世はすべて美しい織物

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103548416

作品紹介・あらすじ

染めて織る、私の物語を。織り人たちの「業」と「歓び」が紡ぎ出す、新たな感動作。〈桐生の養蚕農家の娘として生まれた芳乃〉と〈東京でトリマーとして働く詩織〉。伝説の織物「山笑う」をめぐり〈昭和〉と〈現代〉、決して交わるはずのなかった、ふたつの運命が、紡ぎ、結ばれていく。母の束縛、家のしがらみ、そして、最愛の人との離別……。抑圧と喪失の「その先」を描く、感涙必至のてしごと大河長編。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和12年。
    養蚕農家の娘である芳乃は、季節の草木から染料をつくり、生糸に染め上げて織る作業までを自らするのが至福であると思っていた。
    だが、桐生の新田商店の次男に見初められ嫁いで以降も織物には携わっていたが、戦争もあり人生は揺れ動いていた。

    現代。
    母子家庭で育った詩織は、母親の支配や干渉無しでは生きられないのか…というもやもやとした感情の中で、仕事の後こっそりと機織り工房へ通っていた。
    そこで桐生の手しごと市に参加してみないかと誘われ…。

    桐生でわかった詩織の出生の秘密。
    一子相伝の織物をめぐり昭和と現代、ふたつの運命が、紡ぎ、結ばれる。

    こういう繋がりがあったのか、とそれは当然の如くそうなるべくしてなったと感じた。
    何もないところから人の手で織ることによって、素晴らしい作品を生み出す。
    その手仕事にも糸に込められた想いがあることを知った。
    そして、生きづらさを抱える人にとっては勇気を与えるものだった。

    ありのままの自分を織ってほしい。
    芳乃の気持ちを感じたのかもしれないが、詩織の人生の詩を織りあげてほしいと。
    芳子に連れられて行った山で、絹子もそう思ったのではないかと改めてプロローグを振り返ってみた。

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    成田名璃子 『世はすべて美しい織物』 | 新潮社
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  • 染めて、織る。という手しごとを描いた昭和と現代を紡ぐ大河物語の一冊。

    時折涙が滲むほどの良作。

    桐生市の伝統工芸と共に家族という織物が織られていくストーリーは柔らかながらも、時に絡まった母娘の糸をほぐす難しさ厳しさを感じた。

    時代のうねりにもまれようとも、母の縛りにもまれようとも織り続けたいという二人の女性の強い気持ちがせつないほど交差し胸を打つ。

    何か一つのことに夢中になれるって素晴らしい。

    束縛の手を放し背を押すという手しごともいかに大切なことか。
    "誰もが織り人"この言葉が素敵。

    新たな息吹感じるラストも美しい。

  • とても素敵な作品でした。

    前半は母の毒が、苦しかったけど
    読み進めるうちに、
    その母にも抱える思いがあったことを知る。

    ADHDをこんな切り口で扱う物語もあるんだな。

    織り人たちの「業」と「喜び」
    戦時下の日々、ADHD、
    色々なテーマが詰め込まれているので、
    読み手によって、感じ方もそれぞれかもしれない。

    私にとっては大満足の一冊です。

  • 織物に取り憑かれた人々のお話。

    戦前、芳乃という薄髪の女性が、達夫という立派な商家の次男に見初められる所から、話は始まる。
    自分に満足な縁談など来るわけがない、と疑念を抱く芳乃に、好きなように染めて織れば良いと伝える達夫。

    章が変わると、現代、詩織の視点に変わる。
    手芸部に入りたいと言っても、決して許さない、厳しい母親との確執が描かれる。
    さて、二つの視点はどこで交わるのか。

    天才とは、文字通り、天から与えられた才能なのかもしれない。
    けれど、その才に耐えられる者と耐えられない者がいる。

    そして、その才を取り囲む人達も。

    家族であることって、簡単ではないんだよなー。
    他人だけど、断ち難い繋がりがあることが、苦しめ合うことにもなる。
    そんな負の部分を描きながらも、代を重ねることに、ちゃんと意味を繋げている、素敵な作品だと思う。

  • 読んでよかった! と、心から思った。

    美しい文章、うっとりするような表現。
    和の色が趣たっぷりに描かれていて、
    山笑う、山粧う…四季折々の情景も
    目に浮かぶようで。

    時代を飛び越えながら、展開していく話に
    謎解きするように、グイグイと引き込まれる。
    理不尽に想われた行動のわけが明かされる。

    登場人物一人一人に、出会い、
    わかりあっていくような
    丁寧な描写。

    何度も泣きながら、一気に読了。
    大好きな作品になった。

  • 桐生という地名を知らなかったのですが、こんなにも織物が有名な街だったのですね。
    ここまで我を忘れて熱中できるものがあるのは羨ましいものの、最早呪いと言っても過言ではないような…
    もし私が絹子と同じ立場だったら、確かに娘から手芸を遠ざけようと必死になるだろうなぁと思ってしまいました笑
    母の苦労、子知らずという感じですかね…

  • 戦争がどんなに酷いものか書かれており、途中では泣きたくなるようなシーンもあった。
    この本のキャッチコピーは「誰もが、織り人なのだ。」というのもあり、芳乃の作品と同レベルの作品を織ることがこの本の結末ではないと思いつつ、詩織がどんな成長をしたのかもう少し書かれて終わってくれればいいのに…。と感じた。
    織物を織っているときの心情や風景が細かく書かれており、情景がかなり想像しやすかった。
    この本を読んだことにより、織物を織ってみたくなった。

  • 桐生の伝統機織物と現代を結ぶ物語。トリマーとして働く詩織は縫うのが好きだったのだが、母親が許さなかった。それは物語の途中で明らかになる。現代と過去を行ったり来たりしながら運命的なモノを感じる。中々の大作である。

  • 自然界にある色彩がいかに素敵で
    しかもそれを糸にうつし取り、染め上げるなんて
    うっとりと憧れる世界。

    またその様を表現する描写の素晴らしさはもちろん
    芳乃と詩織それぞれの人生も興味深く
    なかなか読み応えのある作品だった。

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著者プロフィール

1975年青森県生まれ。東京外国語大学卒業。『月だけが、私のしていることを見おろしていた。』で電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞し作家デビュー。シリーズに『東京すみっこごはん』『今日は心のおそうじ日和』がある。著書に『ベンチウォーマーズ』『ハレのヒ食堂の朝ごはん』『坊さんのくるぶし 鎌倉三光寺の諸行無常な日常』『世はすべて美しい織物』『時かけラジオ 鎌倉なみおとFMの奇跡』『いつかみんなGを殺す』などがある。

「2023年 『月はまた昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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