百の夜は跳ねて

著者 :
  • 新潮社
3.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103526919

作品紹介・あらすじ

第161回芥川賞候補作!

この小説は、決定的に新しい。「令和」時代の文学の扉を開く、渾身の長編小説。「格差ってのは上と下にだけあるんじゃない。同じ高さにもあるんだ」。僕は今日も、高層ビルの窓をかっぱいでいる。頭の中に響く声を聞きながら。そんな時、ふとガラスの向こうの老婆と目が合い……。現代の境界を越えた出逢いは何をもたらすのか。無機質な都市に光を灯す「生」の姿を切々と描ききった、比類なき現代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 作者がどんなものを書いているのか、単なる好奇心で読んだ。理窟だらけだったり、
    文体が合わなかったら
    無理せずやめようと思ったが
    完読した。

    本を読むとき、白紙で読むーそれでも100%白紙は難しいけど。
    前評判とか、レビューとか知らずにー

    タワービルの清掃をしている主人公とひょんなことからのその住人との出会い
    設定は面白い、

    面白かった、文体にも抵抗無く
    裏の参考文献を読むとさすが勉強されてる。
    確かに現代を映し出している

    格差、劣等感
    幅広く言えば生きるということ

    題名の意味も理解できたし、
    「独断と偏見だけど」
    終わりに希望はあった。
    何度か、芥川賞「?」直木賞「?」候補だよね。
    取れたらいいね。精進を祈ります。
    着眼点は面白い。

    これを機会に他の作品「古市憲寿氏の」もよんでみたい。

  • ビルやマンションの窓拭をふく(かっぱぐ)清掃員。勤務中、窓の中にいる老婆と目が合うことで、その後、老婆を訪ねる。そこで、老婆より部屋の写真を撮って欲しいと頼まれる。
    不思議なおばあさん。おばあさんの言動は興味深かった、しかし、あまり心の響くものはなかったな。格差社会とか人との繋がりとか今を切り取ったものがあるんでしょうが。おかしなものもなく深いものもなく。私には合わなかっただけかな。

  • 主人公が就活を失敗した青年という設定に強く惹かれ、人に教えてもらってすぐに購入し、その日のうちに読み終えました。
    まず読み終えて思ったことは、本筋と逸れた感想にはなりますが、「共感」というものはとても大きなエネルギーを生み出すんだなぁということです。というのも、私は普段あまり本を読まないのですが、そんな私が一気読みしてしまうくらいの(それも純文学を)エネルギーを共感は生み出してしまいました。主人公の生活状況や、物語の時代背景、就活時の心境などが、丁寧に描写されていることによって、それを可能にしたんだと思います。現代の若者について研究をしてらっしゃる方の小説は一味違うなと思いました。
    最後に、内容の方の感想ですが、「過ぎていったはずの一瞬を記録し、後で振り返ることは大切なのかもしれない」と最後の方に主人公は気付きますが、もしそうだとしたら、あまり記録をしたりする人生を歩んできてこなかったので損をしてるのかもなと思いました。ので、ブクログをインストールして読書記録を残すことに決めました。読書体験も一瞬のものに近いと思います。読み終えた今の感情をここに残し、あとで振り返る時に、その重要性に気づければと思います。

  • 表紙の画も古市さんが描いたんだと知って、へ~となる。
    前作より好きかも。

    高層ビルの窓の清掃員と、あるマンションの住民の老婆との交流。
    と書けば何の事はないが、
    老婆から、ある事をお願いされての交流。
    突然その交流は終わってしまうけど、主人公には何か希望が残ったように感じる。

  • もう少し盛り上がりがほしかったけど、淡々とした感じが古市さんっぽいなあと。
    前作同様、固有名詞の使い方もグッとくるところが多くてさすがです。デサントの水沢ダウンとか。
    主人公と同年代として共感できる部分も多かった。

  • 全体的に内容が薄いように感じた。
    展開があまりなく、画竜点睛も粗雑である。
    しかし、自分の心の中で聞こえる声とを折り重ねながら書いていたのは新鮮であった。

  • 夜空をかっぱいでいく。無数の光が降り注いでいた。その光は、誰が生きている証でもあるし、誰かの終わりを弔っているようでもあった。どちらにしても、ひどく眩しい夜だと思った。

  • タワーマンションやビルの窓を掃除する翔太。窓の内側にいる人々は、外側を掃除する彼に何の関心も持たない。

    仕事中に偶然出会った老婆から「清掃する部屋の写真を撮ってきてほしい」と頼まれた翔太は、胸元にカメラを隠して沢山の部屋を盗撮する。
    老婆からの報酬は大金だった。大学卒業前に就職先が見つからず、清掃業に甘んじていた翔太にとっては給料数か月分の金額だった。

    清掃中の事故で泣くなってしまった先輩の”声”を聴き続ける翔太。
    先に逝ってしまった家族や友人たちの”声”と会話する老婆。
    二人の不思議な関係は長くは続かなかった。
    同僚に盗撮がバレて、その同僚も盗撮していたことを知り、同類になりたくないと思った翔太は盗撮をやめた。老婆はマンションから引っ越していった。翔太は仕事を辞めた。

    ---------------------------------------

    大学の同級生たちは大企業に就職していて、清掃の仕事をしている自分とは待遇も違うし、話も合わないと考える翔太。
    豪華なタワーマンションで暮らし、満たされているように見えるが、閉じ込められているようにも、病んでいるようにも見える老婆。
    年齢も境遇も持っているお金もまったく異なる二人の、それぞれの孤独。

    お金を持ってるとか、いい仕事やいい暮らしをしているとか、そういうことだけが幸せになる条件ではないんだな、と思う。
    孤独ではないこと、話し相手がいること、楽しみがあること、それが幸せに生きることなのかもしれない。

    翔太から受け取った写真を、空き箱で作ったビル群に貼って楽しんでいた老婆。彼女は孤独のなかに失った家族や友人たちの明かりを見つけた。
    翔太の明かりは実家のお母さんだったのかな。

  • 要領が良い、そんなヤツの孤独、現実感のない老婆の孤独、そして一歩踏み出した感じ?

  • 私たちは多くの生に囲まれて生きているが、その生を深く意識することはない。周りの皆は「当たり前のように」生きている。それを「生きているもの」として真面目に意識するとどこか不安な(不快な)気持ちになる。ビルを模した箱にビルで生きる人の写真を貼り付けて眺めることもまさに生を真面目に見るような行為で、老婆はある意味一種の自傷行為をしているように感じられた。鏡が怖いのも、鏡をまじまじと見ると似たような感情になるんだろうなーと一人で勝手に考えてしまった。

    このようなファンタジーっぽい展開の物語は苦手だったが、ビルの清掃という死と隣り合わせの環境、北にある島の話、箱に貼られた写真がどれも「生きること」とは何かを伝えようとしている感じがして一気に読み進めてしまった。

    「平成くん〜」もそうだったが、現代文化が随所に含まれている。10年後、20年後また読み返すと懐かしい気分に浸れるだろう。「平成くん〜」と本書ですっかり古市さんのファンになってしまった。

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著者プロフィール

1985年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。2011年に若者の生態を的確に描いた『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。18年に小説『平成くん、さようなら』で芥川賞候補となる。19年『百の夜は跳ねて』で再び芥川賞候補に。著書に『奈落』『アスク・ミー・ホワイ』『ヒノマル』など。

「2023年 『僕たちの月曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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