死にゆく者の祈り

著者 :
  • 新潮社
3.50
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本棚登録 : 979
感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103370123

作品紹介・あらすじ

無二の親友は確定死刑囚だった――。司法の裁きと救済の意味を問う、哀切の社会派ミステリ! 囚人に仏道を説く教誨師の顕真。拘置所で目に留まった一人の確定死刑囚。それは、かつて顕真を遭難事故から救った親友だった。友はなぜ人を殺めたのか。担当刑事とともに遺族に聞き込みをはじめるのだが――。事件の驚愕の真相とは。友は絞首台の露と消えてしまうのか……。人間の「業」を丹念に描く、渾身のミステリ長編!

感想・レビュー・書評

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  • 教誨師が主人公。
    (教誨師とは死刑囚に仏の道を説く僧です)
    ある日講話に訪れた刑務所で、大学の同期の関根に遭遇。関根は人殺しにより、死刑囚となっていた。
    関根に命を救われた事のある主人公は、関根が人を殺めたとは到底思えない。
    関根を救う為に、有罪率99.9%に挑む。
    といったあらすじです。

    最終章は手に汗握る展開で、残り僅か数ページでどっちに物語が転ぶのか私は予想できませんでした。
    中山七里さんの作品はどれも面白いですね。

  • 強引なお話でした笑
    教誨師の主人公、死刑囚は過去命を救ってくれた親友…立場をかなぐり捨てて冤罪を証明してみせる‼︎

    死刑囚の関根、協力してくれる刑事、事件の真相…
    どれも今一つだし魅力的な人物達でもなく、真相も死刑執行を寸前で止める⁈というハラハラさせる割には期待外れだった(u_u)


    • 1Q84O1さん
      みんみんさん、ドンマイです(≧∇≦)/
      みんみんさん、ドンマイです(≧∇≦)/
      2023/08/03
    • みんみんさん
      久しぶりに☆3つが続いてま〜す笑
      久しぶりに☆3つが続いてま〜す笑
      2023/08/03
    • おびのりさん
      あらやだ、予約中なのよ。
      あらやだ、予約中なのよ。
      2023/08/03
  • 教誨師の高輪顕真は、集合教誨の講師をしている時に、関根要一を見つけた。
    高輪は、5年前にカップルを殺害して死刑判決を受けていた。

    二人は、大学時代、同じ登山サークルに入っていた。高輪は、顕真にとって、命の恩人であった。
    高輪の人格を知っている顕真は、彼の犯罪を信じられず、事件を洗い直す。

    無謀な教誨師と無謀な刑事。
    そんなことあるの?と言った物語の進み方ではあったが、なかなか、読み応えがあった。

    ある意味、死刑制度に対する、是非を問われたような気がするが、私はやはり、死刑制度は、あるべきだと思う。

  •  執行室前で一時間を切った。死刑囚堀田は、刑務官に「嫌です。俺、まだ死にたくありませんっ」

     教誨室から戻った顕真は執行を待つ。刑務官に両腕を押さえられながら、執行室の露と消える。「嫌だあっ」顕真は無意識のうちに合掌する。
     自分(顕真)が教誨を担当した囚人の醜態を見せられるのはこれが初めてではない。

     本来宗教は生きる者のためにあるべきだが、死直前の人を教えられないことに対して絶望を覚える。浄土真宗本願寺派の僧侶が岐阜監獄での教誨を許されて、我が国の監獄教誨が始まった。

     拘置所に派遣された顕真は、頭に思い描いていたことと現実との乖離にひどく当惑した。囚人の死刑執行立ち会いもその一つだった。

     或る日顕真は、集合教誨を頼まれ講師として登壇し、講話を始めた。
     囚人の中に気になる人物を見つけ、田所刑務官に尋ね、関根要一であることがわかった。「ヤツは死刑囚ですよ。五年ほど前、一組のカップルを殺害して死刑判決を受けました」。顕真は自分の耳を疑った。

     その関根と顕真は「大学時代の同期」で山岳サークルの仲間だったのだ。三人で雪の剱岳山頂を目指したところ、天候の読み間違いで、猛吹雪に遭い進むべき道さえわからず立ち往生してしまい一人は風に飛ばされて足を骨折し歩けなくなった。
     生命が脅かされる局面になると、人は仮面をかなぐり捨て本性を現す。そんな局面においても関根は危機であるにも拘らず柔和に笑い洒脱さと、勇気を決して忘れなかった。
     あの男と組んでいなかったら間違いなく雪の中で骸となっていただろう。

     その関根は今、囚人として目の前にいる。講話が終わったあと導願寺に帰り、パソコンで調べたが隔靴搔痒だ。自供の信憑性と警察の捜査過程、公判の審理についての記事は、それほど多くは見当たらなかった。しかも、風采が上がらない国選弁護士で一審の判決で死刑判決が出たまま控訴していない。

     日本の検察が起訴すれば、99.9%有罪になる。それだけ警察の捜査能力が優れているというが、有罪の中に冤罪が含まれている可能性もある。
     しかし、一介の御坊が真実を知るために捜査をするわけにはいかない。寧ろ越権行為も甚だしい。当時の取調べ担当の調書を書いていた刑事が、協力してくれることになり物語が進んでいく。

     現世に生きる者の幸福のため、死刑囚が宗教的な救いを得ても、行政罰(死刑)は回避できない。それは執行までの短い間だけしかない。期間付きの幸福に、どれだけの価値があるのか。それなら長さに拘るよりも一日一日の充足に心を注いだ方が、はるかに建設的だ。
     死刑囚の希望者に、教誨により殺される運命の者の心を平安にする。大義は立派だが、生命の尊さ罪悪感を目覚めさせた上で殺すのは、別の意味で残酷ではないのか。

     どんなに悔いても罰だけが残る。現行法下では、他人の命を奪った者は命をもって償うしかないのだ。
     読書は楽しい。

  • スピード感溢れる一冊。

    ある日訪れた拘置所で無二の親友が死刑囚だと知った、教誨師 顕真。

    親友は本当に人を殺めたのか疑問を抱き、真相に迫る物語。

    教誨師、親友として何ができるのか、駆け回る顕真の姿は非現実的ながらも自然とひきこまれてしまう。
    なりふり構わずに大切な人を救おうとする人間らしさには素直に胸が熱くなった。

    死刑、罪を償うことの意味、司法システムの現実と、ふと立ち止まり考える瞬間を盛り込ませながらも、死刑執行まで刻一刻と迫る時間、顕真の決断、真実が明らかになる瞬間といろいろな意味でスピード感溢れている作品だった。

  • 仏門に入り教誨師となった顕真と、死刑囚となった親友・関根との物語。
    記憶の中とかけ離れた現状の親友の真相を知るため、奔走する顕真。
    それぞれの辛い過去。そして過去の十字架。真実。
    執行の日が迫る中での奔走はとにかくスリリングで。
    一気に読んでしまいました。
    彼らの過去、事件の真相、結末はそれは意外なもので。
    ラストに向け怒涛の展開。内容があまりに濃く読了後かなり疲れたけど。
    面白い作品でした。

  • 囚人に仏道を説く教誨師の顕真。拘置所で目に留まった囚人がいた、大学時代の友人・関根であった。しかも確定死刑囚だという。大学時代、山岳部に属し、命を救ってもらったこともある。そんな関根が罪を犯すとは思えず、教誨師としての仕事の枠を超え、関根の罪の真相に迫ろうとする。
    ただのミステリーだけでなく、死刑囚の心のうち、死刑ついて、死んで償う意義が述べられ、この本も社会派ミステリーでありました。最後の方は、破壊坊主そのものになっているし、急展開すぎる感がありますが、教誨師としての自分と友としての自分の心中、最後の救えるかどうかのところは読み応えがありました。教誨師の仕事、死刑囚のこと、仏教での教え、初めて知る面もあり深かったです。いやしかし
    …僧侶とか教誨師とかに思えぬ主人公であったかな。

  • 親友を一途に思い続ける信念が素晴らしかった。教誨師という仕事を初めて知った。

  • 探偵役(?)が僧侶という異色の小説。
    教誨(きょうかい)師として訪れた刑務所で、かつての命の恩人が死刑囚となっていた…。
    ありそうで無かった(私にとっては)なかった設定で、冤罪なのかそうでないのか、彼らの過去に何があったのか、引き込まれる設定でした。
    後半、話の展開がちょっとスムーズだったなーという感じでしたが、最後までおもしろかったです。

  • 死にゆく者の祈りとは?

    宗教教誨とは宗教を丁寧に教え諭す。
    死刑が確定したものへの監獄での教誨。
    これだけではないかもしれないが。
    そして最期の死刑の瞬間まで立合う。
    教誨という言葉も始めて知った。「内容は想像がつく」
    教誨師の祈り
    囚人の祈り
    救われた者の祈り
    隠れた者の祈り
    裁かれる者の祈り
    全く今までの中山七里作品と異なる、

    いつ、弁護士がでてくる?
    どう解決する?
    と二日くらいで読み終えた。

    浄土真宗の
    僧侶となって教誨師となって出会った人物がー
    そこから始まるネタバレになるのであまり載せられないが。

    まず真宗が受け入れられないところも「個人的見解」
    前半は真宗の教義「正信偈」「御文章」がで

    てきたり幸いに宗教に明るい自分は「学問として」
    仏法専門語とかいろんなことがすっと受け入れられたが
    わからない人にはわかりにくいかもしれない

    主人公僧侶顕真があまりにも俗ぽく
    あまり受け入れらなかった
    反面好きな人はあるかもしれない。

    本文より
    彼に対して門主「住職」から何度も言われることが
    失敗したらすぐに逃げようとする
    あまりに安易な身の処し方を私「門主」が許すと思いますか?
    真宗の道を甘く見るにも程がある。ー


    この言葉は心当たりある人あると思う。
    誰でも逃げようとするよね。

    この程度だから
    僧侶が起こしたというより単なる顕真という男のはなしだと思う。

    どんでん「らしきものはある」もないし
    知ってる刑事も裁判官も
    検事も出てこない。

    始めて中山七里作品の中でそこまでの星はつけなかった。
    しかし、よくいろんな展開を持ってくるのには感嘆、
    やはり作品を書き続けることの厳しさ「100に近づいてくる」
    マンネリを打破する
    新意欲、色々と大変な仕事である。

    死刑のやり方がリアルだった。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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