呼んでみただけ

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103269212

作品紹介・あらすじ

家族の愛おしい時間を綴るちょっとこわくて、せつない7つのおはなし入りの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「ねえママ」
    特に話すこともないのに呼んでみただけの遊太。
    うちの娘達がこんな風に私のことを呼んでくれたのはいつ頃までだっただろう。
    私の他愛もない話をじっと目を見つめながら熱心に聞いてくれたのは。
    私と手をつないでくれたのは。
    彼女達を抱っこしたのは…。
    当時はそれが当たり前すぎて、貴重な一時だったなんて気が付かなかった。
    あのふわふわした真綿のような軟らかな日々を思い出しながら、遊太のママと共に遊太の成長を見守る。

    クラゲが星に伝えたかった言葉。
    何十億年経っても変わらずに受け継がれたその言葉は言霊となって、長年待ち焦がれた星だけでなく、地球上の全ての生き物に大事に大事に伝えられていく。
    そして最後は読み手の心にも優しく響き渡る。
    「きみがだいすき」という「すごくなかよくなると、いいたくなることば」は子供だけでなく、大人にだって、いや大人にこそ伝えなければならない言葉なんだ。

  • 親子の日常を切り取った、一冊。

    とにかく温かさで満たされる物語、良かった。

    親子の会話や触れ合い、日常を切り取ったような時間はアルバムをめくるように懐かしさが心をくすぐる、泣きそうな言葉が溢れている。

    「冬の花咲いた」は可愛さと温かさがたまらない。

    「星に伝えて」が一番好きかな。

    この言葉、もっと言ってあげれば良かったな。

    余裕のなかった自分の子育て時代を思い出しちょっと後悔の涙。

    でも成長したからこそ伝えられる言葉もある。

    どんな時でも味方だよ。なら、ずっと伝えられる。

  • 主にお母さんが小さい子供に物語を聞かせてあげるお話。なので、劇中劇ならぬ、物語中物語がいくつかあるのだが、それらがとてもいい。子供に聞かせるお話だから、とても分かりやすいのだが、大人の自分が読むとなんだか泣きそうになってしまう、根底ににとても優しい想いが溢れている物語。とくに、最初の星とクラゲのお話と、ひねくれ者の魔女のお話が好きになりました。

  • ママが息子に
    お話しを作って語り聞かせる。
    別途サイドストーリー。
    時々パパも登場。

    楽しかったり、ヘンテコだったり、
    でも、どれもとても優しいお話。

    息子の遊太君が「湯冷め」を「ユザメ」というサメと思ったり
    ママの寝言「レジ袋あります、ポイントカード持ってます」
    なんていうのも、かなり親近感を覚える。

    こんな風に子どもと
    意味があるような、ないようなことを話している
    柔らか空気に包まれている感じって素敵。

    でも、私はもっとガミガミしてたなぁ。
    こんなに可愛い時期なんて
    あっという間に終わってしまうって
    わかっていたのにねぇ。

    今回はお気に入りを選べないくらいどれもいいお話でした

  • 「呼んでみただけ」

    応えてくれるあなたがいるから
    ってとこでしょうか。
    表紙といい題名といい、なーんかあったかい雰囲気に魅かれたのですが、
    想像以上によかった。
    安東さん、初めて読んだのだが、素敵です。
    どうやら児童文学系の作家さんのようですが、これは他のも読んでみたいものです。

    ママが遊太くんにはなしてきかせるおはなしのかずかずがそれはそれは素敵で。
    イメージ力が素晴らしい。
    ちょっとせつなかったり、ふふふと笑ってしまったり、
    すこーしブラックも入ったり、それを受け止める遊太くんの感覚も繊細で、
    こーゆー親子関係っていいなあっとしみじみ。
    子どもってあっという間に育ってしまう、とゆーけれど、
    これはそのほんの一瞬の、キラキラした時間なんだろーなー。

    ママと遊太とパパとおばあちゃんとか、そーゆー家族のおはなしと、
    ママ自作のおはなしと、一口で二度おいしい、とっても素敵な作品でした。

    にしても子どもってやっぱりちょっと不思議な生き物、
    傍からみてると無闇に元気で、ウルサクテ、エネルギーのカタマリみみえる。
    自分にもそーゆー時代があったのかしら?と半信半疑なほどに。
    そのころの”私”と今の”私”は連続しているけれど、全く違うもののような気もする。
    背が高くなるにつれて、遠くの方まで目がいくようになって
    先が見通せないことがどうしようもなく怖くて、もっと目の前のことだけに
    一生懸命で、そばにあるぬくもりだけにほっとする、そんな風なままで
    どうしていられないのかなあ。
    成長って、私にとってはオソロシイものだった。
    先にあるのは別れだと分かっていて、
    どうして人は大切なものをたった一人でこの世界に送り出すんだろう?
    って、なんか全く違う方向に話がいっちゃったな、いかんいかん。
    超ネガティブなのは私のわるいくせだなー

  • 6歳の遊太くんと優しいママとの、暖かい会話。ママの優しいお話。とても暖かいママのお話は子どもを癒やす。子どもの頃、こんな時間を持てた親子はなんて幸せ。私は、自分自身にも記憶にないし、息子とこんな時間をもてたという記憶もない。だから、ダメだったんだろうなとという若干の劣等感と、こんな美しいものではないにせよ、何かこの頃だから一緒に見た風景、会話があったような気もうっすらとする。でも、やはり読み続けるにはつらいのよ。誰かに、いや、こんなの無いって。あったらいいって話だよと、言われたいような複雑な読後感。

  • この本に収録されている何作かは独立して絵本・児童書になっている。
    読む順番を間違えたという感じ。
    歯の話怖かった。もしかして遊太はもうこの世にいないのでは?と思わせる何かがあって、この話以降は何が起こるんだろうとドキドキしていた。何事もなく終わった。

  • 自分にもあった
    幼子との甘やかでほろ苦い時間を思い出しながら
    一編、一編を 愛おしみながら読みました。

    どの章も好きだけど
    「モグラのねぐら」
    「へそまがりの魔女」は
    読後は心にホッカイロを貼ってもらった感じ。

  • まあ素敵な話なんだけどね。これ子どもも喜ぶのかな?それとも大人のおとぎ話?

  • 幼稚園児の遊太くんとママ、時にパパとのたわいなく移ろう日常のやり取りが静かに静かに胸に沁み入り、夢うつつな体験とママの創作童話に大事なことをハッと気づかされる。何気ない会話の中に大切なメッセージが込められていたように思う。
    遊太くんのママの自分にできることで頑張ろうとする姿勢や「へそまがりの魔女」の章の終わりの息子への祈りには自然と共感。
    遊太くんの成長を感じるラストは、我が子がいつか手を離れていく寂しさに襲われながらも今一緒にいる時間の限りない愛おしさで胸がいっぱいになった。

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著者プロフィール

山梨県甲府市生まれ。1994年に「ふゆのひだまり」で小さな童話大賞大賞、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞、2001年に『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、2018年に『満月の娘たち』で第56回野間児童文芸賞を受賞。主な作品に『頭のうちどころが悪かった熊の話』(新潮文庫)、『星につたえて』『ふゆのはなさいた』(アリス館)、『夜叉神川』(講談社)などがある。

「2021年 『メンドリと赤いてぶくろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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