死体格差 異状死17万人の衝撃

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103347736

作品紹介・あらすじ

「病院で死ななかったばっかりに……」あなたも他人事ではいられない! 年間約17万人―高齢化が進む日本では、孤独死など病院外で死ぬ「異状死」が増え続けている。そのうち死因を正確に解明できるのは一部に過ぎず、犯罪による死も見逃されかねないのが実情だ。なぜ、死ぬ状況や場所・地域によって死者の扱いが異なるのか。コロナ禍でより混迷を深める死の現場を赤裸々な証言で浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • 【どんな時代になっても、結局、人間は誰しも、生まれた以上は死ぬ運命にある。どんな死に方をしようとも、専門家がその死体の尊厳を守ってくれる。それも、目指していくべきではないか】(文中より引用)

    なかなか表立っては見えてこない法医学者の仕事。その内幕を覗いてみると、日本社会に広がりつつある「死体格差」とも言える状況の中で、孤軍奮闘するひたむきな人々の姿があった・・・。著者は、インテリジェンスやサイバー分野についての作品も世に送り出している山田敏弘。

    日本社会の盲点とも言える分野に鋭くメスを入れた一冊。ドラマで見て知ったつもりになっていましたが、法医学の世界の奥深さを感じることができました。それにしても、ここまで個人の力に頼り切る状況になっていたとは・・・。

    見えないところに光を当てることって本当に大切☆5つ

  • 死体の取り扱いの問題点を明らかにしている興味深い本だ.死因が明らかでない異常死の物体をどのように扱うかは、日本の各地で非常に異なっている由.監察医制度が機能しているのは、東京23区、大阪市、神戸市だけ、さらに司法解剖制度、調査委解制度もあり、入り乱れている感じだ.先駆者や現に活躍している人々を取り上げているが、あまり知られていないのが実情だ.考えさせられる点が多いと感じた.

  • この「死体格差」の本は読みやすい本ではない。
    専門的な言葉が所々出てくる。そして、説明がほとんど。「こんな死体があった」という死体関係の本かと思ったのに、中身は『死体検案のシステム』についてだった。主に日本のシステムはおかしいと言う話。



    ただこれ、たぶん大前提として『死体を傷つける事は不遜である』という日本的価値観が覆らなかったために過去のやり方が継承され続けた結果だと思うと……システムを変える事が難しいだろうなというのは分かる。

    社会システムが変わる時は『旗振りをする指導者が無理やり変える』と、『民の意識や価値観が変わったために変わる』というものの2種類があると思うケド。民の意識や価値観が変わるには『大きな事件』がないと、なかなか変わらない。大震災でシステムが徐々に変わったように(今も変わらない部分はあるにしろ、変わって来た部分も多い)大きく人の意識を変えてしまうほどの事件が社会システムを変えるためには必要なのだと思う。

    そして、『死体』に関しては生者は身近に死者を感じて初めてそれを実感する……というある意味では『遠い存在』として捉えられているので死体の検案システムが変わるのは遠い道のりなのは分かる。



    本の内容は法医学者たちの話から、日本のシステムの話。アメリカの話と……ざっくり概要がある程度理解できたが、神奈川の話には驚いた。
    神奈川県の死体解剖は『遺族からお金を取る』ので、解剖率が高いのだと書いてあった。
    うっかり旅行に行き、神奈川で死んだ日には家族に解剖の費用請求が行くかもしれないなんて考えてしまった。承諾解剖は拒否できるのです。遺族になって『どうしますか?』と言われた場合は、神奈川では断固拒否一択しかないと思う。許可してしまうと10万円近くが請求される……家族が死んで悲しんでいるところに、遺体が切り刻まれて戻ってきてお金を請求される……どんなぼったくりバーなんだと思ってしまう。



    そうではなくても、東京と大阪、兵庫、沖縄あたりではうっかり死なない方がいい。事件性の可能性ありと判断されると問答無用で解剖されそうだなと読んでいて思った。問答無用の方は家族の承諾も要らない。疑惑だけで解剖される。





    いや。本に書いてある事は、『死因究明で冤罪や犯罪の見逃しを防ぐためにも解剖は必要』ということだったけど、私自身は死後の身体を切り刻まれるというのは嫌なのだ。
    死因究明や犯罪なんていうものはどうでもいい。心静かに『事故』もしくは『病気』として終わらせてほしい。残った家族が不要な重しを負う必要はないと私自身の身体に関してはそう思っている。



    私個人の考えとは別として、とにかく日本では『死んだ場所で、死因が特定されるかされないかが分かれてしまう』というのは本を読んでわかった。
    私が住む県ではどうなのかなと思ったら、地方なのに意外と平均値に近くて驚いた。平均値を押し上げてるのは先に書いた『東京・神奈川・兵庫・沖縄』辺りなのだが、その押し上げられている平均値に近い数値で解剖されている。



    そういえば、新聞を読んでいても『川で死んでいた』人たちが数日後にしっかりと『溺死』だったとか『病死』だったと書かれている。
    大半は高齢で転んだ拍子に川に顔をつけてしまい溺死……なのだが、時々『病死』という発表もあるのはしっかりと解剖して死因が究明されているからなのだろう。



    私の祖父は散歩で外に出て亡くなったのだが、当時は解剖はされなかった。ただ警官が『不審な事はなかったか』というような事を聞いただけで、状況と病歴から事件性なしと判断したのだと思う。死亡診断書には『心不全』と書かれていたような気がする。心臓が止まればすべて心不全ではないのか?と思った記憶がある。
    すでに10年以上前の事だから、何かが変わって今では『外での死亡』は解剖になったのだろうか?と考えてしまった。





    とにかく、日本では解剖の数が圧倒的に少なく法医学者も解剖だけに専念は出来ない。
    管轄も警察なので『事件性がない』と判断されると解剖もされない。という問題点が書き連ねてあった。
    コロナのような公衆衛生のための死亡原因を突き止める様なシステムがない。行政解剖があるが、それも予算の関係でそれほど多いわけではない。

    さらに、解剖費用は一体につき40万ほどかかるという具体的金額まで書かれていた。だから、解剖数も少ないらしい。



    書いてある事はわかるし、問題点も判りやすく整理されているが……私の価値観とは相いれない。さらに私はこの日本にそこまで期待が持ててもいないので、生者の人権すら踏みつけている国で死者の尊厳なんてものが存在するわけないよなという気持ちも頭の片隅に沸いてくる。



    書いてある事が素晴らしい事も、問題点も分かる。でも。
    私は死んだあと、自分の身体を切り刻まれたくはない。



    静かに燃やしてほしい。
    私が殺されたとしても、誰が殺したかなど突き止めないで欲しい。私自身で呪い殺すから、生き残った人は心穏やかに過ごしてほしい。と思う。

    感染症でも事故でも、『自分と同じ事にならないで欲しい』とも思えない。それは運しだいだろうし、私以外の解剖されてもいいと言う人から学んでほしい。私は私の意識と共に私自身を終えたいし、私の意識が消えた世界に身体を残したくはない。

    というわけで、私自身は臓器移植も拒否という価値観をもっている。私の死体を好きにしてではなくて、私の死体は私と共に消してほしい。醜く弛緩していく身体を晒すなんて醜悪過ぎるとすら思っている。

    ただ、これはあくまでも『私の身体』についてだけなので、解剖されたい人がいてもいいし、臓器移植希望の人がいてもいいし、それらの人の価値観を否定する気はない。
    本の中のシステム問題と、私の中の価値観が合致せず『言いたい事はわかるケド、私は解剖されたくないので今のままでいいんだよな』という気持ちになった。

  • なんでか気になって読んでしまうこういったジャンル。
    とりあえず解剖される様や孤独死
    色々な死に方があるけれど死んだあとの事は考えた事なかった。
    この先更に高齢化が進みもっと問題出てくるね。

  • ふむ

  • 仰天ニュースで知ったトリカブト事件を解決に導いた法医学者の大野耀吉さんや北海道の女性の法医学者など、いろいろな人の思いを知ることができてよかった

  • p.39
    「検事や弁護士の演出する“裁判”という劇場の中で、法医学者は彼らの代理戦争をする“駒”として弄ばれ、結果的に法医学者同士がお互いにいがみあう様は、哀れでもあり、不快でもある」

    p.61
    「日本は、要するに権威主義なんですよ。権威に弱い。権威がないと発言力は弱くなるし、権威があればいい加減だと思う言葉も通ってしまうことがあります」

  • イマイチ、読んでいても入ってこず途中で読むのを断念しました。

  • ざっくりと。

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著者プロフィール

山田 敏弘(やまだ としひろ)
岐阜大学教育学部国語教育講座教授。博士(文学・大阪大学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家、富山国際大学講師、岐阜大学助教授を経て、2013年より現職。専門は、日本語学、岐阜方言研究。主著に、『日本語のベネファクティブ―「てやる」「てくれる」「てもらう」の文法―』(2004、明治書院)、『国語教師が知っておきたい日本語文法』(2004、くろしお出版)、『国語教師が知っておきたい日本語音声・音声言語』(2007、くろしお出版)、『国語を教える文法の底力』(2009、くろしお出版)、『日本語のしくみ』(2009、白水社)、『その一言が余計です。―日本語の「正しさ」を問う―』(2013、筑摩書房)、『あの歌詞は、なぜ心に残るのか―Jポップの日本語力―』(2014、祥伝社)、『日本語文法練習帳』(2015、くろしお出版)など多数。

「2020年 『国語を教えるときに役立つ基礎知識88』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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