著者 :
  • 新潮社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103275121

作品紹介・あらすじ

極限のクライミングを描く、究極の筆致。『檀』から十年、最新長編作品。最強の呼び声高いクライマー・山野井夫妻が挑んだ、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカン。雪崩による「一瞬の魔」は、美しい氷壁を死の壁に変えた。宙吊りになった妻の頭上で、生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とは-。フィクション・ノンフィクションの枠を超え、圧倒的存在感で屹立する、ある登山の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 凄まじい内容でした。
    初めから、又中盤からラストにかけてはヒリヒリして呼んでいるだけでも緊張感で震えました。
    ここまでの、既に何回か死んでいてもおかしくないにも関わらず執念とも言える山への情熱がなぜ、どこから湧いてくるのか常人には想像も出来ませんが、このおふたりにはそれが生きているということなのかな。
    とても映像的で感覚にも訴えてくるような文章でずんずん読めました。

  • 沢木耕太郎の凍を読みました。
    主人公は実在の人物で小さい頃から山が好きで、父親に反対されても、山が自分の人生と冬山を目指します。
    女性クライマーとも出会い夫婦で山に登り続けます。
    死と背中合わせで、どうしてそこまでというのもありますね。
    高校の頃孤高の人や栄光の岸壁を読みましたが、久々の山の物語ですが、良かったです。

  • 久々の、どんどん先を読み進めたい気持ちと、終わってしまうのが嫌で進めたくない気持ちがせめぎ合う、読書の醍醐味を味わえた一冊。
    尊敬するアルパインクライマー山野井泰史さんと妻妙子さんの、ギャチュンカン登攀。過酷な、二人でなければおそらく遭難と死は必至だったであろう道程の描写に緊張が止まらなかった。
    結末を知っていても、不安になった。
    アルピニストの業、というものを知った。
    生きていることの重さを感じられた。
    読む前の自分には、必読、大満足の一冊になるよと伝えたい。

  • 面白かった
    奥さんが凄い人だと思った。
    山登り自分はやらないけど、そこまでしてやる魅力があるんだろう。
    自分も小さな山でいいから登ってみたい

  • ノンフィクションの凄みなのか惹き込まれて一気読みしてしまった。
    以前筆者の山野井夫妻との対談書で本書の内容に触れており、読んでみたい一冊であった。

    切り立った壁、極限の寒さや雪崩の恐怖、剥き出しの大自然がヒシヒシと伝わってきた。

    狂気や中毒かとも思ってしまう山に対する姿勢と日常の生活があまりにもストイックであるが、これが生死を分ける境目なのかもと納得した。
    極限の状況で揺るぎない夫妻の信頼感とリスペクトは何とも言えずいいなぁと思った。

    凍傷により以前のような動きができない中でも次の目標を見据え、チャレンジし成し遂げる姿にただただ感動。
    自分の意思で変えられないことはさっさと見切りを付ける潔さは見習いたい。

  • 実に地味な語り口で、イマイチ盛り上がらんかな?と思いきや、むしろこの過酷な展開には無用な脚色は不要です、てな気にもなってくる。
    それだけ壮絶な世界で、しかしこれ、どれだけすごい壁なのか分からん、って時は直にネットで調べられるから、便利だわ。でも写真で見ると快晴だし、その厳しさがむしろ伝わってこず、となると実は写真より言葉のほうが伝わるのね。
    しかしこういう冒険ものってけっこう盛り上がるのよ、思いの外って言ったら何だけど。ハイキングでも行ってみるかな。

  • この実話を読んでレベルの高いクライマーの世界が垣間見えた。ギャチュンカン凄いし、登り切って帰ってきた山野井夫妻凄い。山をやめようとしてまた始めてしまう山野井凄いし、俗世から遠く離れてるような妙子凄い。彼らの世界には辿り着けないだろうけど山に登りたくなった。

  • 山野井と妙子の山に対する想い、登攀の歴史、スタイルがノンフィクションだと知り驚いた。山の空気を吸いたいから、無酸素で登る。山には何も残して来ない。生きて帰る。マスコミ嫌い。凍傷で手足を失っても、山を諦めない2人がとても清々しかった。こういう夫婦のあり方も、良いなと思った。

  • ノンフィクションの面白さはそれが実際に起こった事である、という所だと思う。ノンフィクションを読むたびに「人間ってすごい可能性があるのだなぁ」と感動するし、自分自身も頑張ろう、と思う。
    本書ではその醍醐味を思う存分味わえた。

    山に全く登らない私としては、登山者がどうして困難な山に挑戦するのか良く分からなかった。本書を読んだ今、「彼らには理由などなく、ただ登りたいから挑戦するのだ」というのが感覚的に分かった。それはきっと本能的な物で、部外者には理解しがたいものなのだろう。

    正直に言うと、山に縁遠いものとしては、ちょっとうーんと思う部分もあった。妙子さんが死んだかもしれないと思うシーンでは山野井さんのドライさが何となく受け入れがたかったし、困難な山に挑戦して死にかけて荷物を置いてきてしまい、しばらく後で取りに行ったけど氷河が移動してるからありませんでした!というのは自然と対峙すると言いながらも非常に人間都合だなぁと感じた。しかしながら、そういう何となくもやっとする部分もリアルに書いてあるからこそ、山野井さんと妙子さんが身近な生きている人として生き生きと感じられ、二人の行方にはらはらさせられるのだと思う。そして、上記のもやっとした部分に関しても、最後には「私の考え方とは違っても、これが彼らの流儀なのだ」と納得させられてしまう。改めて沢木さんの文章力の凄さを感じた。

    人間って最後には精神力なんだよなぁとつくづく思った。お二人が無事に戻ってきて、今また山に挑戦していると言う事に「すごいなぁ」と思うばかりだ。

  • 2011/10/21

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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