モーパッサン短編集(二) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102014073

感想・レビュー・書評

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  • 古い本を断捨離しようと思い立ち、捨てる前に再読してみた。
    手元の本の初版は昭和四十六年とあるので、現在はさすがに新訳になっていることだろうと思ったが、今もこの青柳瑞穂訳が売られていて驚いた。モーパッサンなんて今どき売れないから、お金をかけて訳し直したりしないってことですかね。下手くそな(失礼!)ローランサンみたいな表紙絵もそのままだし。コンプライアンス的にアウトだろうという表現もあったけど、さすがにこれは直されているだろう。
    あくまでこの50年以上前の本についてだが、庶民の罵詈雑言の汚さ、同性愛や女性に対する偏見などは、現在の目から見るといかがなものかとは思う。
    しかし、やはり名文であり、人間の滑稽さ、愚かさ、悲哀というものを描き出す力はさすがである。
    「首かざり」「マドモワゼル・ペルル」「シモンのとうちゃん」などはアンソロジーなどでも複数回読んでいるのだが、「ペルル」の雪のなか赤ん坊が発見されるシーンは本当に上手い。シャンタル氏にずけずけと、あなたはマドモワゼル・ペルルを愛していたのです、と言ってしまう語り手の男の年齢は25歳。若さ故である。もっと老いていたなら、わかっても口には出さない。物語はこの男がもう少し年をとっていて、回想しているという構成。この辺の巧みなこと。
    大分前に読んだ本なのですっかり忘れていたが「野あそび」「家庭」も素晴らしかった。
    しかし「蝿」(裏表紙に紹介されている)、「父親」、「待ちこがれ」は、私が現代人だからだとは思うが、しらける感じがした。

    しかし、百年以上前の、外国の話なのに、ここまで読ませるのはさすがだなと思う。コンプライアンスがなかった頃の訳も味わいがあり、捨てるのが惜しい気持ちになった。

  • こういう古典を引っ張ってきて、何点!とかとやかくやる事の滑稽さは承知の上。でも形式を統一するため、そのようにしますよ。
    直近の数冊が良作ばかりだし、古典離れして久しいので、後で5への変更あるかも。

    で、感想。傑作の短編集だった。
    友人からの貰い物なんだが超得だわ。やっぱり基本的には純文学が好きだ。
    皮肉を利かせた作品が多くて、どの話も読後の無常感、というか虚脱感が印象的。途中、ネットでモーパッサンについて調べたんだが、「リアリズムに則った作風で、ペシミスティックな世界観の持ち主」と書かれてて激しく納得した。
    20作以上の短編を集めているというのに、外れと思う話が一つもなかった。個人的に波長が合ってるのかもなー。読み漁ってみるかな。

    あと訳者の故・青柳瑞穂さんの訳がめっちゃ良い!ような気がした(笑)巻末のこの人の解説もかなり正鵠を射ていて楽しめたし、今後彼女の訳本には少し期待を持って望むことになりそうだ。

  • 野あそび

  • あな(Le trou)
    蠅(Mouche)
    ポールの恋人(La femme de Paul)
    春に寄す(Au printemps)
    首かざり(La parure)
    野あそび(Une partie de campagne)
    勲章(Decore!)
    クリスマスの夜(Nuit de Noel)
    宝石(Les bijoux)
    かるはずみ(Imprudence)
    父親(Le pere)
    シモンのとうちゃん(Le papa de Simon)
    夫の復讐(Le vengeur)
    肖像画(Un portrait)
    墓場の女(Les tombales)
    メヌエット(Menuet)
    マドモワゼル・ペルル(Mademoiselle Perle)
    オルタンス女王(La reine Hortense)
    待ちこがれ(L'attente)
    泥棒(Le voleur)
    馬に乗って(A cheval)
    家庭(En famille)

  • ■「蝿」……5人の男と、”蝿”と呼ばれるフーテン女の子との共同生活。セーヌの水面にやつらの青春がキラキラ輝く。
    ■「ポールの恋人」……ポールは恋人の異常なセックスを目撃してショックのあまり自殺する。この手のお話いくつか読んだことあるけど、どれもいまいちピンと来ん。こんなの、ぼくには逆にソソられるんだけどなぁ。
    ■「首かざり」……改めて読んでみたが、主人公夫婦が10年間、爪に火をともす生活をしてやっと返した借金が3万6千フラン。実際の首飾りの値段は「せいぜい5百フラン」だって。ところでこの作品、モーパッサンの代表作のひとつと見なされているが、ぼくにはちょっと残酷すぎてあまり好きにはなれない。
    ■「勲章」「夫の復讐」「墓場の女」……ブールヴァール演劇風。笑えるwww。
    ■「宝石」……肝心の謎は結局あかされない。それがかえって面白い。
    ■「父親」……最後、「そして、泥棒のように逃げ去った」がキマっている。
    ■「シモンのとうちゃん」……「父なし子」といじめられるシモンは池への身投げを決意するが――。古今東西でおそらく、現実として数え切れないくらいあっただろう、そのくらい普遍的な物語。涙なくしては読めない佳作。
    ■「メヌエット」……老人夫妻がメヌエットを踊るだけ。だが忘れがたい名品だ。

  • な~にせ、モーパッサンですから。
    心暖まる話も思わず涙ぐむ話も皆無です。
    白眉はモチロン、「頸かざり」でしょう。
    薄い本の中でも短い話ですが、
    ラストの一言でビシッと決まる、短篇の見本みたいな話なので、
    未読の方はこれだけでも立ち読みしてくださいね~

    ま、でも、御紹介は↓にしておこう…
    ◆クリスマスの夜
    イヴの夜に夜食の相手を探しに夜の街へ・・・
    ごく短い話で、一見ロマンチックな展開を期待できそうな設定ながら、
    非常にらしいオチに落ち着くという ^^;

    ま、お夜食はメタボの素ですから、止めるに越したことはないかも。

  • モ-1-7

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著者プロフィール

フランス人。1850〜93年。母の友人フローベールにすすめられ文筆に転向。最初の成功作『脂肪の塊』(1880)で一躍新聞小説の寵児となる。短編約三○○、長編数作を書く。長編に『女の一生』(1883)『ベラミ』(1885)。短編小説『幻覚』や『恐怖』は戦慄させるほどの正確さで狂気や恐怖を描写し、この狂気の兆候が1892年発病となり、精神病院でなくなる。

「2004年 『モーパッサン残酷短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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