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- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103090175
感想・レビュー・書評
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昭和2年の正月、関東大震災からの復興著しい浅草に、新しい年号を名前に戴いた質店が開業した。賑やかな浅草六区に近いその店は、周囲の喧騒にあおられるかのように繁盛していた。この小説は、縁あってこの店に集った人々の第二次大戦前の平和な姿と、誰もは否応なくまきこまれたあの戦争と戦後の痛ましい姿が克明に描かれている。あまりの悲惨さに沈黙を守るしかなかった人々を代弁するかのように、佐江さんは目をそむけたくなるような事実を言葉にして書き連ねる。戦後美化されすぎた思い出を、徹底的な調査の上で事実に即して描く決意は、戦前生まれの著者の死者たちへの鎮魂歌なのだろう。
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昭和14年、満蒙開拓団員として大陸に渡り、終戦直前、「自決」命令により妻子と父に銃口を向けた柳田保男。戦地から帰らない恋人を待ち続ける六区のレヴューガール染子。23歳で応召し、ニューギニア戦線で地獄の敗走の果てに息絶えた小説家希望の矢野進。—浅草栄久町の路地裏にある「昭和質店」が出会った三人それぞれが生きた「昭和」と「戦争」。