噓があふれた世界で (新潮文庫 し 21-109)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101802824

感想・レビュー・書評

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  • 図書館に早くから予約しておいたので、早目に借りられた。ありがたい。

    本書7名中、初読みの作家さんが4名。
    読んだことのある結城真一郎氏の作品「ヤリモク」は既読作品。

    「嘘があふれた世界で」という題名だが、全編「嘘」というより、全編「SNS? IT? インターネット?」どう括ったら良いのかわからないけれど、とにかくそっち系の話だった。
    だから私には、ついていけない部分が多かった。

    「地雷グリコ」(青崎有吾著)のレビューにも書いたが、本書の作家さん達も(お一人を除き)平成元年から4年生まれの方ばかりだ。若い。
    しかしその除いたお一人(昭和53年生まれ)の作家さんがご自身の作品で書かれていることが事実だとしたら、推理小説協会内の「若手作家」とはアンダー45なんだそうだ。
    つまりご本人もそうした「若手作家」の括りで、このアンソロジーのメンバーとして声がかかったということを説明したかったのかもしれない。

    本書のパソコン使えないおじさん(私はここまで酷くないとは思いたいが)寄りの私には、これからどんどん内容についていけない小説が増えてくるのだろう。

  • -------------------------
    画面の
    向こうに
    隠された

    秘密と嘘
    -------------------------
    仕事帰りの書店で見つけて購入しました。
    「世界でいちばん透きとおった物語」のスピンオフがあるということで。

    7作品中、6作品が平成生まれの作家さん。
    時代感じます。笑
    昭和生まれの私…おののきました。笑

    「かわうそをかぶる/朝倉秋成」
    人気VTuberへ楽曲を提供していた音楽クリエイターが殺された。
    犯人は、VTuberの熱心なファン。
    自分はあてがわれた役を演じてるだけなのか。

    「まぶしさと悪意/大前粟生」
    Tipshotというショート動画SNSでバズって神格化された女子高生。
    彼女とのコラボ、動画目当てで入学してくる学生たち。
    そんなときに彼女が突然動画投稿をやめた。
    教師と彼女とのやり取り。

    「霊感インテグレーション/新名智」
    呪いのアプリ。幽霊から届くというプッシュ通知。
    本当に幽霊は存在するのか。

    「ヤリモク/結城真一郎」
    アプリで知り合った女性。彼女を持ち帰る。
    妻子ある身でありながら、やめられない理由。

    「あなたに見合う神様を/佐原ひかり」
    少し変わっている、痛いと思われそうな権藤さん。
    彼女は、大好きな動画クリエイターwataruのアクスタを持ち歩き、祭壇をつくる。
    大好きなwataruを感じたくて、GONチャンネルを始める。
    好きなものにまっすぐな権藤さんと、
    家族不和で父親から暴力を受ける私。
    権藤さんを馬鹿にする教師。
    権藤さんと私は学校の外で出会い話すようになる。

    「タイムシートを吹かせ/石田夏穂」
    私は、パソコンのできないおじさんたちのフォローをしている。色々教えている、サポートをしている。
    だから少しだけタイムシートを吹かせる。

    「君がため春の野に/杉井光」
    未だに動く亡き夫のアカウント。
    その謎に隠された秘密と嘘。

    どれもこれも「今」って感じで、
    じゃあ心に何が残る?と言われると
    まーまー私も年取ったなあと思わされます。苦笑
    転職当時の余裕のないなか、
    ただただ面白いという気持ちで読んでました。

    好きだったのは、
    「まぶしさと悪意」「あなたに見合う神様を」です。
    どちらも女子高生が主人公なのですが、
    成長していく自分と周囲の環境で、
    挫けそうになりながらも進もうとする感じが。

    私が高校生のときはまだスマホではなく、
    ドコモのiモード主流とかでしたが、
    とにかく小さい機械のなかで繋がれる感覚は
    今思えば依存していたかもしれないです。
    そう考えると今の世代は、どうなんだろう。
    スマホのない人生なんて考えられないんだろうな。

    青い空に独りぼっち。
    上を見上げず、スマホを見下ろす。
    読み終わった後に装丁を見ると、
    何とも言えない気持ちになります。

  • 久々にアンソロジー読んだ気がする。

    タイトル買い。
    ブクログの注目作に上がっていて、そーなんだーと思い読了。

    浅倉秋成「かわうそをかぶる」
    Vtuberと中身の人のお話。
    演じているのか、曝け出しているのか、自分が自分ではない存在になっていくことの、面白さと怖さがあって、良かった。

    Vtuberって、声優とも違う。
    何か決められたお話の役柄を演じるではなく。
    ある意味では、自分のままで、キャラクターになっていく。
    着ぐるみと中の人の関係とも、また違う、ような。
    それって、どんな感覚なんだろう……。

    佐原ひかり「あなたに見合う神さまを」
    このお話も印象的だった。
    推しのアクスタで作った「祭壇」を学校の机の上に飾っている権藤さんと、推しなんて言葉を理解できない過去の遺物みたいな田所先生と、家で父親からの理不尽な空気の暴力に耐える手塚さんの、物語。

    親から空気の暴力を受けていると、言いたいことをずっとお腹の中に抱えて苦しくなる。
    どんな場面でも、自分の言葉には価値がないと思わされてしまう。

    だから、反発のような、瞬発力を持って言い返さなければ、勝てないと感じる。
    思いを伝えること、意思を持つことは、もっと違った形である方が良くても。そうなってしまう。

  • 注目作家のアンソロジー作品

    SNS、Vtuber、SNSによるバズり、マッチングアプリ、若手社員と再雇用者のネットリテラシーの差異
    今の自分達にとっては馴染み深いテーマでとても読みやすい作品だった
    もちろんアンソロジー作品なので好き嫌いは多少なりとも出てしまった。

    かわうそをかぶる
     どうしてこれほど心が壊れた少女を描けるのか読んでいて不思議な気持ちになる
     物語の展開がとても綺麗で短編と思えない読み応えがある
     ラストで伏線回収があるのもなんとも秋山先生らしい

    ヤリモク
     40代男性のマッチングアプリ事情
     妻子持ちの彼がやっている理由とは…
     こちらも伏線回収ものだが、一番個人的にはなってほしくない形の結末迎えてしまった
     後味は悪いが面白く一気に読むことができた
     一度結城先生の他の作品も読んでみたくなった

    君がため春の野に
     亡くなったSNSのアカウントが動き続けると言う現実も起こり得るような題材のお話
     気に入った作品の中では唯一心温まる内容の作品
     1月7日の投稿主の詮索をするのは…ヤボってもんですよね…

  • 「かわうそをかぶる/浅倉秋成」
    「まぶしさと悪意/大前粟生」
    「霊感インテグレーション/新名智」
    「ヤリモク/結城真一郎」
    「あなたに見合う神さまを/佐原ひかり」
    「タイムシートを吹かせ/石田夏穂」
    「君がため春の野に/杉井光」

    嘘をテーマに描いた7話収録の短編集。

    杉井光さん以外は皆さん平成生まれという事もあってか、VTuberや動画配信、マッチングアプリ、ユーチューバーなど今時のコンテンツが目白押しで、文章に勢いを感じた。

    どの短編も個性的で楽しめたが、お気に入りは浅倉秋成さんの「かわうそをかぶる」。
    痛快で愉快で強烈。

  • ⚫︎感想
    エンタメの短編集。全体を通して面白かった。
    石田夏穂さんの作品全部読みたい!という動機で読んだため、最初に読んだのは石田さんの「タイムシートを吹かせ」。石田ワールド全開、しかもちょっといい話で終わっていて良かった。レジェンドはレジェンドたる歴史を持っていた。
    「かわうそをかぶる」浅倉秋成さん。「六人の嘘つきな大学生」以来。若者を描くのが上手いんだな〜と思ったし、今作は女の子のVtuberが主人公なので器用さを感じた。本音と建前と本当の自分ってどこ?…怖くて、でも、こんな世界もあるのかなぁと思える、漫画みたいに画像が浮かんでくる作品だった。
    「まぶしさと悪意」大前粟生さん。TikTokと思われる動画が有名になる女子高生の話。若さという眩しさが光る。
    「霊感インテグレーション」新名智さん。二つのアプリを巡る今どきなお話。短い中にスリリングな要素があり、一気に読めた。
    「ヤリモク」結城真一郎さん。あー、なるほど!そういう展開。
    「あなたに見合う神さまを」佐原ひかりさん。権藤さん最高。おもしろかった。青春もの。
    「君がため春の野に」杉井光さん。ミステリー仕立てのお話。




    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    『世界でいちばん透きとおった物語』の杉井光、『六人の噓つきな大学生』の浅倉秋成、『#真相をお話しします』の結城真一郎など、最注目の作家が集結!“今を生きる私たち”をリアルに切り取る7つの物語!

    彼らのその後が読める。本書のための書きおろし! 『世界でいちばん透きとおった物語』スピンオフ「君がため春の野に」収録!

    これが当たり前になった時代で、あなたならどう生きる? 
    信者に人生を壊されたVTuber、バズって神格化された女子高生、呪いのアプリの謎に迫る調査員、娘に似た女性をマッチングアプリで探す男、学校の机に「推し」の祭壇を作る彼女、上司を騙して残業代を増すOL、未だに動く亡き夫のアカウント。それぞれの物語に隠された、生きていくための秘密と噓。ベストセラー『世界でいちばん透きとおった物語』のスピンオフも収録した、新進気鋭の作家たちによる現代のリアルを切り取る7つの物語。

    かわうそをかぶる(浅倉秋成)
    人気音楽クリエイターが殺された。犯行動機は『VTuberを守るため』。彼と交際の噂があったVTuber雨露ゆゆは失意の中、事務所に言われて釈明配信の準備を進める。身も蓋もない噂だけで人生を壊されたゆゆは、これまでの人生が走馬灯のようにフラッシュバックしてくる。

    まぶしさと悪意(大前粟生)
    信じられないだろうが、ショート動画を撮りたくてうちに入学してくる子はいる。理由は赤羽海荷がいるから。動画がバズり、カリスマ女子高生として崇められた彼女は、ある日を境に動画を投稿しなくなった。かつて副担任だった私は彼女の様子が気になり、動画を撮らなくなった理由を探ろうとする。

    霊感インテグレーション(新名智)
    訳あり社員が集まる会社に入社した私は、「幽霊からプッシュ通知が届くらしい」といった報告が多発している通称“呪いのアプリ”の調査に乗り出す。どこにも不具合が見つからない中、ひょんなことから解決の糸口を見つけ出すのだが……。

    ヤリモク(結城真一郎)
    三十二歳。独身。そう彼女は信じているが、実際は四十二歳。妻子持ち。我ながら罰当たりな男。マッチングアプリでお持ち帰りを企んでいる男は、今回も小柄でショートカットの女性と出会い、いつものテクニックで目的を果たそうとする。

    あなたに見合う神さまを(佐原ひかり)
    権藤さんの机には、ダンス系ユーチューバーWataruさんのグッズを奉っている祭壇がある。クラスでは浮いた存在の権藤さんだが、ある日、日課の早朝ランニングをしていた私は、推しのダンスを練習している権藤さんを見つける。

    タイムシートを吹かせ(石田夏穂)
    月末。上司のアカウントにログインをして、今月の食費分だけ残業代をかさましする。それは私と会社を繫ぐためのもの。パソコン音痴でパワハラは当たり前、前時代的な上司、通称“レジェンド”の介護をしている私は、どうにかこうして会社を辞めずに生きている。

    君がため春の野に(杉井光)
    前作『世界でいちばん透きとおった物語』を書きあげた僕は、「SNSがテーマ」のアンソロジーに短編を依頼される。無事書き上げた僕は打ち上げで、亡き夫のSNSアカウントが未だに動いているという相談を受ける。そこに隠された秘密と噓とは。

  • 嘘がテーマのアンソロジーであり、各作品で何が嘘に当たるのか?を考えながら面白く読めた。1つ目の『カワウソをかぶる』がインパクト強すぎる。あーこっちの人やったんかい!ただのASD(解離はあるかも?)かと思わせといて自分が気持ち良くなるためならどんな事でもやっちゃうサイコパス人格の居る解離性障害やったんかい!が痛快で(書き方が上手くてミスリードさせるからズルい!)、思わず最後の数ページを何度も読み返した。途中何度もあれ?って思わせつつ上手く気付かせないようにするのが作者の狙い通りやとすると凄いなと。その次の話がなんか面白くなくて途中やめそうになったけど、『ヤリモク』が途中早めにネタバレしたけど面白かったから最後まで行けた感じ。最後の『君がため春の野に』も題名の意味が最初全然分からんかったの最後にちゃんと回収出来るようになってて『世界でいちばん透きとおった物語』の続編として楽しめたりしたし、軽ーい読み物としてオススメできる本。

  • 初めてのアンソロジー。豪華なメンツですよね!
    石田夏穂さん、佐原ひかりさんの作品が好みだった。
    特に石田夏穂さんの作品は面白くて、くすくす笑いながら読んだ。ベテラン社員のことをレジェンドと密かに呼んでいる時点でツボ。あと、IT介護スタッフとかね笑 やはり石田夏穂さん大好きだ!

  • 24/05/05読了
    どれも読みやすく面白かった。佐原ひかり『あなたに見合う神さまを』、新名智『霊感インテグレーション』は登場人物の書き方も好みで、他も読んでみる。石田夏穂もよかったです。

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著者プロフィール

1989年生まれ、小説家。関東在住。第十三回講談社BOX新人賞Powersを『ノワール・レヴナント』で受賞しデビュー。『教室が、ひとりになるまで』で推理作家協会賞の長編部門と本格ミステリ大賞の候補作に選出。その他の著書に『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』『六人の嘘つきな大学生』など。

「2023年 『六人の嘘つきな大学生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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