなところは、ポコアポコ・クレシェンド、段々と盛り上がりをみせるリズムで、思わず足でリズムを取ってしまいました。
    涙腺が緩々に緩み、いい涙が流れました。音楽って素晴らしい!

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