飛ぶ男

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103008101

感想・レビュー・書評

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  • 安部公房作品の魅力のひとつは、現実感のある妄想だと思う。
    この世に存在しない「妄想」を、まるで現実にあるもののように記す。もともとが非現実的なものだけに、座り心地の悪さを感じる。それは、ちょうど現代美術を前にしたときの不安感に似ていると思う。少なくとも、私はこの感覚が好きだ。だからこそ安部作品に魅せられているのだと思う。

    本作は、ご承知のとおり、未完成である。だから、物足りなく感じてしまう。
    その原因はもちろん、話が完結していない点や、推敲が不十分だという点にもある。だがそれ以上に、妄想の現実化が不完全な点にあるといえるだろう。

    本作は現実に存在する(しそう)な「モノ」が散らばっている。登場人物の名前も、地名も、(たぶんないだろうけど)実在してもおかしくない「モノ」だ。ここまで現実的な「モノ」にあふれていると、妄想が自由に羽ばたけないのではないだろうか、と思ってしまう(前作『カンガルー・ノート』もピンク・フロイド(実在するロック・バンド)が登場して、驚いた)。おそらく、現実に存在する「モノ」を媒介として、妄想世界の現実化をすすめている最中だったのだろう。現実の再構成だ。残念ながら、夢半ばで終えてしまったのだが…。

  • 不眠症の保根治(ほねおさむ)が夜中に起こされたのは、自称保根の弟の「飛ぶ男」からの電話だった。トリックでもなんでもなく、何故か弟は飛んでいた。

    なんか不思議な話だけど、おもしろかった・・・かな。ただ安部公房が亡くなってから見つかった未完成の作品だったらしくて、所々の単語や文が抜けていたり、最後が尻切れとんぼになっていたりしたのは残念。彼の他の作品もこういう不思議な作品なのかしら・・・?

  •  安部公房の本の中で一番装丁が好きな本。なのにNO Imageで残念。ああ好きだ好きだ。
     安部氏没後に見つかった未完作なので最後の方は読み取れなかった文章が空白であいていて不思議な雰囲気。それすらもこの話の味のような。それが作者本人の意図ではないにしろ、ね。

  • 安部公房の死後に発見されたという最後の小説。
    高校教師の保根(ほね)の前に突然現れた「飛ぶ男」は自らを保根の弟であると自称する…。
    未完な為、「飛ぶ男」はぶつ切りで終わってしまう。保根に父から己を・己から父を守る為互いを近付けないように管理してほしいと頼む飛ぶ男マリ・ジャンプ。「飛ぶ男」に強烈な慕情を抱く空気銃の女・並子と保根のやり取り、並子の独白で第一章?は終わり。
    前日譚となる飛ぶ男と透明人間となった父のやり取りを描く第二章(或いは続きとしてではなく別に保存されていた文章か)「さまざまな父」の方がまだ話の筋を理解しやすいか。ケーキ屋のおねえと並子は別人?それともケーキ屋の後に発酵研に勤めている?透明人間化した「父」と並子が遭遇したらどうなっていたのか…完成版を読んでみたかった

  • ある晩、空を飛ぶ男が3人の人間に目撃される。
    ひとりは彼を空気銃で打ち、1人は見なかったことにし、そしてもう1人は彼からの電話を受けていた。

    安部公房の遺作であり未完の本書。結末が気になりすぎる!
    収録されている「さまざまな父」は「飛ぶ男」の前日譚なのか、だとしたらこの父の正体はなんだったのか。こちらも未完とのこと。
    未完なので仕方ないとはいえ、完成作を読んでみたかったな。

  • 安部公房の遺作。
    突拍子もないのに読者を引きづりこむ物語はさすが。

  • 安部公房の遺作。未完。『笑う月』に出てきた「空飛ぶ男」のような話。最後は断片的にきれたまま未完だ。死後夫人による加筆が発覚したとか。その関係でこれもう絶版なのかな。やはり未完ということで物足りなさは残る。『死に急ぐ鯨たち』にこの作品に関する言及があるとのこと。注目すべき点は、この作品には携帯電話が登場していると言うことだ。当時はまだ携帯電話なんて出始めたばかりじゃないだろうか。新し物好きな公房がもっと生きていたらどんな作品を書いてくれたのだろうと期待したくなる、

  • 未完の遺作があった事を知りドキドキしながら読みました。
    冒頭から文字通り飛ばしてるな!って期待以上の出だしだったんですが、途中から文体も視点も乱れ出して、中盤ではメモ書きの寄せ集めレベルの体裁。これから話が始まるか……ってところで前半終了。
    後半は同じアイデアを元にした別テイクにも見えるけど、どうにも文章が稚拙だし、何よりも話の構成が素人くさすぎるので、夫人か編集者によるものでしょうか。まぁ、ちょっとこれはないな、と。

    スプーン曲げの少年の話は出版を楽しみに待っていた作品ではあるけど、この状態だったら公開しないほうが良かったのでは、と思ってしまった。あるいは未完なら未完らしく走り書きを集めた資料集くらいの方が価値はあったと思う。全集版をあたるべきか。

  • 安部公房は文学を極めていくというより、文学の可能性を作品を通して実験していたんじゃないかな?『想像力を解放せよ』みたいな。ついつい読みたくってしまう薬物みたい中毒性が魅力。

  • 比喩でも何でもなく、本当に飛ぶ男。
    それが手品なのか超能力者なのかはわからないまま、文章は突然に終わる。
     続きが読みたかった。。。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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