精神の考古学

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103659037

感想・レビュー・書評

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  • まず吉本隆明が命名したというタイトルがいい。内容は40年前のネパールでの修行体験談。ならば読まないわけにはいかない。しかしながら、まあいつものことながら、理解できたのは半分ほどか。理解というか、体験談の部分は読めるのだが、ゾクチェンの本質的な部分についてはほとんど理解できないまま読み終わった。もう雰囲気だけで自分に引き付けて感想を書いておく。(それは、哲学書の読み方として良くないということを苫野一徳さんの話で何度も聞いているのだが。)最初に、暗黒舞踏の体験をしたという友人の話がチラッと出て来る。最初がそれか、という感じだけれど、僕自身、本書を読み始めて最初に思い出したのは白虎社の合宿であった。自然の中での1週間、ストイックな生活、動物の真似もしたし、なんとなく近さを感じていたので、暗黒舞踏の4文字を見つけたときにはやはりそうかと思えたわけだ。そして終盤の暗黒瞑想(また暗黒か)。もうここは一気に追体験をしてしまった。自分も同じ場所にいる気分であった。光のない世界で1週間、脳はどういう変化をきたすのか。ああ体験してみたい。妻に話すと、「盲目の人はずっとそうなんじゃないの?」と言う。いや、なんか違う。視神経は生きているけれど、入力がシャットダウンされる。ずっと目をつぶっているというのとも違うだろう。まぶたを閉じても光は感知できるし。闇の中とは言え、目がなれるとある程度見えてくるような気もするがどうなんだろう。音や手触りだけを頼りに動くのだろうか。もっとずっと前の段階に出て来る、自然の中で、何も考えずに日光を大いに浴びて行うヨーガもやってみたい。とにかく気がかりなことを一切なくしてしまうという経験をしてみたい。仕事を辞めたところで、家族のことや、その日の食事のこと、老後の生活のことなどなど、大小さまざま気にかかることはあるわけだから。自然の中に身を置いて一切を忘れてしまうという体験をしてみたい。ロゴスの世界からピュシスの世界に入って行きたい。草木国土悉皆成仏を想い、花鳥風月を愛でたい。石牟礼道子の世界にひたりたい。「アジア的段階」を抜け出して「アフリカ的段階」に入りこんでみたい。結局「チベットのモーツアルト」は読まずじまいである。

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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