滅私

著者 :
  • 新潮社
3.14
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本棚登録 : 644
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103361121

作品紹介・あらすじ

物を捨てよ、心も捨てよ。ミニマリストの男が直面するSDGs時代の悲喜劇。必要最低限の物だけで暮らすライターの男。物だけでなく人間関係にも淡泊で、同志が集うサイトの運営と投資で生計を立て、裕福ではないが自由でスマートな生活を手に入れた。だがある日、その人生に影が差す。自分の昔の所業を知る人物が現れたのだ。過去は物ほど簡単には捨てられないのか。更新される煩悩の現在を鋭く描く。

感想・レビュー・書評

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  • またまた極端な人たち。
    デフォルメされているとはいえ、実際にはかなり現実に近い人達がいるのでは・・・

    エンディングは、ひたひたとなんとなく想像できたけど、そう来たか!

  • ミニマリスト小説ということで、楽しみにしていた一冊。相変わらず、界隈の描写が生々しくよかった。

  • ダークだけれど好きな世界観。
    自分とは縁遠いミニマリストとは不思議な暮らし

  • ミニマリストってすごいなあって思っていた中、
    羽田さんの「ミニマリストの流行は人生を手早く変えたい欲求の表れ」ってインタビュー記事をみて思わず読んでしまった本。

    読んだあと、難しい気持ちになった。

    主人公が属するコミュニティで、いろんなタイプ(?)のミニマリストがいて、
    行ったことないけど、なんかリアルに感じた。
    なんか本やネットでこういう人見たことあるかも!みたいな感覚。

    ミニマリストかゴミ屋敷どっちが正解!とかじゃなくて、
    どっちも、それを目的(自分の属性?)にするとしんどくなるんだろうなと感じた。

    どちらも大変な財力、才能、努力を必要とせずに、人生を変えることができるから目的にしやすいのかもなと気づけた。

  •  ラストの展開に軽くショックを受け、読後しばらく考えた。
     よく理解できてなかったかと、もう一度ざっと読み返してみて、以下引用文を言いたかったのかなと思った。
     ほとんどすべてのものは、替えがきく。そう感じてしまうと、愛着がわきづらい。人間関係だってそうだ。だからこそ、自分から愛着をもつよう能動的にならないと、自分の生ですらも、代替可能で意味のないものになってしまう。(P.136)

  • ミニマリストとして不必要なものを削ぎ落として暮らしている主人公。
    減らした先に何があるのか。
    とことん減らしまくった人を皮肉ったところも多々あり、
    ただ減らしたい、とにかくスッキリしたいと思っていた自分の思考と重なって、ハッとなった。
    終わり方は、、なんとなく想像もついたけどスッキリしないな。

    ムダがある方が、安らげるし、人生の楽しみも生まれる。
    減らしすぎ注意。

  • 終わり方が好みじゃなかったけど、作者の意図を理解し切れなかったのかもしれない。チクチクとミニマリストを皮肉る言葉や展開が全体を通して描かれているようで、ミニマリストに一種の憧れを抱き持ち物を減らそうとしている自分としてはあまり読んでいて気持ちの良い作品ではなかったけれど、モノに囲まれることの居心地の良さというのも理解できる(ヴィレヴァンやコレクターの部屋を見るのはワクワクする)し、自分を誤魔化してまでミニマリストを貫く必要もないのは同意故に終いにはこの自分が抱く不快感は果たして正しいのだろうかなどと考えていた。流されやすい自分らしい話だけど、でもちょうど先日とあるショップで「かわいい!」と思って手に取ったピンバッジを結局売り場に戻して立ち去ったあの場面を回顧すると、何のために自分が我慢しているのか、欲求を抑えることが果たして正しいのか、本当に分からなくなってしまった。何が自分にとって大切で、ミニマリストであることが手段として正しいのか、もう一度考えたい。

  • 物を持たないこと
    自分を持たないこと
    自分らしさってなんだろう、
    単純に物を捨てることも
    突き詰めると
    いろいろ考えさせられました。

    終わり方は、
    ちょっと好きじゃなかった。

  • 冴津武士はミニマリストとして、サイトを運営し、ブランドを立ち上げ、いかにモノを持たないか、というゲーム性にハマったこともあった。

    他のミニマリストとも、繋がりはあるが、家族と共に暮らす家が、何もなくて刑務所のようだと思ったり、ザック1つに全てを詰め込みホテル暮らしをするミニマリストに、やりすぎだろ、と少し斜めに見ている。

    ある日、伝説のミニマリストが、ゴミ屋敷に住んでいることを知る。ひとり、ひとりと偵察に行ったミニマリストがふと現れなくなる。

    先日、おむすび本屋の推し本会「片付けについて語る」で
    みなさんと話した

    片づけ、とは持っているモノの整理整頓で
    整理整頓できる量、管理できる量だけを
    持つことが大切かな、と思う。
    使っていないモノのために
    場所をふさぎたくはない
    とはいえ、これを手に入れた時の気持ちが
    今の私の気持ちを豊かにしてくれることもある

    そう、片付けようと思って始めたのに
    昔の写真や雑誌を見つけて読みふけってしまうアレだ
    あの時間のために、昔のモノがあるんじゃないかと思う
    時間を忘れて読みふけってしまい
    ああ!何も進んでない!って後悔するんだけど
    時間を忘れちゃうぐらい夢中になっちゃうことなんだ

    とはいえ、ホテルの部屋のように
    ムダが無く、すっきりと暮らせる部屋にもあこがれる
    ホテルの部屋を維持している生活
    それが、ミニマリストの生活なのかもしれない?

    アイロンを使いたくなると、買っては中古で売り
    また使いたくなったら、中古で買う
    それを「モノを循環させる」と呼ぶミニマリスト
    昔のアイロンを、修理して使い続ける人と
    どちらが環境に優しいんだろうか

    冴津は、ゴミ屋敷に足を踏み入れ
    案外、モノに囲まれることが
    心地いいことに気が付く
    何もない部屋では、考えが整理できるが
    モノに囲まれた部屋では、新しいアイデアが浮かぶことに気が付く

    それは、一度「持たない」生活をしたからこそ
    モノの「圧」を感じられたのかもしれない

    ちょこちょこといけ好かない冴津と
    冴津の胸くそ悪い過去
    その過去にじわじわと責められる様子からの
    最後に、ニヤリとしてしまった

  • 読み終わって考えると、立ち向かわない逃げの姿勢を正当化し、カッコつけて暮らしている描写が多い。その人たちに徐々に歪みが出て、消えていく未来が見えながらも終始様子は淡々としていた。主人公の語りしか聞こえないような、静かな本だったなあ。
    「貧乏人でも劇的な効果を得られるから、不景気の世で、捨ては流行しやすい」
    にはミニマリストではない私にも刺さるものがあった。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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