- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101802213
作品紹介・あらすじ
その館では灼熱密室で謎が燃える――。欠落を抱える者たちが陶芸で身を立てる山奥の函型の館。師匠が行方不明となり、弟子たちの間で後継者をめぐる確執が生じる。諍いが決定的になったとき、窯のなかでばらばら死体が発見された。奇怪なことに、なぜか胴体だけが持ち去られていた。炎の完全犯罪は何を必要とし、何を消したのか。過去の猟奇事件と残酷な宿命が絡み、美しく哀しい罪と罰が残される。本格ミステリーの傑作。
感想・レビュー・書評
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シチュエーションと雰囲気がかなり好きなテイストだった。全体的に占星術殺人事件を思わせる様相で読んでてワクワクした。
謎解きは結構スタンダードというか古典的な感じかと思ったら、さらにもう一捻りあってそこは予想外だった。ただ、どっちにしても可能不可能の吟味がちょっと物足りないなぁと感じた。もう少し検証して欲しかったなぁ。まあ、このへんはあまり突っ込むのも野暮なのでこれくらいで。
これシリーズものなんですね。今作中で1番気になるキャラクターが主人公のシリーズのようなので、他のも読んでみようと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
身体に欠落を抱える弟子たちが陶芸で生活をする函型の屋敷「炎舞館」。遺作を作っていた師匠・夏季屋肇(かきやはじめ)が失踪し、弟子たちの間で後継者をめぐる火種が巻き起こる。それは殺人という昏い炎となって──。使用人探偵シリーズ第五弾。
陶芸の窯を三つ備えた制作と生活のための屋敷「炎舞館」が舞台。今回も魅力的なキーワードの展覧会。遺作の制作途中に行方不明となった師匠!からの後継者争い!薄暗い過去の中で、身体の一部を欠落した弟子たち!閉じられた窯の中から見つかる胴体が消失したバラバラ死体!その謎を解くのは使用人探偵シズカのはずが──いない!代わりにいるのは、日本語がわからない新弟子の「しずか」。彼女は何者なのか?!過去のシズカなのか?!そんなメタ視点での謎も味わえる(なので、他シリーズを読んでからの方が楽しめる)。
いつもはシズカが匂わせ推理をしてくれる安心感があったものの、今作はそのシズカは不在とあって怖さ倍増!主人公視点は後継者の筆頭だが継ぐべきか悩む心やさしき女性・巴。彼女もまた右手をある事件によって欠落していた。バラバラから始まる連続殺人はもはやホラーか?!と思うほど(『弟切草』っぽい雰囲気もある)。仲間でありライバルでもある人々が死んでいく。灯りが消えた館の暗がりに犯人が潜んでいるかも?!という緊迫感がすごかった。
シリーズの中で一番好きな話だった。不可解で残忍な事件の謎と、修行生活を共にしてきた仲間の中に犯人がいる?!という人間ドラマと葛藤が見どころ。仕切るシズカがいないからこその雰囲気だったと思う。売り文句の「ラスト1行に慟哭が響く」はさすがに盛り過ぎかなと。ぼくは「そうかあ──」と言葉が漏れた感じだった。動機と手段が釣り合わないというか、噛み合わせの悪さが残る。構成は面白かったし、シズカがいつ活躍するのかというのも新しい。シリーズをどれか読んでるなら、読む価値はあると思う。
p.81
「巴、そういうことなんだよ。創作者は、一己の個人として自分を確立しなきゃならない。一生を他人の創作のために使うことはできないんだ」 -
欠落した人たちが集まるからこそ他のミステリーとは違う面白さがありました。
この館シリーズは、基本的にどの物語から読んでも内容が分かり面白いですが、家政婦、栗花落さんがどんな人なのかを知った上で読むと面白いと思います。この物語を読む前に何か一冊、同じシリーズの本を読んでおくとより面白く読めると思います。
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栗花落シリーズ5
今回は燃える。今回は意外性は低い一方、あることについていきなり感あるなってなりました。物語は全体的に美しい内容なのだと思うけど、もう少しなんとかって…次、楽しみにしたいです。 -
犯人の動機とか、それ本当に実行できるの?とか、バラバラ欠損だとついあのトリックをイメージしちゃう、などなどツッコミ入れたくなるところはあるのだけど、館クローズドミステリとしてとても面白かった!!
この作品が作者さんの本初だったので、他のも読もうと思った。 -
山奥の陶芸の工房で、師匠が行方不明になったあとに起こる殺人事件。シズカは今回、使用人として雇われているわけではなく途中から登場。
舞台や設定を生かしたストーリーとトリックだが、どこかしら欠損を抱えた弟子たちの陶芸への希求がもう少し描かれているとよかったと思う。