生きるとか死ぬとか父親とか

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103519119

感想・レビュー・書評

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  • 早くに病気で亡くなられたお母様の事、ケアハウスに入所されていた叔母様の老いと死、お父様の戦中、戦後のつらい体験、お母様の家族に猛反対されながらの結婚、戦後、必死で働いたお仕事の成功、やがて失敗し負債のために家を手放した事、若い頃からのいくつものご病気、お母様がご存命でいらした頃からお付き合いしている女性の事、そして現在の暮らしや老いなど、かなり赤裸々に書かれている。きっと書きたくない事や書けない事、この何倍もきつい事やつらい気持ちがあるのだろうなと想像する。

    親子と言っても別々の人間なのだから、相性の良し悪しはあるもの。親子じゃなかったら何でもない事でも、親子だから理解したいと思ったり腹が立ったり厄介だったり。
    スーさんは何度もの流産の末にやっと授かった一人娘さんだそう。もう一度父と娘をやり直したいと願うのなら今が良い時かも。

    少しきつめの文章の箇所にも愛情とユーモアを感じる。また親子だから受け入れ難い気持ちや切なさもわかる。親の老いや死は避けられないし、いつか自分も行く道。想像の域を出ないが他人事ではない。

    現在はお父様の方がスーさんに甘えていらっしゃるご様子。それはそれで複雑でしょうけれど、どうか無理をされず親孝行なさってください。

  • 母娘というのも大いなる関係ではあるのだけど、父娘となるとまた違った大いなる関係だ。特に一人娘の場合は。
    銀座についてのエッセイでこの方非常にお嬢様だと思ったのだけど、この本を読むとその辺りの事情がわかる。根っからのど庶民の私とは違い東京生まれ東京育ち、しかも文京区。
    この本の内容だけで、戦後日本の一代記を読んだ気分になる。生まれこそ戦前だが戦中を乗り越え戦後に聡明な妻を得てビジネスで成功を収めて…その後すっからかんになるまで。お母様も魅力ある方だったろうけれど、ここに描かれるお父様も非常に魅力ある人物なのだろう。
    ただそれが家族、娘となるとまた別。その一端を垣間見せてもらった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    私が父について書こうと決めたのには、理由がある―。20年前に母を亡くし、気づけば父は80歳、娘は40代半ば。一時は絶縁寸前までいったけれど、いま父の人生を聞いておかなければ、一生後悔する。父と娘をやり直すのは、これが最後のチャンスかもしれない―。父への愛憎と家族の裏表を描く、普遍にして特別な物語。

    だれだこれ?という所から興味を抱き、すましたぽっちゃりさんの容貌を見て、バラエティ系かと思いきやラジオMCだという。ふむふむ、どんなもんかのうと読んでみれば、家族というものにどっしりと向き合った名著でありました。
    年老いた父親は傍若無人だった若かりし日の名残りを残しつつも、次第に物柔らかになり、それでも過去の遺恨は今でも残っている。勝手にしろと思いながらも甘やかしてしまう。
    相反する感情を抱き、緩衝剤になっていた母の不在を埋めようとする歩み寄りの物語であります。かなりのもて男だったようで、いまだに女性の影がちらほら。そりゃ娘としてはざわざわ落ち着かないのも仕方が無いか。
    抑制が効きながらも、感情の波が伝わってくるのがとてもいい。どっしりした雰囲気の中に分かりにくいユーモアがちりばめられているのも素敵。親と自分との関係を鑑みて色々考えさせられました。

  • ‪自分の意志で繋がったわけでもなく、愛憎入り混じるのに縁は切れない魔法のような呪いのような人間関係である家族。著者のユーモラスな文体に思わず笑ってしまうが、同時に他所の家の光景なのだろうか?とも思えてくる。切れない縁だったはずの実家や両親がいなくなる日って誰にでも訪れるんだよな。‬

  • 大好きなスーさんのエッセイ、今回はお父上について。
    ラジオで時々聞いていたお父上のキャラを少しは知っていたけど、本作では…。いつものスーさんの軽快な文章なんだけど、今までの作品とはやはり全然違う趣だった。

    三人家族の頼みの綱であった母上は、スーさんが若いころに病死。当時の話が詳細に書かれていて…読んでて息がし辛くなる章だった。一人娘で両親とも大変な時期で、自分一人ではどうにもならずに「あの人」に頼らざるをえない状況。という描写がキツイ。
    父上の心が壊れた場面は「女性は愛する人の看護ができるが、男性は難しいらしい」という話を思い出した。

    実家の整理の話も厳しかった。そして見つけてしまった母の秘密。

    私も父との相性がすこぶる悪い。ちょっとだけ「親子なのにこれでいいのか」と悩んだこともあったが、今は「相容れない親子関係だってある」と開き直り。幸い弟がいて、それぞれ結婚して配偶者もいるから…今後両親に何かあったときに「一人で立ち向かわなければならない」目には遭わずに済みそうだけど。
    そんな現状に甘えて、私はスーさんのように父と向き合うことが今後もできない気がする。それとも私が中年以降まで歳を重ねたら、知りたいと思えるようになるんだろうか。


    でも読んでよかった。

  • いつもpodcast聴いてます、スーさん。

    壮絶な人生。podcastの話から、裕福な家庭だったことは想像していましたが、それだけじゃない。とてもそれだけでは片付けられない人だし、人生だ
    お父さん、どっしりしていて、でも飄々としていていいな

  • 父と母に会いたくなりました。
    たぶん会って数時間たったらちょっとしたケンカするんだろうけど笑
    それがなんだかんだ幸せな時間なんだと思う。

    僕も家族が大好きです!

    実はポッドキャストOVER THE SUNから入った人です!すーさんっておしゃべり上手なお姉様なだけではなく、本書いてるんですね!
    文章上手〜!笑

  • 初読み作家さん。
    すごく読みやすい文体。
    スルスルと心に沁みる。
    自分の父とのことを回想しながら読みました。

  • 人様の父ながら、時々イライラしながら、自分だったらこんな父親を許せるのか…?と自問自答しながら読んだ。
    私の両親は存命だが、もし母が先に死んだら、この2人よりももっと劣悪な関係になってしまうのではないかと軽い絶望を覚えた。

    スーさんの作品は「きっと自分もこれから経験するんだろう」とか「将来のために今知れてよかった」とか…そういう話題が多くて好きだ。
    一歩先にいる、近くて遠い頼れる先輩。
    今回も父娘2人でどうにかこうにか明るく生活していくさまを知れて、本当によかった。

    スーさんは、ラジオでもいっぱい喋っているので、エッセイを読むと「ぁラジオでそんなこと言ってたな…」みたいな瞬間がある。
    ラジオはもちろん無料コンテンツな訳だが、それでもエッセイが売れるスーさんの「言葉の求心力」に脱帽だった。

  • ざらりとした肌触りとからりとした読後感と。
    ゴツゴツした文体に混ぜられたユーモアと虚無感と後悔と、それでもねじれが一旦ゆるんで「あぁ、自分は生きているんだなぁ」と思う時がある。
    そんな内容のエッセイだった。
    ふわっとした流れるような言葉ではなく、歩いた床に汗が染み込んだような生きた言葉。そういう言葉を落とせる作家さんは珍しい。
    それでいて全体の構成が見事。お父さんの戦争のはなし、実家がなくなる場面を最後に持っていくことで「始まりの場所に戻りそこを畳む」展開になっている。ゾクゾクした。
    生きること、そして血の繋がりはハッシュタグで端的に表現出来ない。床に染みた足跡には、耳障りの良い正論も正義も通用しない。
    商品である以上、これらの言葉もパッケージングされてはいるが、一流のシェフはアリを三つ星のお皿にして供するのだ。
    われわれは目の前を恐怖から無視し、頭のなかの想像で血を流してロマンにひたる。
    足跡は自分の後にしか残らない。

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著者プロフィール

1973年、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。『ジェーン・スー生活は踊る』(毎週月~木曜午前11時TBSラジオ)に出演中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『ひとまず上出来』(文藝春秋)、『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)など。

「2022年 『OVER THE SUN 公式互助会本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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