オルタネート

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103537311

感想・レビュー・書評

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  • 予約した翌日に直木賞候補になり
    予約者が激増したので、最初は頑張って読みましたけど
    後半すごく面白くなりました。

    すっかり忘れていた高校時代文化祭のことを思い出しました。
    1年の時も2年の時も私、中心になってやっていたんだわ。
    1年の時はくじ引きで委員になってしまっていたし
    2年の時は仲の良かった子たちがそういうの好きだったから。

    はたと気づいた。
    高校時代、全然勉強した記憶がないのだけど
    もしかしたら、ちゃんと勉強していたのかしらね?
    忘れているだけで。
    成果はなかったけど。

    閑話休題。
    この本の高校生が私と違うのは、
    高校入学前からスマホを使いこなしている世代ということ。

    著者加藤シゲアキさんはデジタルネイティブではあるけど
    この高校生たちよりお兄さんで、ちょっと違うでしょう。

    興味深いところ。
    〈尚志は歩きながら、アスベストのことを考えた。
    かつては便利だと重宝されていた建材が
    一転して悪者になる道理はなんなんだろう。
    いいか悪いか判断しきれていないのに
    どうして使ったんだ。
    取り付けるより取り除く方が
    よっぽど大変に違いない〉

    さて最後まで読んで、
    「シゲアキお兄さんは
    『やっぱり、まずリアルだよ』
    と高校生たちに伝えたいのだ」
    と思いましたが
    どうでしょう?

  • タイトルは架空のマッチングアプリ。
    それぞれに大事なものがある高校生たちを熱っぽく描いています。

    円明学園高校3年の新見蓉(にいみ いるる)は調理部で、高校生の料理対決番組に何を出すか研究するのに夢中。
    番組と言ってもネット上、というのが今ですね。
    オルタネートには興味がない。
    ライバル校の男子部長と惹かれ合うようになるが…?

    一方、クールな伴凪津(ばん なづ)はオルタネート信奉者。
    オルタネートは高校生限定のアプリで、合う相手を選んで紹介してくれるため、無駄がなく付き合えると考えています。
    そうはいっても、そこまでピッタリの相手はなかなかいないのだが、ある日…?

    楤丘尚志(たらおか なおし)は高校を中退し、それと同時にオルタネートには登録できなくなりました。
    円明高校にかってのバンド仲間がいて、音楽をやめてしまったのに納得がいかず、会いに来たのです。
    そこでたまたま、パイプオルガンを弾いていた少女の音に聞き惚れて…?

    蓉の料理コンテストの話が多く、わかりやすくもあるので、オルタネートとは関係がないのが意外な印象。
    伴凪津のオルタネートの利用法やその顛末はやや薄い感じで、これは結局、マッチングアプリの限界を示してもいるのかしら。
    ただ、想定外の結末はひりひりとして、それまでと違う真摯な向き合い方に。
    高校生の頃にこんなネット利用が当たり前ではなかった世代には驚きです。

    それぞれにかなり書き込まれていて最後は盛り上がり、その熱っぽさに感動しました。
    直木賞候補になったのは大いに納得。でも選ばれなかった理由もわからなくないことはない?微妙~
    力作だと思います。

  • 3つの中編を同時展開されているような一冊。

    尚志の小学校の頃の最高のバンド仲間にいつまでも執着する気持ち少しわかるなあ。
    どれだけ経ってもやっぱりあの時は良かったってその瞬間には気づかなくても思ってしまう。

    そういえば、先日の卒業式で担任の先生が高校の友達と会いたくなったりするとは思うけど、それはあまり好ましくない。
    後ろを向いてないで、ひたすら前を向き続けて行きなさい。と言われたのを思い出した。
    その瞬間は残酷な言葉だなと思ったけれど、最後に尚志も豊に執着はしつつも、通信制の高校に入ったり前に進んで出る。
    一途っていい言葉に捉えられてることが多いけど、一途と執着って結構似てるのかな。
    同じ所に留まり続けるほど楽なことはないしね。(脱線しました。)

    個人的に好きなシーンはワンポーションのカウントダウン。
    3つの世界の話が同時に繰り広げられていて、もちろんワンポーションのタイムリミットがあと少しだということの緊張感が一番であるけれど、そこにかつてのバンド仲間の絆や、桂田と凪津が本気で向き合おうとしているシーンにグッときた。緊張の中に温かみのあるこのシーンが1番印象的だった。

  • 祝!直木賞候補!
    いろいろあった2020年だったけど、「タイプライター」で感じていた又吉との差が埋まる気がする。

    加藤シゲアキ、待望の長編。
    毎年1冊ぐらいのペースで新作を書いているが、前回はエッセイだったので、新作が出て「待ってました!」と思ってたけど、メインのテーマが高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」と言うことで、読み始めるまでは抵抗があった。
    でも、「タイプライター」を観て、一念発起。
    前作の長編「チュロベースで待ってる」でミステリー要素もあり、大人な作品を書いていただけに、青春小説に戻ってしまったことが、少し残念。
    内容も、もっと「オルタネート」に振り回される高校生の姿が描かれるかと思ったけど、実際には「オルタネート」はそれほど登場せず、「ワンポーション」と言う料理大会に熱情をかける蓉、「オルタネート」に自分の恋愛を任せる凪津、大阪から転校した友人を探しに来た尚志と大体3人のパートで構成される。
    最後に劇的な何かがある訳でもなく、純文学としては悪い作品ではないが、物足りなさは感じる。

  • 「オルタネート」という高校生限定のマッチングアプリを用いて他人と繋がる学生たち。

    先輩や同級生の情報をアプリから入手したり、自分のアピールポイントをプロフィールに書いてさりげなく主張したり。
    現実に話しかける勇気が出なくても、アプリを通してなら気軽にやり取りできる。
    さらには、アプリ側から相性の良い人を提案してくれる機能も兼ね備えており…

    本作の主な登場人物である蓉(いるる)、凪津(なづ)、尚志(なおし)の3人は、それぞれが人間関係に関する悩みを抱きつつ、SNSとの付き合い方を模索していきます。
    挫折や失敗を経験しながらも彼らが一歩ずつ前に進んで行く様子は、なんだか眩しく感じました。


    時代が流れるとともに、コミュニケーションの取り方はどんどん多様化してきています。ただ、AIやSNSといったものを媒介する場合であっても、やっぱり人の気持ちや感情、心を何よりも大事にしなければならないんじゃないかなぁと思います。
    人は心が原動力だから。自分の信じるままに、進んでいくしかないんですよね。

  •  オルタネート。
     [動]交互に起こる。互い違いになる。
       (他の人と)交代する。(仕事などを)交互にやる。
       (電流が)交流する。
     [名]代わりのもの,交代要員,代理人。

     高校生専用SNSアプリ「オルタネート」。
     他のSNSとの違いは,「代理人」としての要素。ユーザーが指定した条件から,相性の良い人を探し勧めてくること。
     SNSだけでなくて,マッチングアプリともいえる側面があるが,高校生たちの「いい出会いがあった」という口コミから爆発的な人気となっている。

     多くの友達が「オルタネート」を使っているなか,それをやっていない調理部の新見容(にいみ いるる)。
     「オルタネート」信者ともいえるような,非常に詳しくて使いこなしている伴凪津(ばん なつ)。
     大阪の高校を中退し,それと同時に「オルタネート」にログインできなくなった楤丘尚志(たらおか なおし)。

     このオルタネートというアプリを通して,揺れ動く高校生たちを描いた作品。

       ☆

     個人的に,最初,アイドルが書いた作品だろって思っていたわけです。
     ごめんなさい。侮れない,侮れないよ。

     若い子の青春群像劇は,個人的に大好物なのですが,それだけでなくて。

     架空のアプリ「オルタネート」を通してはいるけれど,アプリでははかり取れない人の心とか交流とか。
     それぞれの人物の心情,高校生にあるような,背伸びをしていたり,迷っていたり,苦しんでいたり。
     けれども,それとは反対に,この年頃だからこそのキラキラしているような気持ちも,丁寧に描かれているように思いました。

     「代理人」であり,電流という意味ではなく高校生どうしの心の「交流」があって,あとは三人の主人公が「交互に」物語を紡いでいく。

     加藤シゲアキさん,マジガチすげえ。

  • 高校生。自分が見えてきて、まだ何者になりたいのか分からなくて悶々とした気持ちや、何かに全力で打ち込むエネルギーとか、色んな気持ちを持っていて、目の前のことに一生懸命で。特有のパワーが溢れている気がする。
    色々なことに正面から向き合うのは怖くて勇気がいるし、必死になると気持ちは剥き出しで痛々しくもある。でもそれができる人はすごく強い。
    誰もが迷いもがきながら自分を育てている。
    その力強さを瑞々しく捉えていると感じた。
    後味はとても爽やかな青春小説。

  • 高校生3人の視点で描かれた青春群像劇。
    読後の爽やかな余韻がよかったです。

    表題の「オルタネート」は高校生限定のSNSのこと。物語の主軸という訳ではなく、実際に使われていそうな距離感で物語のいいスパイスになっていると感じました。

    悩んだり、恋をしたり、友達と過ごす時間といった、普通の毎日が淡々と描かれているので、暑苦しくなく読みやすかったし、後半の盛り上がりがスムーズに入ってきました。

    特に好きだったのは”蓉”のストーリー。頼りない面がありつつも、芯がしっかりしていて魅力的なキャラクターでした。調理部のコンテストも、先が読めず面白かったです。

  • まず、わたしはNEWSのファンでもなく、ジャニーズのファンでも全くない、ただ単に小説好きの、小説家としての加藤シゲアキくんのファンです。ピンクとグレードから好きでアイドル小説家として色眼鏡かけられるのが本当にもったいない、面白い作品ばかり生むのに。
    今回直木賞ノミネート!おめでとうございます!!
    馴染めない登場人物の名前ばかりで、キラキラネームすぎるだろ!思うのですが、どうなんですかね。あと大阪弁も…胡散臭く響いてしまったんだけど。それを差し引いても個人的に好きでした。
    こういう人の心のどろっとした感情描いた作品、好き!

    けど、どうだろ、直木賞は無理だろうな。朝井リョウくんの何者には遠く及ばないと感じてしまいましたし、なんか似てるし、似てると感じた時点でダメだろな。
    でも、デビュー当時は水◯ヒロのつまらない小説が比較対象だったのに、よく残ってくれたし、その後も書き続けてくれたなーと嬉しくなっちゃう!
    ジャニーズの忖度とか読んでもないのにアンチが減って、ちゃんと読んでくれる人たくさん増えるといいな。

  • これぞ「青春」!!
    ティーン向けの印象です。序盤は登場人物と視点の入れ代わりについていくので大変だったけれど、後半にかけて慣れていくからかどんどん面白くなっていった。最終章は一気見間違いなし。

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著者プロフィール

1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWS のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』 とヒット作を生み出し続ける。2020年刊行の『オルタネート』で、21年に第164回直木三十五賞候補、第42回吉川英治文学新人賞受賞、第18回本屋大賞第8位、第8回高校生直木賞受賞。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。

「2022年 『1と0と加藤シゲアキ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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