- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103553113
作品紹介・あらすじ
才能に焦がれる作家が、自身を主人公に描くのは「承認欲求のなれの果て」。認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いま注目を集める直木賞作家が、成功と承認を渇望する人々の虚実を描く話題作!
感想・レビュー・書評
-
僕たちが手にするはずだった黄金、可能世界について。
著者・小川哲氏を主人公にした私小説的な6連作短編集。直木賞受賞後の第1作。
なかなかレビューを書くのが難しい一冊。人によって好みも評価も大きく異なりそう(私はかなり好き)。
多くの人は「思てたんとちがう!」となるかも。
というのも、オーソドックスなフィクション作品ではないからだ。
私小説的かつエッセイ的でもあり、よりダイレクトに著者の頭の中とリンクさせられる。自分の思考が侵食されて、読みながら酔うというか道に迷うというか。
小川さんの大学院生時代から今までにあった(とされる)身近な(?)エピソードを、ここまで深みのある物語に昇華できるのかと驚いた。
いや、物語にせざるを得ない人種が小説家なのかもしれない。
(自分を含めた)人間の愚かさ、かなしさ。世界に存在すること自体の不安。
読みやすいのに余韻が残り、読後は考えることを止められない。
著者は、物事を見る目、解釈の仕方が多面的で、ウソや欺瞞を「悪だ、ダメだ」と二元論で即断しない。
それは小説家であるがゆえに、常に他者に自分を投影するからなのかもしれない。
「僕たちは手に入れることのできなかった無数の可能世界に想いを巡らせながら、日々局所的に進歩し、大局的に退化して生きている。きっと、そうすることでしか生きていけないのだと思う。」
….だよね。あまり知りたくなかったけど。
「思てたんとちがう!」となる可能性もありますが、是非読んでみてください。 -
さらさらっと読了。
だんだん文体にハマる感じ。
人生を円グラフで表したら「カテゴリー・ミステイク」を犯しちゃうよねって話や、印象的な日以外のことをきちんと思い出そう!という考えだったり、占い師と小説家の似ている点など、なるほど、そんな視点が…と思いながら読んでしまった。
自分も割と変なところで「なぜ?」と思ってしまうこともあるが、小説家であり自分よりも確実に本を読んできておられる方の切り口は全然違って面白いなとも思った。(フィクションだけど)
これはエッセイではないけど、この方のエッセイも気になる。
プロローグなどで触れられている哲学者については軽く調べてみたい。 -
2024年本屋大賞ノミネート作品
何とも読み心地良く、調子の良い小説でした。
登場人物の主人公となる僕、小川さんは御本人の投影かな?何かもっとこう海賊みたいな話なのかと、タイトルだけで判断したけれど、ちょっと違いましたね。
価値観や捉え方、明確な答えがないものばかり。周りに流されてその答えが分からなくなったり、自身を見失ったり。難しくも理解し得る著書でした。面白い。 -
作家小川哲が小説家が望むものとは何か? 嘘と欺瞞と誠実さと… #君が手にするはずだった黄金について
■きっと読みたくなるレビュー
作家小川哲を主人公に、友人や恋人たちのエピソードや小説に対する解釈が綴られる連作短編集。前提としてフィクションではありますが、自身のエッセイ風にも読め、どこまでホントかウソかが分からなくなるような小説。
読めば読むほど絶対創作だよな~と、分かってくるところがニクイ。小説家としての職業を変態的に楽しんでいる、でも悩みや葛藤も感じられ、ユーモアあふれる挑戦的な作品でした。
・プロローグ
学生時代、就職試験のエントリーシートを書くのだが… 主人公小川哲が小説家になる前、当時の彼女との関係性が描かれる物語。
まず思ったこと「めんどくさっ」
哲学好きな奴って、絶対めんどくさいんだよな~(偏見)。でも得意なことも苦手なこともあってこそ、ひとりの人間。そして人生も幸せも、その人それぞれですよね。
・三月十日
東日本大震災の前日、3/10のことを思い出す物語。なんでもない一日のなんでもない真相、そして自分への誤魔化しと恋人の気持ち。胸がじっと痛くなった作品。
・小説家の鏡
占い師のウソを見破りに行く物語。人を幸せにできる会話、創作は、嘘であっても素晴らしいと思うけどな~
・君が手にするはずだった黄金について
かつての友人がインチキ商売に手を出し、ついにはSNSで炎上してしまう物語。ここまで読んでくると、いわゆる「いい人」は作家になれないんだろうなと分かってきますね。
・偽物
仕事で知り合った漫画家の物語、彼が腕につけている腕時計は…。最もミステリータッチの作品、真相が興味深く、人が傷つく瞬間を垣間見た感じがしました。
・受賞エッセイ
短編作品の締め切りが迫っている中、自身のクレジットカードが不正利用されていると連絡が来て…。受賞した作者のエッセイとして文芸誌でよく見る内容そのままです。でもコレ、小説の一部なんですよね。
ネガティブな感情で溢れているように見えますが、実はまだまだ意欲的な作品を書いてやろうという力強い意思が感じられます。
■きっと共感できる書評
人は自身の職業について考えることが度々ある。自分が本当にやりたい仕事なのか、果たしてこのまま続けてもいいのか… 世の中には「天職」という言葉がありますが、それは神から才能を与えられた一部の天才にしか適合しないものだと思っていました。さて、自分に与えられた天職はなんだろう…?
しかし本書を読んでみると、実際はそんなにも仰々しいものではなく、ただ自分が嫌にならずに行動できることで社会貢献できていれば、もうそれは天職と言えるということが分かりました。
小川哲先生も本書の中の小川哲も、間違いなく小説家が天職なんでしょう。小川哲さん、楽しい作品をありがとうございました。-
aki さん
こんにちは。
「自分が嫌にならずに行動できることで社会貢献」
って言葉が素敵で、ストンと腑に落ちました。
”自...aki さん
こんにちは。
「自分が嫌にならずに行動できることで社会貢献」
って言葉が素敵で、ストンと腑に落ちました。
”自分探し”という言葉が流行ったことがあるけど
当時は、なんだかなぁ…と思っていました。
目の前の課題をこなしているうちに
見えてくる事ってありますよね。
そして、結果として社会貢献。
いいなあ、いい、良い!です。
2023/12/24 -
yyさん、こんちわです!コメントありがとうございます。
そうそう、自分が夢に描いた職業に邁進している人は実はごく一部で、
ほとんどの...yyさん、こんちわです!コメントありがとうございます。
そうそう、自分が夢に描いた職業に邁進している人は実はごく一部で、
ほとんどの人は疑問を持ちながらも居心地がいい職に落ち着いちゃう。
でもそれって自分に合ってるからこそ仕事を続けれているんすよね~
「自分探し」って言葉は、言い訳がましいネガティブな要素を
含んでますが、明るい未来を望んでいる言葉でもあります。
おっしゃるとおり、与えられた職場、与えられた業務を進めるうちに、
いつの間にか周りから天職だねって、言われるようになるんでしょうね。2023/12/24
-
-
「プロローグ」
「三月十日」
「小説家の鏡」
「君が手にするはずだった黄金について」
「偽物」
「受賞エッセイ」
小川という名の小説家が主人公の連作短編集です。
印象的だった言葉。
「小説家に必要なのはなんらかの才能が欠如していることです。僕たちは他の何かになれないから小説を書くのです」
本当かなとは思いますが…。
『君のクイズ』が面白く読めたので、この本も図書館に発売日前にリクエスト票を出したら予約1番目で借りられたので、もったいないから最後まで読みました。
私には難しかったです。
ミステリーかと思っていたら違ってどちらかというと純文学的な小説家の自伝のような話でした。
各短編の目の付け所はいいと思うのですが、だからそれが何を表しているのかがわかりませんでした。
「小説家の鏡」の友人の妻が青山のオーラリーディング占い師に言われて小説家になろうとする話が一番面白いと思いました。
「受賞エッセイ」でクレジットカードが不正利用された話は怖いと思いました。
全部実話なのか、小説なのかとか何も説明がないので、本当に何を読まされたのかわからず、レビューしないでおこうかとも思ったのですが、せっかく(予約1番目だし)読んだので書きました。 -
黄金はバブルですね
弾けるだけでも価値がある -
ブクログで話題になっていたので手に取りました
小川という作家が主人公の物語。
これは作者のことなのか
フィクションなのかはわかりません
そもそも物語というよりは
小川さんの思考をのぞいてるような作品で
エッセイのような感じもします
この小川の考え方が
作中の言葉を借りると めんどくさい。
その一方でなるほどと思ってる自分もいたり。
序盤は難しくてあー無理かなと思ったけど
頑張って読んだら
占い師、片桐、ババのあたりは
面白く読めました
こんな人いるんかな。。
そしてこんな風に分析されたら怖いな。笑
-
収録作は、全て一人称・「僕」(=小川哲)という小説家が主人公の連作短編集でした。これは自伝? 私小説? と感じながら読みました。
ご存知の通り、多くの文学賞受賞(ある意味偉業)を成し遂げた記録だとすれば(多少の美化も含め)自伝となるのでしょうが、少し違う気がします。
「僕」の日常そのままに願望や理想が加えられ、さらに話を面白くする虚構があるとすれば、私小説でしょうか?
作家となった「僕」が、自身を主人公にした小説を書き始め、承認欲求に囚われた怪しげな人々と出会います。いずれも身の丈を超えた己の価値を広め、他からの称賛を望む人物なのでした。
「僕」は、彼らの欺瞞や傲慢さを暴いていきますが、うそを物語にしている作家の「僕」は、虚構にまみれた彼らとある意味同じでは、と自問自答していきます。
本書の著者と作中の「僕」の線引きが曖昧(小説なので当然)で、虚実の淵に立たされる感覚です。
加えて、多々身に覚えがあり、私たちの足元も不安定になります。実力がなくても(偽物でも)自尊心を満たしたいとか、人が多面であるが故の偏見とかは、誰もが自分に内在すると自認しているはずで、小川さんはその辺を鋭く突いてきます。その感性に裏打ちされ、読み手も「自分は何者か」と考えざるを得ない境地に誘導される物語でした。
でも所詮私たちは普段無防備で、思い込みの記憶の捏造もあり、油断と隙だらけだからこそ、虚構の小説が好きなのでしょうかね‥。 -
これは真実?作り話?どっち??と頭のどこかでずっと考えながら読んでしまう1冊。
でも小川さんの思考をのぞき見しているようで面白かった!
カード会社の電話に振り回されているところにクスリとしちゃったり、ババさんのこと考えすぎじゃ?と思わず突っ込んだりしたくなる。
まあ、読者をそうさせようと作った話かな?
面白い人ですね、小川さん。 -
小川哲先生の自伝小説?ご本人が書いておられるが、小川さんは
他の人がなにも感じずに通りすぎてしまう出来事に気を取られ、前に進めなくなることごあった。
これは才能だろうか?それとも才能の欠如だろうか?
僕だって、気にしないで生きていけるなら、気にせずに暮らしたい。
この気になるところが、小説に最高の味わいを与えていると私は思う。
思わず立ち止まって考えてしまい。読書が前に進むペースが緩くなるけと、めっちゃ楽しい。
そして知識の多い小川さん、すごく勉強になる。そして一人の人として興味深い
図書館本だからできないけど、本に線を引きながら読みたい。
プロローグの読書についての読書についての見解からはまりました。
小川哲さんが語る小説とは何か?小説家とは?そして読書とは?
購入して再読したくなる一冊
やっぱり天才だと思います。
やっぱり天才だと思います。
一章のプロローグを読んで、小説家というか小川さんすごいなぁと思いました(^^)
物事をみるアプローチが常人とは違...
一章のプロローグを読んで、小説家というか小川さんすごいなぁと思いました(^^)
物事をみるアプローチが常人とは違うなあと。