- Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103237426
作品紹介・あらすじ
いま、私たちの足元は、大きく揺らいでいる。遅々として進まない地籍調査、「幽霊地主」を量産させてしまう現行の登記システム、外資による土地買収の横行、国境・国土管理機能の喪失…。過失ともいえる不作為によって放置されたままになっている諸問題を徹底的に追及し、生産財であり環境財であり唯一無二の社会的共通資本である「土地」「国土」の不明化・死蔵化・無価値化をしっかりと防ぐための提言を、多角的に示す書。
感想・レビュー・書評
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外資の土地買収における問題を、詳細に解説している。
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①日本は地籍と言う基盤インフラが未整備な中、②利用規制が緩々であるにもかかわらず、③当事者間だけですべての売買行為が完結でき、④外資規制も皆無である。
第4章のまとめにこう有るが本書の内容はこれでほぼ言い表されている。
提言としては安全保障上重要な土地は区域設定をし、利用規制、売買規制、国有化を行う。地籍を明確にするとともに売買の事前届け出を義務づける。所有者が不明な資産については時効をもうけ一定期間で公有地にできるようにする。地方に関しては地域特性に応じて条例等の規制を設ける。
外国、特に中国の土地取得を合法的なものでありながらいたずらに問題視し、いかにも中国が侵略しようとしている様な書き方をしているのはいただけない。上にある様な制度をほっておいた方が問題なのは明らかであり、中国人からすれば自国では土地は買えない(工場50年、住居75年の借地権が買えるだけ)し場合によってはすぐ立ち退きに合うのに、すぐ隣に買いやすい国が有るなら買っておけと言うことだ。変なリゾート開発なんかはされたくないので利用制限をとっとと着けましょうよねえ。これは相手が日本人でも同じだが最近の日本はそんな元気無いからなあ。
今まで知らなかったが日本の土地法政は
①地籍(土地の境界、所有者の情報)が未だ5割しか確定しておらず、
②売買届出や不動産登記が不備であり、
③国境離島、防衛施設周辺など、安全保障上重要なエリアの土地取引や開発に関する規制が不十分である。一方で、
④民放では土地の「取得時効」等が保証され、
⑤個人の土地所有権が現象的には行政に対抗し得るほど強い。
だそうだ。
地籍の問題は根が深い。大都市圏は特にそうで大阪の92%、東京の79%は地籍が確定していない。どういうことかと言うと登記上の公図がいい加減で漫画にしか見えないものが混ざっており、実際の地図と場所がずれていたり、面積が違っていたりするのだそうだ。一番でたらめな所は形も全然違っている。2004年の新潟県中越地震の際には地籍調査の完了区域の道路復興は2ヶ月で終了したが未了の地区は復興に1年を要した。境界がはっきりしないと手が付けられないのだ。
どうも太閤検地の昔から測量の際に巻き尺を目一杯ひっぱり登記上の面積を減らして年貢(固定資産税)を少なくする手が使われたのが始まりのようだ。また終戦後はどさくさ紛れに何でもありだったようだし。
日向では小学校の校庭にみかんの木を植えた男がいた。どうもこの男の祖先が小学校の拡張の際に畑を売ったのに登記を変更せず、庁舎が火事にあって契約書が消失。日向市役所は気がつかずにこの男に固定資産税を払わせ続けていた。裁判になったが20年以上の占有が強く男の負けだった。
大阪では「大たこ」裁判があった。時効取得により占拠していた屋台の有る土地は自分のものと訴えを起こしたがこれは「大たこ」の負け。逆に不法占拠の訴えを起こされ撤退することになった。永らく不法占拠を認めて営業許可を出していたのも大阪市なのでどっちもどっちである。
地籍は民事が絡むので難儀な話だが利用規制なんか地方条例でさくっと縛ってしまえば簡単に住むだろうと思うのは単純すぎるのだろうか?