- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102079010
作品紹介・あらすじ
トロイア戦争は実際にあった事に違いない。トロイアの都は、今は地中に埋もれているのだ。-少年時代にいだいた夢と信念を実現するために、シュリーマンは、まず財産作りに専念し、ついで驚異的な語学力によって十数ヵ国語を身につける。そして、当時は空想上の産物とされていたホメーロスの事跡を次々と発掘してゆく。考古学史上、最も劇的な成功を遂げた男の波瀾の生涯の記録。
感想・レビュー・書評
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この人ほど天が味方した人はいない。
そう思って彼の伝記に触れるのを避けてきた。途方も無い(+周囲からしてみれば無駄な)努力が成功した数少ない事例であるから、「知ったところで…」と諦めていた。
そんな視点に変化が起きたのは、阿刀田高氏の『ギリシア神話を知っていますか』を読んでからである。
阿刀田氏厳選のギリシア神話の他にシュリーマンの功績も紹介されていたのだが、何だか想像していたのと違う…。伝説のトロイア遺跡を発見できたのは引き寄せの法則ではなく、彼が人生の中で得て積み上げてきたものによる気がしたのだ。
まず彼の生い立ちが夢とロマンに溢れている。
ドイツの小村出身、古い遺跡や伝承に事欠かない環境は彼のお気に入りだった。やがて父親からプレゼントされた世界史の本に夢中になり、トロイアは実在すると子供心に確信を持つ。そして、幼馴染で初恋の女の子に将来結婚して一緒にトロイア遺跡を見つけ出すことを約束した。
そりゃ、土台が夢に夢見たもので出来上がっちゃうわけだ。
他に彼が積み上げてきたものといえば、多言語である。
本書を読もうとしたのも『ギリシア神話を…』で触れられていた習得過程に興味を持ったからだった。トロイア遺跡のエリアはギリシア語だが、それを習得する前も仕事の合間に数々の言語をマスターしてきた。
本書の前に読んだ『日本語とにらめっこ』の著者オマル・アブディン氏は抜群の記憶力をお持ちだったが、シュリーマンは意外にも記憶力が弱かったという。
そんな彼が実践した学習法は下記の通りである。
大きな声で沢山朗読→大小問わず翻訳→毎日一回は授業を受ける→興味のある対象について作文を書く→それを教師の指導で訂正してもらう→前日に添削された文章を暗記→次回の授業で暗誦
特段変わった箇所はないのだが、要は何度も学習言語に接すること。
モノにした語学力を武器に、やがて彼はビジネスの才を発揮、築きあげた巨万の富は発掘作業の資金に充てられたのだった。(西洋人にとって難易度が高いと言われる)アラビア語も身に付け、コーランの朗誦までしたというのは今読んでも仰天しちゃうけど…
「つるはしとスコップでホメーロスの詩の舞台を明るみに出すことが、シュリーマンの生涯の目的になっていた」
ホメーロスの詩のみを手がかりに発掘現場をあたるなど、読書中は「この人考古学の勉強してきた?」疑惑が浮上していた。勉強したという記述もなければ、(本書の編者エルンスト・マイヤー氏曰く)当初はほぼ彼の直感で掘り進めることが多く、出土品にも「非科学的な」解釈を施していたらしい。
かといって後の世紀の大発見も、強運のみで成し遂げた訳ではない。
調査する場所に目星をつけ、予想とは違う結果が少しでも垣間見えたら速攻で次をあたる。語学力と(商売で培ったであろう)プレゼン力で多くの人と味方につける。幼少期の体験を土台に、その積み重ねが彼の運命を形作った。
夢とロマンに溢れているけど、現実離れした生き方って訳でもない。シンプルにカッコいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伝説の古代都市イリオン
埋もれていた伝承の舞台
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古代遺跡に興味が出てきて、昔習ったシュリーマンの著書を手に取った。幼い頃に聞いたトロイアの伝説は、実話に違いないと信じ続けて、その情熱を燃やし続けた偉人だ。
まず充分な資金を得るために、勉強を重ねて商売を真面目にやるだけでも凄いじゃないか。結果大成功し、そのまま贅沢に溺れることなく、夢のトロイア発掘に打ち込む。そしてついに遺跡を発見してしまう…!
勤勉と浪漫が、1人の人生で両方見事に花開くという快挙。シュリーマンの発掘のせいで崩れた所があるという批判も見たが、生涯をかけた彼の偉業には敬意を表したい。
夢もなく自堕落な自分が恥ずかしいが、目の前を大切に、一生懸命生きよう。
※図書館で借りてたのだが、ある日を境になくなってしまい、全編読めていない!最後どんでん返しがあったら、見当違いな感想ですみません。 -
世界一有名な考古学者シュリーマンによる自伝とその評価による二部構成。
少年期に夢見たホメロスの詩を事実だと信じ、伝説を現実にするため世界を駆け回り、大商人となってその私財を発掘に費やした夢追い人の波乱万丈の人生を描く。 -
邦題タイトルの通り、情熱で自身の人生と世界を大きく動かしたというシュリーマンへの印象を抱いた。専門的な描写が多々あり理解するのが難しいけれど、19世紀当時に当時の常識を覆す様々なことを仕掛けたんだと思った。自分の夢に対してできる全てを尽くしたんだな。
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私は語学が趣味なので、1章のシュリーマン流語学習得の方法は興味深い。(と言うか、1章しか読んでません…)
"非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日一時間をあてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、次の時間に暗誦すること"
「毎日一時間をあてること」とあるけれど、実際は、「あらゆる瞬間を勉学のために利用した」とあり、一時間どころじゃなかったと思う。
たとえば、日曜日には英国教会の礼拝にいつも二回はかよって、説教の一語一語を低く口真似したり、待ち時間には常に本を読んでいたり、睡眠時間が短かったために夜起きてる時間をすべて利用したりとか。
さらにシュリーマンは、「非常に多く音読すること」によって、胸の病気まで治してしまう!おそるべし!! -
中学生の時に読んで、シュリーマンの熱意と勤勉さに心打たれた。自分も考古学者か探検家になりたいと思ったものでした。自伝だし、事実としての内容は差し引いて考えるとしても、やはり人生を見つめる上でよい本だと思う。
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むかし読んだ覚えがあるシュリーマン伝記を再読。
情熱の男の人生を淡々と綴った起伏に乏しい本。
ただトロイヤ、ミュケーナイへの彼の情熱は感じられ、彼の素晴らしい業績へは惜しみない賛辞を送りたくなる。