神の悪手

著者 :
  • 新潮社
3.25
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本棚登録 : 1130
感想 : 127
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103500834

作品紹介・あらすじ

破滅するとしても、この先の世界が見たい――将棋に魅せられた者たちの苛烈な運命。棋士の養成機関である奨励会。年齢制限による退会が迫る中でも昇段の目がない岩城啓一は、三段リーグ戦前夜、対戦相手からある“戦略”を持ちかけられるが……。追い詰められた男が将棋人生を賭けたアリバイ作りに挑む表題作ほか、運命に翻弄されながらも前に進もうとする人々の葛藤を、丹念に描き出す将棋ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 芦沢央ファンになっている。すでに12冊目。今回は将棋と関連するミステリー短編集。毎回、登場人物の心の揺れ動きが秀逸。今回は将棋に詳しくないとなかなか理解できないけど何とかついていった。【弱い者】【神の悪手(あくしゅ)】がお気に入り。【弱い者】は被災地で少年と将棋を指すプロ騎士。飛車角落ちであったが少年は強い。何故か詰む寸前で少年は間違えてしまう。それは何故か?それはとある理由での時間稼ぎだった。【神の悪手】はプロ直前の騎士がとある偶然で別の騎士を殺してしまう。そのアリバイ工作をする。終始ドキドキでした。④

  •  若干十四歳にしてプロ棋士になった、あの少年の話題は、テレビやネットで連日賑わっています。そもそも勝った負けたというけれど、将棋の駒は兵士で、八十一マスの戦場で争うボードゲームです。

    同じく駒(ピース)を使うチェスとはルールで大きな違いがあります。将棋では、とった駒を駒台に置き再利用ができる点です。
     言い換えれば、とった駒を殺さないで、味方に組み入れるのです。最終的な勝敗は、相手の玉又は王の逃げ道を封鎖し捕縛して敵将を屈服させて決まります。自分の駒台に玉又は王は置かないのです。
     敢えて言うなら国盗合戦で戦国時代の物語のようです。

     物語は五篇の短編集で、それぞれが独立した物語だが、前後して名前だけが繋がります。

    目次は以下の通り、「弱い者」「神の悪手」「ミイラ」「盤上の糸」「恩返し」です。
     一般に棋士とは、日本将棋連盟所属のプロ棋士を指し、三段までの棋力の者は奨励会といいます。

     二十六歳の誕生日までに四段に昇級しなければ退会を命ぜられ、少年時代から研鑽し将棋一筋だった人たちにとっては、厳しい奨励会会員の規則がミステリーを生むのです。
     読書は楽しい


  • 弱い者
    神の悪手
    ミイラ
    盤上の糸
    恩返し


    将棋に魅せられ、将棋によって繋がれた
    全部で五つの物語

    バラバラに存在していた点と点が繋がって
    線になった瞬間の快感

    私は将棋はできないのですが、
    この言葉は自分も使う好きな言葉です

  • 将棋にまつわる短編集。

    将棋だけに人生を捧げながら、落ちたら終わりの奨励会。
    厳しい勝負の世界が舞台で、ひりひりする。

    対局を通して、自分と向き合い、相手と交わる。
    内面の描写に、引き込まれるものがあった。

    被災地で将棋の復興支援イベントを行う「弱い者」。
    将棋の駆け引きや、心理変化などがおもしろく、一番印象に残った。

  • TBS「王様のブランチ」に著者出演 将棋ミステリ短編集・芦沢央「神の悪手」、話題沸騰で重版決定!|株式会社新潮社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000250.000047877.html

    Kanda Yumiko
    http://kandayumiko.com/

    第183回:芦沢央さんその4「投稿生活と読書」 - 作家の読書道 | WEB本の雑誌
    https://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi183_ashizawa/20170517_4.html

    芦沢央 『神の悪手』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/350083/

  • 将棋を題材とした5つの作品が入った短編集。
    『ミイラ』と『恩返し』の2つが好みだった。

    『ミイラ』は狂気に満ちた信仰宗教を掲げる村で育った園田という少年が作った詰将棋の謎に迫る物語。
    糸を解くように明かされていく村の真相。思わずゾッとしてしまうような日常を送ってきた園田少年が、なぜ自身が作り上げた『詰まないはずの詰将棋』をこれは詰んでいると言い張るのか。
    その理由が判明したとき、小説内に記載されていた棋譜を見返し、「なるほど…」と息を飲んだ。
    そんな園田少年にフェアリー詰将棋を通じて寄り添おうとする常坂さんもよかった。

    『恩返し』は将棋になくてはならない駒を作る駒師のお話。棋界における恩返しとはプロとなった棋士が師匠を倒すことを指すが、駒師である主人公の兼春にも当然師匠がおり、あるタイトル戦で師匠が作った駒ではなく、兼春が作った駒が対局に使われることになる。しかし、駒の検分を済ませた国芳棋将はなぜか師匠の駒に変えたいと言い――。
    伝統工芸における恩返しとのダブルミーミング。他4作品がプロ棋士や奨励会員を描いた作品だっただけに、駒師の話が来るとは思いもしなかった。
    タイトルを失っても戦い続ける意思を見せる棋士の高潔さと、ある種の狂気さ。そして、棋士も職人もその道には果てがないことを教えられた作品だった。
    藤井聡太竜王・名人は関防印(色紙の右上に押す四角形の印のこと)に『無極』という言葉を使っている。この話を読み終わったとき、それがふと頭をよぎった。

  • 個人的に苦手な短編だが、けっこ楽しめた。すべて、将棋がらみの短編5つ。
    「弱い者」「神の悪手」「ミイラ」
    「盤上の糸」「恩返し」
    一番最初の「弱い者」震災の避難所で性的虐待を受ける、将棋の才能に溢れた子供の話で、かなり社会的問題作でヘヴィーな内容だったので、ちょっと想像していたものと違って、へこたれそうになったが、「ミイラ」あたりから、テンポがよくなって、ササッと読了した。多分殺人犯になった奨励会三段の話、シェイカーズというか、映画”ヴィレッジ”(byシャラマン)の宗教バージョンのような島で特殊なルールの詰将棋を学んだ子供。事故のトラウマで認知障害をもつトップ棋士の話。駒師の話。こうして、一言で書いてしまうと、うまくないのだが、細かく書くのもネタバレでおもしろくない。面白い目線の文章がちらほらと刺さってくる、全体的にとても優しく良いんが悪くない、短編なのが残念。個人的にはミイラと駒師の話が一番印象にのこった。

  • 将棋をテーマとした短編集。個人的にはミステリとして秀逸な「ミイラ」が好み。

  • 将棋をテーマにした5つの短編集。「盤上の向日葵」を読んだ時も思ったけど、もっと将棋についての知識があったらよかったのになぁ。駒の動かし方はわかるけど、7六歩とか7七角成とか指してる場所がわからないのでそこはサラリと流して読んだ(^^;)
    でも対局のヒリヒリする感じや緊迫感は伝わってきた。
    「弱い者」と「神の悪手」がおもしろかった。

  • ミステリー要素がある2作目が一番良かった。将棋に自体にトリックがあるゾンビの話も個性的。人が駒を起点にして各エピソードが繋がる展開だとより楽しめたかも。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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