アウトサイダー (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102401439

作品紹介・あらすじ

廃城をさまよう天涯孤独の男。彼はそこで何と遭遇したのか(表題作)。ランドルフ・カーターは、二百年ぶりに発見された銀の鍵と共に消息を絶つ(「銀の鍵」)。冥(くら)き伝承の蟠(わだかま)る魔都アーカム。ギルマンの棲む屋根裏部屋で起きた、人智を超越した事件(「魔女屋敷で見た夢」)。唯一無二の光芒を放つ作品群から、おぞましくも読む者の心を摑んで離さぬ十五編を訳出。これがラヴクラフトの真髄だ──。

感想・レビュー・書評

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  • 新潮文庫第3弾。
    ファンタジー寄りで、ドリームランドというシリーズらしい。
    長さ的には小粒だが、かなり好きな作品群。
    ロード・ダンセイニのペガーナ神話に、ラヴクラフトなりに影響を受けて。
    という意味では稲垣足穂の兄弟なのだ。
    第4弾はどうなるんだろうか。
    積んでいる創元推理文庫に手を伸ばすべきか、小休憩を置くべきか。

    ■アウトサイダー
    ・山尾悠子が「作品集成」の付録冊子中の「ラヴクラフトとその偽作集団」にて言っていたのが、確か、ラヴクラフトにはハマらなかったが唯一「アウトサイダー」には惹かれた、と。
    ・いわゆるクトゥルー神話群のサスペンスや衒学的描写やペチャグチャな狂騒に比べると、本作は大変に静謐。
    ・根拠はないがボルヘスも本作を好きなんじゃないか。鏡が出てくるし。
    ・あるいは鏡が抑制されているという意味では、マルセル・シュオッブ「黄金仮面の王」とか、直接の影響関係にあるやないやは不明だが、死穢と老いと病が人間の本質だとして、それに直面させる鏡というモチーフは、普遍的なものなのかもしれない。
    ・私も一番好き、かもしれない。こういう心象風景に生きたことがあった、かもしれない。
    (田辺剛による漫画あり)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC_(%E7%9F%AD%E7%B7%A8)

    ■無名都市
    ・他の邦題に「廃都」。
    ・神殿の歴史絵に描かれたのは、神か、それとも? というツイスト。
    (田辺剛による漫画あり「名もなき都」)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E5%90%8D%E9%83%BD%E5%B8%82

    ■ヒュプノス
    ・他の邦題に「眠りの神」。
    ・大瀧啓裕は「魔犬」が本作の進化形だというが、個人的にはこちらのほうが美しいと思う。幻想文学として。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%A0%E3%82%8A%E3%81%AE%E7%A5%9E

    ■セレファイス
    ・他の邦題に「夢の都市セレファイス」「光の都セレファイス」。
    ・夢の中の世界の方が本物だ、という、辛く(現実の彼の最期)、優しく、美しい話。ギレルモ・デル・トロ「パンズ・ラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」ぽくもあり。
    ・明晰夢体質だったラヴクラフトの分身だろうと感じたが、wikipediaによれば「未知なるカダスを夢に求めて」に再登場し、主人公ランドルフ・カーター(これまた作者本人がモデル)に助言を与えるんだとか。おお、自分が自分を導くという構図。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%B9

    ■アザトホート
    ・他の邦題に「アザトース」「アザトホース」。
    ・短編ともいえない断章。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B6%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%B9

    ■ポラリス
    ・他の邦題に「北極星」。
    ・「セレファイス」と似た趣向だが、こちらのほうが不気味。
    ・なんでもドリームランドのシリーズというらしい。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%A5%B5%E6%98%9F_(%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%88%E3%81%AE%E5%B0%8F%E8%AA%AC)

    ■ウルタルの猫
    ・他の邦題に「ウルタールの猫」。
    ・猫を殺す奴は惨殺!
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E7%8C%AB

    ■べつの神々
    ・他の邦題に「蕃神」「異形の神々」「異形の神々の峰」。
    ・賢人バルザイ、全然賢くない。そのぶん神官アタルがなんとか。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%95%83%E7%A5%9E_(%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%95%E7%A5%9E%E8%A9%B1)

    ■恐ろしき老人
    ・他の邦題に「恐ろしい老人」。
    ・映画「ドント・ブリーズ」の「舐めてた相手が殺人マシンでしたモノ」を連想。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%90%E3%82%8D%E3%81%97%E3%81%84%E8%80%81%E4%BA%BA

    ■霧の高みの奇妙な家
    ・他の邦題に「霧の高みの不思議な家」「霧のなかの不思議の館」。
    ・またも「怖ろしき老人」が。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%A7%E3%81%AE%E9%AB%98%E3%81%BF%E3%81%AE%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AA%E5%AE%B6

    ■銀の鍵
    ・他の邦題に「銀の秘鑰」。→関連作「銀の鍵の門を越えて」「幻影の王」
    ・ランドルフ・カーター遂に失踪。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%80%E3%81%AE%E9%8D%B5%E3%81%AE%E9%96%80%E3%82%92%E8%B6%8A%E3%81%88%E3%81%A6

    ■名状しがたいもの
    ・wikipediaに項目なし。以下代わりに。
    ・またもカーター。
    ・怪を語れば怪至る式の話で、結構面白い。
    https://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10847254673.html

    ■家の中の絵
    ・他の邦題に「一枚の絵」「家のなかの絵」。
    ・人肉食……しかも語りだけでなく、天井から血が垂れているという強烈なビジュアルで、短編映画のよう。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B6%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%AE%E7%B5%B5

    ■忌まれた家
    ・他の邦題に「忌み嫌われる家」。
    ・回帰と戦うために武器を用意する! 映画「TATARI」とかも連想
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%8C%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%AE%B6

    ■魔女屋敷で見た夢
    ・他の邦題に「魔女の家の夢」「魔女の家の怪」「魔女の家で見た夢」。
    ・屋敷好きだなーラヴクラフト。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%AE%B6%E3%81%AE%E5%A4%A2

    ◇編訳者解説 南條竹則

  • 新潮文庫のラヴクラフト三冊目。表題作はアンソロジーで既読だったけど、収録作ではこれが一番好き。短編としての完成度が高いというか、オチが、読めるんだけど効いてる。民話っぽい由来譚の「ウルタルの猫」も異色で良い。昔起こった恐ろしい事件以来、絶対に猫を殺してはいけない掟ができた村。

    他の収録作は「家もの」が多かった印象。「家の中の絵」は、読みながら日本昔話の「うまかたとやまんば」を思い出した。道に迷って入り込んだ家にいたのは…。

    「魔女屋敷で見た夢」は、セイレムの魔女裁判のときに魔術を使って脱獄し生き延びたという伝説の魔女ケザイア・メイソン(※もちろんラヴクラフトの創作)が住んでいたという家に間借りした主人公が恐ろしい目に合う話で、ブラウン・ジェンキンという顔だけ人間のネズミみたいな変な生き物が夢に出てきそうにキモかった…。

    ※収録
    アウトサイダー/無名都市/ヒュプノス/セレファイス/アザトホート/ポラリス/ウルタルの猫/べつの神々/恐ろしき老人/霧の高みの奇妙な家/銀の鍵/名状しがたいもの/家の中の絵/忌まれた家/魔女屋敷で見た夢

  • 初心者が噂のクトゥルーを読んでみるぞ三冊目!
    今回は「ハイファンタジー」も含む一冊で、前二巻とはまた毛色が違っている。
    不気味で湿度の高い陰気な屋敷や町並みが展開する一方で、夢の中で幾度を旅するきらびやかなファンタジー世界も作者のなかに広がっている。

    個人的な読書体験になるけれど、直前に『文豪怪談傑作選 妖魅は戯る』(ちくま文庫)を読んでいた。
    夏目漱石の「夢十夜」に連なる「夢」をもとに描いた作品を中心に収録した一冊で、
    独特な夢日記を展開する中勘助、うす暗さと怪談味を帯びる内田百けん、見た夢をその都度分析する寺田寅彦と、
    「夢」の世界、「夢」への向かい方、作品の描きかたなど、それぞれの個性がかなり現れていることがわかるアンソロジーだったが、これはそのラヴクラフト版のようにも感じた。
    その流れなら、近代知で閉ざされてしまった世界に今も焦がれ再訪を望み、一方で悪しき夢の世界が現実世界に侵食していく或いは隠された現実が夢に投影される、という憧憬と恐怖の相反する「夢」を描いたのがラヴクラフトか。
    あのアンソロジーに無理やりねじこむなら「セレファイス」「銀の鍵」あたりかな。

    家や建築が舞台装置として事細かなのは前と同じだけど、よりくわしく設定してある。ただ、なかなかイメージしづらい(建築用語の知識がないので画像検索と同時進行な)ところも多々。
    「あら、あの面々がここで…?」というのもちらほらあり、そこは面白かった。

  • 新訳ラヴクラフト選集パート3。
    最も好きな作品は既刊に収録されているので、
    もう買わなくてもいいか、
    創元推理文庫でほぼ既読なのだし……と思ったものの、
    毒を食らわば皿まで――と考え直して購入、読了。

    収録作は
     アウトサイダー(The Outsider,1926)
     無名都市(The Nameless City,1921)
     ヒュプノス(Hypnos,1923)
     セレファイス(Celephaïs,1922)
     アザトホート(Azathoth,1938)
     ポラリス(Polaris,1920)
     ウルタルの猫(The Cats of Ulthar,1920)
     べつの神々(The Other Gods,1933)
     恐ろしき老人(The Terrible Old Man,1921)
     霧の高みの奇妙な家(The Strange High House in the Mist,1931)
     銀の鍵(The Silver Key,1929)
     名状しがたいもの(The Unnamable,1925)
     家の中の絵(The Picture in the House,1921)
     忌まれた家(The Shunned House,1928)
     魔女屋敷で見た夢(The Dream in the Witch House,1933)

    魔都アーカム頌
    といったところでしょうかね。
    元々お好きな方はコレクションに加えてみるのも
    いいかも。

    読者が「あれ?」と
    ページを捲る手を止める瞬間が来るのだが、
    何事もなかったかのようにシレッと続く「銀の鍵」、
    雨宿りのために立ち入った家の主が開いたままの
    稀覯本の話「家の中の絵」が好み。

    細かい話は後日ブログにて。
    https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/

  • 新潮文庫のラヴクラフト新訳選集も第三弾、ラヴクラフト氏の「うぶなロマンチスト」(巻末の解説から)的側面が味わえる、ファンタジー寄りの作が多めだろうか。あと、「魔女屋敷で見た夢」はクトゥルー神話の元々のアイデアが、使い古された怪奇小説のガジェットを疑似科学(SF)の用語で語り直すことだったんじゃないかと、思わせてくれて楽しい。個人的ベストは、そういう意味でもストレートなSFホラーになっている「忌まれた家」。

  • クトゥルー神話傑作選、シリーズでは3冊め。不気味な話が続く。猫の話は不気味というよりは不思議な感じではあるけど…。あんまり細かい設定は覚えられないのだが、なぜか不気味な雰囲気に魅かれる。独特の世界観なんだよなぁ…

  • 短編15編。すらすら読み進められるかと思いきや、中盤のハイ・ファンタジー系も含めなぜか目が滑るというか、作品世界内の描写がどうにもイメージし難く、逆に疲れてしまう始末。最後の2編、「忌まれた家」は今年になってからアンソロジー『怖い家』で読んでいたし、「魔女屋敷で見る夢」は以前コミカライズ版を読んでいたこともあってまあなんとか。新潮文庫版のこのシリーズを3冊続けて読んで、ラヴクラフト作品はやはり自分には今一つ性に合わないのかもしれない……ということを感じた次第。

  • 南條さん編訳版。
    住居が舞台のものが多い。
    ブラウン・ジェンキンの話も載ってる。
    丁寧に描写されてるのに、イメージが浮かばないので困る。

  • 933-L
    文庫

  • もうね、猫をあがめよ的な(笑。
    一番刺さったのが猫の話でした。

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