数学者たちの楽園: 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159774

作品紹介・あらすじ

アメリカの超人気アニメ『ザ・シンプソンズ』は、ハーバード大学の数学者たちがシナリオを書き、超難解な「数学トリビア」がちりばめられていたこと、ご存じですか? 番組の熱狂的ファンである著者が、シンプソンズ一家が繰り広げるドタバタ風刺アニメに隠された数学の魅力とサブカル的ディテールを語り尽くす。アメリカの知性あふれる笑いと毒の粋を発掘する異色の科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 日本とアメリカで学位への考え方が違うとはよく言われます。米国では、各々の専門性はアイデンティティの一部であり、そのバックグラウンドで何ができるのか?ということが大事なので、別に同じ分野の職につかなくてもよく、活躍の場は広いが、日本では学位は「専門バカ」と見なされ、「現場で活躍できない」とされたり別分野に行こうとすると「もったいない」と言われたりします。

    それでも、シンプソンズの制作スタッフに数学の学位をもったマニアが集まっているとは思いもよらないでしょう。シンプソンズは米国のみならず世界でも話題のお下品ギャグアニメですが、よく見るとーー劇中の学校で黒板に書かれた数式などーー深遠な数学のテーマが散りばめられているのです。そして、まさにそのことによって、世界中の知識人から愛されているのです。

    制作スタッフのなかのある人は、やはり自分の人生について、これで良かったのかと考えるそうです。その言葉を聞いて、言われているのとは違ってアメリカにも専門を勉強したら専門職へという考えがあり、それとの折り合いをしながら自分の価値を高め、好きなものを世の中に問うのだなと思いました。大事なことは、自分の学んだことをバックグラウンドとして、何ができるのかということなのだと再認識できる1冊でした。

  • シンプソンズファンからするとかなりマニアックな内容です!
    数学が苦手な私からしてみればん?何言ってんだ??と思うことが多々でした笑
    でも、「あー!あのシーンね!」嬉しくなり、またアニメを見直しました!
    こんな意味があったんだ…とこの本を読まないと気づかないことばかりでした!

  • 黄色い家族のアニメ「ザ・シンプソンズ」にこれほど数学の要素が盛り込まれていたとは知らなかった。制作側は頭のキレる数学オタクばかりで、作品の進行を妨げないように特別な数字や公式をこっそりと、しかしわいわい盛り上がりながら作中に散りばめていた様子がなんとも可愛らしい。分かってくれる人にだけ届けばいいというスタンスで、視聴者のナードやギークに向けて数学愛を示すというとんでもないアニメだったとは思いもしなかった。「数学者たちの楽園」という邦題にも納得。本書内ではサイモン・シン氏の著書「フェルマーの最終定理」と「暗号解読」からの懐かしい内容が出てくる。やや重複する箇所もあるが、その文面から著者がどれほどこれらのテーマを愛しているかが伝わり、読んでいて楽しい。翻訳は安定の青木薫氏で読みやすい。ザ・シンプソンズを観たくなってしまった。

  • 「ザ・シンプソンズ」というアニメは一度も観たことがない。でも黄色いキャラクターくらいはなんとなく知っていた。スポンジボブの親戚みたいなもので(これも観たことないけど)、ドタバタコメディなんだろう、くらいに勝手なイメージをもっていた。

    ところで「フューチュラマ」というのはタイトルさえ知らなかったけど「ザ・シンプソンズ」の続編的なものなのだろうか。

    さておき、本書のタイトルで「シンプソンズ」と「数学者」が並んでいるのを目にして、思わず手に取らずにいられなかった。もっとも遠い関連のない2つの言葉だと高をくくっていたからだ。

    ところが本書を読んでみると、実はは数学的ジョークにあふれる、くだらないと同時に高度に知的なアニメだったと知って軽く衝撃を受けている。

    そしてなんと脚本に関わっているのは、大学で数学や物理学やコンピュータ科学などを学んだその道のエリートたち。なかには博士までいる。
    彼らナード(英語でオタクのこと)が、どれだけの視聴者が気づくかもわからない数学ネタを毎回の放送に潜ませようと裏で真剣に議論しているのだ。

    まさかと思ったけど、本書をひもといていくと、フェルマーの最終定理あり、トポロジーあり、カントールの無限論あり、エルデシュの六次の隔たりあり、クラインの壺、メルセンヌ数ありと、ほんとにあの奇妙なアニメ画のいたるところに数への目配せが散りばめられている。これは楽しい。

    なかでも恐れ入ったのは、脚本家のひとりケン・キーラーが、「フューチュラマ」の作中でキャラクターの頭脳と体が次々と入れ替わってしまうという設定の回で、どうすれば元どおりになるかを考え、一般化する過程で、みずから定理を発見してしまったという快挙!

    個人的には作中のいたるところで用いられている「1729」という数に胸が熱くなった。数学者G・H・ハーディと早逝の天才ラマヌジャンの友情に関わるちょっとほろりとさせられる数。

    ちなみに、1729=1^3+12^3
    =9^3+10^3

    だから何? かもしれないが、だとすれば「ザ・シンプソンズ」はぜんぶ「だから何?」でできている。
    著者によると、上の天才脚本家集団たちのこんな口癖があるらしい。

    「Fuch' em(ほっとけ)」

    拍手。

  • 米国のコミック「シンプソンズ」のスタッフには、数学者がいっぱい。コミックの中にも数学の有名な数式やフレーズが頻繁に登場しているという。その数式を取り上げ、数学ネタや数学史について繰り広げてくれる。
    正直、数学的な内容はほとんどわからないけれど、読み物として楽しく病んだ。この人たち、本当に好きなんだね数学が。真に遊び倒しているんだろうなあ。

  • 「ザシンプソンズ」という独特のせんをついた面白い本。すごすぎる数学者が携わっていたという事実を紹介してからどこに生かされていたのか紹介されている。

  • フェルマーや暗号や宇宙のような大テーマではないので、気軽につまみ読みでOK。

  • あのサイモン・シンの新作だから、もちろん翻訳は青木薫さんだから、文庫が書店に並んだらすぐに買って読んだ。ただ、どうも中身はアニメ「ザ・シンプソンズ」の話らしい。アニメには全く興味がない。しかし、読み進めていくとなんとなんと数学の話題が満載ではないか。それもそのはず、このアニメ脚本家の数名は数学を専門にしていたらしい。そして、番組の中にこっそりと数学ネタを忍び込ませている。それを見つけ出すのが数学オタク(ナードとかギークとかいうらしい)にとっては楽しいわけだ。日本にそんな番組はあっただろうか。「ドラえもん」はどうだ。「ふしぎなメルモ」ならどうだ。まあちょっと違うなあ。数学オタクが楽しめる番組・・・そうか、「コマ大数学科」があった。本書解説の竹内薫さんとビートたけしさんのあの番組。復活してほしいなあ。もっというと「たけしの万物創世記」をまたやってほしい。授業ネタ満載だったからなあ。竹内さんも本書から授業のネタを見つけているようだけれど、僕の場合は、パンケーキをサイズ順に並べ替える問題かな。最初、ハノイの塔と同じかと思ったら、複数枚いっしょにひっくり返せるということでずいぶんと違っていた。問題はわかりやすいけれど、やってみたら意外と難しいというのが一番。ところで、タングラムをはじめ、いろいろな形を作るパズルは数多くあるが、ピタッとはまったときの感動は大きく、中毒性がある。そしてこれは収納にもつながるのではないかと思っている。食洗機にぎりぎり入るかどうかの食器を詰め込んでいく。終わった後の食器を棚にしまい込んでいく。どちらも毎日楽しくて仕方ない。(追記)著者による謝辞に含まれているが、前作の「代替医療解剖」のために名誉棄損で訴えられたらしい。たしかに、あれだけ書かれてしまうと商売あがったりだろうしなあ。とは言ってもエセ科学にだまされる人は結局なくならないのだろうなあ。

  • 数学に明るくなくてもしっかり面白かった!
    シンプソンズのアニメ脚本家チームには名門大学の数学科出身が多く、アニメの中には数学への愛のあるジョークや歴史的な数学者のオマージュがふんだんに織り込まれており、その解説を「フェルマーの最終定理」でお馴染みのサイモンシンがしてくれる。贅沢な一冊。

    なぜ数学者がコメディ脚本家に?と思うが、数学の証明のプロセスと脚本を書くプロセスが似ているというのに納得。(目的地があるか保証されていない点。)
    アニメの内容も皮肉やウィットに富んだジョークがあり、見てみたいと思った。(シンプソンズの代表作はCCレモンではない。)

    やっぱり、普通の人にとって「何でそんなことに時間かけるの?」と疑問に思ってしまうことを、本人にとってはその姿が正しいという哲学があるから時間やお金を惜しまず情熱をかけて取り組めるという物語が好きだ…!

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著者プロフィール

イラストレーター

「2021年 『世界じゅうの女の子のための日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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