深夜特急〈第三便〉飛光よ、飛光よ

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 484
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103275077

作品紹介・あらすじ

トルコで"使者"としての役割をはたしたは一路ギリシャへ。宝石を敷きつめた様なアドリア海を船で渡ると、「ローマの休日」が待っていた。しかし、何かが違ってきている-。南仏、スペイン、ポルトガルと旅を続けてきたは、ユーラシアの果ての岬サグレスで、の汐どきを見つけた。そして、終着点のロンドンで…。

感想・レビュー・書評

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  • アジアでの旅が終わり、ヨーロッパに足を踏み入れる、漠然たる不安を私が勝手に感じながら読み進めたが、ヨーロッパだから危険で不親切などということは当然なかった。

    旅を進めるうちに感じた、心躍らなくなる感覚、旅は人生と同じで時と共に変化をするという感覚がとても面白かった。自分はどこでも生きていける、市場で値切り、ホテルで値切り、逞しくなったが、擦れてくる感も出てくる。同時に危機意識が鈍り、恐怖に鈍感になる。一部の香港編で若者がベッドに寝たまま起きられなくなるという感覚がわかるような気がした。旅を長く続けすぎると無感動無気力になると言う感覚。そして、一人旅で自分が孤独である事を感じる寂しさ。旅は適正な長さでするのが良い。

    人は人とのコミュニケーションから学び、感じる。旅の最中で何が心に残るかは人それぞれ、違っていてそれで良い。

    わたしは生涯終えるまでにこんな旅はもうできないだろうと思う。娘息子には中学生ぐらいになったら是非読ませたい。旅をすることを疑似体験してもらい、どう感じたか是非聞きたい。

    旅の終わりどき。どう決めるかは人生の岐路に似ている気がする。

  • シンプルにこの本と同じルートを旅したくなった。
    南欧はやっぱり魅力的。
    ただ一つ違和感を感じたのは、自分もよく海外一人旅をするけどこの主人公ほど多くは声を掛けられない。
    物語の進行上、訪れた土地の人との接点が無いと成り立たないところもあると思うけど実際はどうだったのだろうか。
    リアリティを追求するとしたらちょっと疑問。

  • 物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
    東大OPACには登録されていません。

    貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
    返却:物性研図書室へ返却してください

  • 著者の20代の旅はついにトルコ、ギリシアとヨーロッパまで進む。イタリア、スペイン、ポルトガルと続く旅で、著者は多くのトラブルを越え、多くの方々の想像もつかないような驚きの親切を受けて、ポルトガルではユーラシア大陸の西端サグレス峠へ到達。そこでのペンションでのあっと驚くような凄い歓待!著者の感動は読んでいる読者自身が新設を受けたように共有できるように感じた。私自身が同じ年に欧州各地で出会った方々の雰囲気を思い出させてくれるからかも知れない。トルコのアンカラで出会った画家の美人妻、ローマでは高齢の日本人未亡人と過ごした1日の描写も味わい深かった。一期一会で著者はこの中の多くの人たちとはその後も会えていないと思うが、これもまた旅がもたらす情緒かもしれない。サグレス峠からパリ、ロンドンへ至る旅は、いよいよ旅の終わりで日本が近づいてくることを意識するというアイロニカルな日々のように思った。戦争中だったトルコ・ギリシャの国境の橋を渡る場面、死んだような現代のスパルタの町の描写が印象的。マドリードで会った日本のほとんどの若者が視線をそらす行為から、自分の鏡つまりみすぼらしい自分の姿を見たくないという解釈(P268)は全く同感だった。それにしても1974年の世界の人々の生活を生々しく記録にとどめた名著だと思う。

  • 第1便、第2便とそれなりに旅の雰囲気は楽しめたが、その流れの中で中々最終巻に手がつかず、ブランクの後ようやく読み始めた第3便。
    旅もアジアからヨーロッパに入り終盤になる中、旅を人生に見立て、1・2巻とは異なる心の揺れを描きながら、旅の終わらせ方を模索する描写が絶妙だった。

    あと筆者がスペインで思い出すタイの駐在員の言葉『わからないということをわかること。』はとても含蓄がある一言だ。
    中途半端に知っているとそれらに捉われて誤ってしまう、自分が知らないということを知っていると結局は誤らない。

    2022.11.05読了

  • ついに読み終わってしまった。
    終わりの寂しさを感じながらも、著者自身も良い終わり方を模索していたかのようでなかなかよかった。

  • 読み終わるのが惜しいと思えるくらいの名作だと思う。

  • 刺激に塗れた旅を続けると、心が摩耗されていき、だんだんと腐敗していく。

    だけど歩みを止めず、進む。

    第一便では旅の興奮、不安、高揚が多かったけれども、第三便では旅の怠惰、腐敗、諦観に溢れている。リアルに溢れているこの本に触れて、また自分も旅に行きたくなりました。

    そう、恐れずに、、

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001144290

  • 著者の旅が終わりに近づくにつれ、
    私もこの本の終わりが近づいてく。
    読後は、何となく、寂しさを感じた。

    第一便から通して、
    出不精な私でも、旅の魅力を感じた。

    同時に、日常生活の中でも、
    見る角度を変えるだけで、
    新鮮に映るものは多いんだろうな。とも感じた。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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