- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103507628
作品紹介・あらすじ
スマホをタップした瞬間、あなたもターゲットになる――。ネット社会の深層領域に迫る衝撃作。東京都内で連続殺人事件が発生。凶器は一致したものの被害者同士に接点がなく捜査は難航する。やがて事件は、インターネットを使った劇場型犯罪へと発展していく――。前代未聞の「殺人ショー」に隠された犯人の真の目的とは。地道な捜査を続ける刑事たちの執念と、ネット社会に踏みにじられた人々の痛みが胸に迫る社会派ミステリ。
感想・レビュー・書評
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最初からけっこうはまって読んだけど、最後の盛り上がりがあっさりな気が。
でも色々考えさせられる作品だった。
長峰さん頑張ってほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん。なんとも複雑な気持ちで読み終えることになった。犯人を許すことはもちろんできないが、犯人がこうなった背景を考えると、必ずしも犯人だけを責めることはできないと感じてしまった。
連続して殺人事件が起こる。犯行の手口と凶器は一緒だが、被害者に共通するものがなく、また防犯カメラが設置されていない場所を狙って犯行を繰り返す用意周到な確信犯だ。
捜査一課でその事件を担当することになった田伏と長峰。田伏は以前、少女誘拐事件を追っているさ中、善意の高校生に事件内容と田伏の顔写真をネットに流され、結果、少女が殺されることになってしまい、「ダメ刑事」のレッテルを貼られ、心を病んでしまった過去を持つ。一方、長峰はネットの専門家で中途で刑事になった変わり者。最初は人と接することが苦手で態度も悪い長峰とのぎくしゃくしていた関係も事件を追うごとにどんどん絆が強まっていく。
なんの手掛かりも見つけられないまま、「ひまわり」と名乗る犯人によって第3、第4の事件が起こってしまう。
ひまわりに近づくには、被害者と、そしてひまわりの共通点を見つけることが必要だ。田伏と長峰のコンビはひまわりに辿り着くことができるのか。
私は、東日本大地震と関東・東北大豪雨共に被災した経験がある。被災者は本当に辛い毎日を過ごすことになる。被災者の中には確かに家に戻れる状態になっても、しばらく仮設住宅で暮らす人もいる。しかし、本当に戻れない状態の人も。
私は福島県民ではないので、直接誹謗中傷されることはなかった。でも、実際、福島県の食べ物は、しばらくは風評被害に遭っていたと思う。私の周りにも実際そういうことを口にする人もいた。それで生活を失った人もいるだろう。また、自分が福島県民だからというだけでイジメに遭ったり自殺した人もいたのだろう。もし、自分がそんな目に遭ったなら。家族がそんな目に遭ったなら。誹謗中傷する人間を恨まずにはいられなかっただろう。ただ、実行に移すことはないとは思うが。
ひまわりの気持ちが凄くよくわかった。気づけば被害者よりも、加害者であるひまわりに肩入れしている自分がいる。第2のひまわりを生まない世の中にしていきたいと、切に願う。 -
社会派ミステリーが得意な作者さんの今回のテーマは、SNSやネットを使った劇場型犯罪。
いかに現代の人たちがSNS依存症なのかに警鐘を鳴らし、それによる連続殺人、その連続殺人もネットの世界に晒されていく…
そんな現代への反論的な作品化と思っていたら、途中で、話が福島の風評被害へと主軸が変わっていく。
あらすじでも、SNS犯罪を謳っているし、主人公となる刑事・田伏も誘拐事件の捜査の際に、ツイッターで顔写真を公開され、結局、警察に知らせたことを知った犯人が、誘拐した少女を殺してしまう。田伏は「間抜け刑事」のレッテルを貼られ、しばらく休職した後も、PTSDに悩まされていた。
そして、本来サイバー犯罪専門の長峰も、田伏に付いて、一緒に捜査を命じられるが、もともと外回りに興味のない、長峰にやる気はない。
そんな伏線がたくさん張られている割には、後半、まるで違う小説を読んでいるようで、何だか勿体ない気がした。
どちらか一つのテーマで、もっと深く書いてほしかった。
真犯人の動機もいまいち… -
「血の雫」
現代社会に蔓延る危険性に目を向けた殺人事件が発生する。
警視庁捜査一課継続捜査班・田川信一シリーズ:<a href="https://www.honzuki.jp/smp/book/208146/review/207560/">震える羊</a>、<a href="https://www.honzuki.jp/smp/book/266845/review/208018/">ガラパゴス(上)</a>・<a href="https://www.honzuki.jp/smp/book/266846/review/208422/">ガラパゴス(下)</a>に続く読了。今回は田川シリーズでは無いものの、魅力的な登場人物、題材、ストーリー展開と面白く興味深いものだった。
まず登場人物であるが、主人公の田伏恵介と長峰勝利が良い。田伏はある事件で心を傷めた強行犯捜査のベテラン。長峰は元ITエンジニアからサイバー犯罪対策課に転身した変わり種。また、田伏はSNSを含めたネット社会に強い抵抗がある。一方、長峰はそれの専門家である。彼らは職場環境とネット耐性において対極にある存在でありながらタッグを組む。ここに、年配と若手と言う年齢差も加わり、互いにぶつかり合いながら信頼関係を構築していく。
まさにバディものとしては王道スタイル。不貞腐れて見えた長峰が、頼り甲斐のある刑事に見えてくる田伏。自らの過去を話すこと、捜査への熱意を知ることで田伏を信頼していく長峰。元々、実地経験の高い田伏とネット捜査スキルの高い長峰は互いを補完し合える理想的な関係だったが、残虐な事件を追うにつれ、それが実現する。
題材はネット社会が一つ。犯人は巧妙にネットを駆使して警察を翻弄する劇場型連続殺人事件を起こす。これは現代社会に必ずある危険性に焦点を当てていると感じる。もう一つは偏見、悪意、嫉妬等、全ての人が持ち得るネガティブな感情だ。これらはネットとの相性が良く、現代では匿名を免罪符にした悪行と呼んでも良い理解し難い行為が横行している。また裏アカウントを通じて人の裏の顔も見えてくるし、長峰が<b>独りよがりの善意はたちが悪い</b>と断罪する様なものもある。
後者は、田伏の心を壊した一件に深く関わっているが、私としては独りよがりの善意ですら無い様に感じた。正直殴ってやりたいくらい。以上、現代社会では無視すべきでは無いことを題材にしている。
最後にストーリー展開であるが、題材を巧みに活かしながら田伏も長峰もそれぞれ見せ場があり、組んだ時の活躍もある。劇場型連続殺人事件もスリリングがあり、背景を踏まえれば犯人憎しになり切れないところありで引きが強い。個人的にはひまわりの出し方が秀逸だったと思った。
また、人々の一方的な偏見がネットや人づてを通して与える怖さを全ての人間は深く理解すべきだと作者に言われた気がした。
因みに、読みながら映像化するなら配役は誰が良いかを珍しく考えてしまった。すぐ浮かんだのは長峰勝利は中村倫也ですね。嵌り役になる気がする。田伏は小日向文世が良いな。 -
出だしからの展開や全体のプロットは面白く、ネットやSNSの闇の部分を描く姿勢は流石社会派作家と思わせるが、どうしても犯行理由がそっちに行ってしまうのは少しワンパターンの気がするし、主題がどっちつかずの印象。
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意外とあっさり解決。
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4.0 ネットの中での誹謗中傷。原発の被害。色んなことが絡まりながら事件の解決へ。面白かった。一気読み。
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ミステリー仕立てだったけど、テーマが分散してしまっているので、何をしたかったのかがわかりにくくなったような印象です。