しろがねの葉

著者 :
  • 新潮社
4.02
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103341949

感想・レビュー・書評

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  • 石見銀山の深く長い間歩を思い出しながら読んだ。
    銀山に抱く畏怖が暗闇のように押し寄せてくる。
    全体的には暗いテーマの物語なんだけど、自然の偉大さや人の繫がりの強さを感じさせる描写が光のように差し込んできて、なんとも切ない気持ちになった。
    鉱脈、命の繫がり、流れる血…それらが大きな一つの道になっているようなイメージ。
    読み終えて、なんだか圧倒されている。

  • 世界遺産好きでここ数年来、石見銀山に行きたいと思っていたところに、昨年の直木賞で話題になった本書を知って読んでみた。世界遺産検定の勉強のお陰で石見銀山の知識が多少あったので、物語の背景が分かりやすかった。

    戦国末期の石見銀山。ウメという女性の生き様を描いたお話。現代よりもずっと過酷でしがらみの多い時代。それでも、置かれた境遇に抗ったり、受け入れたり、愛する人たちを看取ったり・・・人の営みというものは根本的には変わらない。ウメの人生を通して、この時代にも懸命に生きた人たちが確かにいたということを感じた。

    ますます石見銀山に行きたくなった!

  • 久しぶりの小説。

    なんにもまとまらないけど、頭の中でいっぱいに溢れてる。辛いという表現が合っているのかわからない、辛いという一言では言い表せない生涯だった。読み終わったいま、ただ胸がいっぱいになってる。

    ウメの生涯の話。喜兵衛、隼人、龍。それから、ヨキ、岩爺、おとよ。

    どこから考えても胸が締め付けられるようなギュッとなる気持ちになる。こういう現実でもなかなか味わえない泣きたくなるような気持ちにさせてくれるのはすごいと思う。またすぐに千早茜さんの違う本を読みたい。

    こういう古い時代の本(戦国時代)を読むのは初めてで読み切れるかと最初の一瞬不安になったが、続きが気になってほとんど止まらずに読み切った。

    最後の最後に1ページ目の詩みたいな部分をもう一度読んだ。人生って長いな。壮大だな。

  • 千早茜さんの新刊はよく読んでいる。
    ただ今回は戦国末〜江戸初期の石見銀山が舞台ということで、あまり興味を惹かれずスルーしようと思っていたところでの直木賞受賞!
    それならばと読んでみたのだけれど、スルーしようとした自分を怒鳴りつけたいほどの傑作だった。
    家族と生き別れて石見銀山にたどり着いた、ウメという名の少女の人生。
    天才山師・喜兵衛に拾われ、その後の過酷な運命を石見銀山で生きていくこととなる。
    時代が時代ゆえに、喜兵衛とともに真っ暗闇の間歩で働きたくとも"女だから"という理由一点で排除される様子はつらかった。
    物語の真ん中の章、「血の道」は圧巻で、感情が揺さぶられて幾度も涙した。少女が大人の女性に生まれ変わっていくことの神秘性、暴力性のようなものをしみじみと感じさせられた。女を強要されることの、あまりの残虐さには閉口する。
    ただウメを見る隼人の目がじょじょに変容していくのは微笑ましく、尊いと思った。
    ただ銀堀の男たちは長生きできない。肺を病み、咳に苦しんで早死にしてしまう。ウメが彼らの死を乗り越え、あるいは受け入れてそれでも生きていくしかない力強い姿には、勇気をもらえる。
    千早茜さんの筆致がとにかく美しくて、読み終えたあとは深い充足感に感嘆のため息がでた。
    直木賞受賞、おめでとうございます。

  • 生きるということ。
    ウメの人生を、傍でずっと見ている感覚になるような文章がすごい。
    最後まで知ったあとのこの感覚で、ウメの幼少期から、はじめからを読み返して反芻したい。

  • 鉱山で働く男は20代、30代、40代でほとんど死んでいく。そんな中で銀を採掘し、それを最後まで全うしながら死んでいく。
    主人公のウメはそんな男たちの中で、女性としても一人の人間としても力強く生きていく。そんな女性の人生がとても丁寧で繊細な文章で描かれていました。幼いころから苦難に満ちていましたが、喜兵衛、隼人、龍といった様々な男たちとの出会いや交流があり、そして別れもありました。
    でも最後まで石見の山、その土地と共に生き、人生の幕を閉じていく。人生での愛や哀しみなど本当に沢山の感情を起こさせてくれる内容でした。とても感動できる一冊です。

  • 戦国末期から江戸時代にかけて、石見銀山で生きた主人公ウメの一代記ですが、この主人公の生い立ちから重いものがあります。
    幼いときに両親と村から逃げようとするが、その途中で両親とはぐれて独りとなる。
    山師の喜兵衛に拾われ、手子として銀山で働くようになるが成長していくにつれて自身の体が変わっていくことへの葛藤や困惑。それらを受け入れて銀山の女性として生きていくまでの流れの描写が繊細に描かれ、引き込まれます。
    鉱山で働くということは、常に命を危険にさらす事。そして逃れられない宿命として長くは生きられない事。その宿命を受け入れた上で銀山に入る男性は銀を掘り、女性は子を産み育てる。その中でウメがひたすら、がむしゃらに生き抜こうとしている姿に魅せられ涙がにじみました。
    物語全体を通しては暗さや重さを感じられますが、色による表現描写が繊細にされており、情景が思い浮かぶようでした。

    石見銀山を訪れたことがないのですが、実際に訪れるとこの物語のような生き方をされた人々への思いを巡らせることができるのでしょうか。一度訪れてみて、再度この本を読み返してみると、より物語に引き込まれるのかなと思います。

  • 168回直木賞受賞の戦国末~江戸初期の石見銀山で生きた女性が主人公の物語

    ウメという少女の目を通して銀山で働く男たちの過酷さ、その当時の女性達の過酷さが描かれている。

    世界遺産・石見銀山に行ったことはないけれど、銀山遺跡には大小さまざまな堀り跡の間歩が残っているという。
    今のように道具や機械が発達していない時代に、人生をかけて暗闇で穴を掘る怖さに恐れ入る。
    山は男の世界。生活の為に銀を掘り、肺を患い30歳まで生きられない。
    女はそんな夫を支え、見届け、我が子を間歩へ送る。
    逞しくないと生きられない世界。

    私的にかなりくらう部分があり、重めに感じた。


  • 直木三十五賞受賞発表直前に借りることができた。石見銀山が舞台。主人公の強さに惹かれる。

  • 『ひきなみ 』からの千早茜さん。
    こんなにダイナミックな展開の物語を描く人だとは思わなかった。『ひきなみ 』で、桜木紫乃さんが帯を書いていたことも納得。
    気性の激しいウメという女、石見銀山で銀を掘る男たちと、そこに暮らす人々。広がる街、そして闇を深めていく間歩。その不穏な闇。暗闇でものを見ることに長けるウメの目が、物語をも見通していく。
    ウメを取り巻く男たち、喜兵衛、隼人、ヨキ、岩爺、龍が、それぞれウメと対峙する。ウメが強烈な個性を持って迫ってくる。男と女のさまざまな生き方が、ここにはある。
    ウメが女であることを嫌い、自分の成長に戸惑いながらも、長じるにつれて女であることを理解していく過程も良かった。

    物語も隙がなく構成されていて、ことばも鋭く選び抜かれている。読み進めるほどに手応えがあり、ほぼ一気読みだった。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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