大いなる遺産 上巻 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102030158

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  • 現代でいう異世界転生ものやタワマン文学などにに共通する,孤独な人間の隠れた僻みを感じさせる。枯れた皮肉をどう読むかで印象が変わると思う。

  • 人間にとって幸せとは何かを考えさせられる話。

  • ディケンズは中産階級の底辺から這い上がった。安サラリーマンだった父はお人好しで経済観念がまるでなく、一家は路頭に迷う寸前まで行った。少年ディケンズは教育らしい教育を受けられず、12歳で靴墨工場で働き、これをかなり屈辱的体験だと捉えていた。これはのちの『デイビット・コパフィールド』に反映されている。

    やがて事務員として働きながら速記術を学び、記者として新聞や雑誌に記事を寄稿し始める。的確な観察を記事にまとめる際、ユーモアとペーソスをたっぷり交えて記述するのが得意だった。

    ディケンズは飽かせぬ天性のストーリー・テラーだった・ただし、小説のプロット構成が巧みだったのではない。

    全体の構成がバランスを欠いていたり、気になるところがあるが、部分部分を面白く仕上げることは抜群であった。

  •  まず率直に感想を言いたい。結構、面白い!すんごく超絶面白い、というわけではありませんが、150年前に英国で書かれた本であることを考えると、時間的・距離的な隔たりを越えてもなお、人間というものは変わらないのだなあと感慨深く思いました。

     さてそもそもの出会いですが、息子が外国の学校に通っているときに、中学2年の文学の授業で取り扱っていました。ディケンズも大いなる遺産も聞いたことはありましたが読んだことがなかったので、では買ってみようとなり購入、息子も私も積ん読を決め込み、その一年後、私だけがこの度ふと思い出し読んでみたものです。

     超絶端折ったあらすじを申し上げます。幼少時に父母を亡くした貧乏なピップ、ふとしたことから謎の人物より遺産を差し上げる(予定の)旨打診される。これを受け入れ、貧乏な田舎暮らしを脱し、都会にて「紳士」となるべく修養を積むが、忘恩と高慢を助長しつつ成長する。成人後、謎の人物がとうとう現れるが、まさかの人物であった。その人物に対し、ピップの心は次第に変化してゆく。。。とまあこんな感じです。

     はじめにどうしても気になるのはその訳です。初版が1951年ですから今から70年前です。紅蓮、羅紗、満願成就、鸚鵡返し、青豚亭、など今であればきっとそう訳さなかったと思うような箇所が多めです。ただこれは訳者のせいではなく時代のせいです。私は常時金欠なので中古を購入しましたが、Amazonで検索するともうこのバージョンは出てきませんね。今はもっと良い訳があるのだと思います。
     ちなみに英語版は無料で読めますので、Kindleをお持ちの方は比較して読んでみても面白いかもしれません。ダウンロードまでして結局私も読んでおりませんが笑

     時代背景を読み込むと、少し違った見方もできます。
     物語の描かれた1860年前後とは大英帝国が産業革命を成し遂げ、世界へ進出しはじめたころ。国としては躍進中も、市民生活は寧ろ資本主義社会の本格的な到来により二分されたように思えます。都市労働者がジンなどの安い酒で憂さ晴らしをするというのが当時の慣習であったと世界史で習いましたが、本作でも酒場でジンを飲むという場面がよく出てきます。また、主人公を紳士(After遺産)と鍛冶工(Before遺産)という対極的に描くさまは、当時のイギリスで「二つの国民がいる」と言われたことと符合します。

     カール・マルクスが『資本論』を書き上げたのが1867年。市場経済に任せる自由放任・レッセフェールの対してカウンタカルチャーが産声をあげようとする社会情勢とは、まさに大多数の市民が貧困や困窮にあえぐような社会であったのだと想像します。

    ・・・

     改めて申し上げると、産業革命後のイギリス庶民の生活状況も分かる、歴史的にも興味深い本でした。話のプロットもなかなかツイストが利いている。結論を予想させない展開は今読んでも古びていない。エンターテイメント小説としても当時バカ売れしたのだろうなあと想像しました。

  • 2021/02/15 読了

  • 笑うところではないんだろうけど、所々ツッコミをいれたくなるシーンがある。
    ピップの心に少しずつ変化があるが、財産を得てピップは何に気がつくのかが気になる。条件の「ピップと名乗り続けること」の理由が分からない。続きが気になる。

  • 両親がなく鍛冶屋に育てられていた主人公の少年ピップが、突然お金持ちの相続人になると言う幸運に恵まれ、ロンドンに出てくる。少年の純な性格はおかしな方向に進みそう。2020.8.8

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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