- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103345343
作品紹介・あらすじ
乱世で見たこの世の無常。ちっぽけな終の棲み家で、月を相手に今語らん。下鴨神社の神職の家に生を受け、歌に打ち込み、琵琶に耽溺しながらも、父が早世したためについぞ出世叶わず、五十歳で出家。平家の興亡を目の当たりにし、大火事、大飢饉、大地震などの厄災を生き延びた鴨長明が、人里離れた山奥に庵を構え、ひとり『方丈記』を記すまで。流転の生涯に肉薄した、圧巻の歴史小説。
感想・レビュー・書評
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純粋でプライドも高く、嫉妬深く、褒めてもらいたがりな人間臭く、そしてそれ故に都の貴族社会、神職社会で人付き合いが下手くそで報われない人物として鴨長明が描かれている。
だからこそ辿り着く「方丈記」境地。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
たんたんと、淡々と。
本当に行きては戻る、波のように。
物語がゆっくりと、ゆっくりと。
目の前に長明が居て、長話をしてくれる。
そんな気持ちにいつの間にかなっていた。
そのまま、最後まで。
物語る声まで、ふと聴こえた気までした。
「わが人生最後の執念もこれで消えてくれるであろうか。そうであることを願うが。はて。」
この「はて」が愛おしくてたまらない。
良き人生! -
鴨長明伝。ながあきら、と読むのは初めてかな。
賀茂御祖神社(下鴨神社)の禰宜の鴨長継の次男として生まれる。
凝り性というか、興味のあることにはひたすらだが、
世事にうとく、人付き合いが下手。
『新古今和歌集』に10首が入撰されており、
琵琶の名手でもあった。法名は蓮胤。
『方丈記』の方丈とは、晩年暮らした庵を指す。
一日で読んだけど、
主人公以外の登場人物にあまり魅力を感じなかった。
山東図書館から借りた本。 -
書き下ろし
方丈記を読んでからの方が面白く読めたはず。
鴨長明の生涯の随所に、生き方の葛藤、迷い、自分と世の中への不満が満ち溢れていて、なかなかに面白い。
不遇な前半生ではもがいては拗ねる。後鳥羽院の歌所に召され、有頂天で新古今和歌集の編集に没頭するが、拗ねて途中で放り出す。この性格よくわかるなあ。
鎌倉に招かれて、3代将軍実朝に「人真似をせずに自分しかできない歌を作るべき」「自分を隠して自分を出し切っていない」と直言するが、逆に「そこもとこそ自分を出し切っていない。法体は自分と世間を欺く擬態だ」と指摘されてぐうの音も出ずに帰る。
方丈庵での人生の末期も、「方丈記」を書いて充実感を得るが、自分を格好良く見せたい気取りに気づいてしまう。「発心集」で赤裸々な人間を書いて、やっと人間の醜さ弱さを愛おしいと思う。
いさぎよくなくてよい。