- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103892113
作品紹介・あらすじ
金はなくても腹はへる、切ないお江戸の庶民の毎日。慶次郎シリーズ第七弾。
感想・レビュー・書評
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慶次郎縁側日記シリーズ第七作。再読。
今回はホッとするというよりも、この後どうなるんだろうかと心配になる話が多かった。
表題作の「やさしい男」とは何と蝮の吉次のこと。
身投げしようとする女を見かけ『放っとけ』と思いつつも気がつくと女を必死に止めている。それどころか行き場がないという女のために必死に職探しまでしてあげている。
蝮の異名に反して女性に関しては見る目がない吉次なのでまたまた騙されるのか…と心配になったが、想像とは違うタイプの人間だった。
最後まで面倒を見ようとする吉次に、慶次郎も島中賢吾安心して任せる。なんだかんだで、吉次はやっぱり『やさしい男』なのだ。だから憎めない。
『仏の慶次郎が聞いて呆れるよ』『俺の方がよほど慈悲深く出来てらあ』と憎まれ口をたたくところも可愛らしい。
『腹が立つから、生きていられるんだ』
という一言に吉次の人生が集約されている。
似た構図なのに全く違う話になっているのが第一話「理屈」。
こちらは食い詰めた挙句牢屋に入りたくて〈花ごろも〉で無銭飲食した男の職探しに奔走する慶次郎の話。
ところが全く上手く行かず(マッチングの問題?)、結局時が解決してくれたという、慶次郎骨折り損の話なのだが何故か『辻褄が合ったように思えて』ホッとする気にもなる。
「三姉妹」
『地獄』という身売りの商売をしていた母に申し訳ないと、みずから『地獄』になった三姉妹。そんな母と姉たちに反発したものの結局男に騙され自害したもう一人の妹。
慶次郎の娘・三千代を死に追いやった常蔵(改名し喜平次となる)の娘・おとし(改名しおぶんとなる)は辰吉との子供を身籠るも悩んでいる。
何とも息苦しくなるような両者の境遇なのだが、三姉妹は心の内はともかく表向きは慶次郎をやり込めるほど堂々としているし、おぶんも辰吉が守ってくれて慶次郎も後押しをしている。無事に子供が生まれることを祈る。
「断崖絶壁」
職探しが上手く行かなくてあらぬことを考えてしまう男。家族にもにらまれて行き場がないのが辛い。
「悔い物語」
女に騙されて店も財産も失った男の可哀そうな話…と思ったら単なる自業自得の物語だった。どう収拾が着くのかは男の誠実な謝罪と女の受け止め次第。
「除夜の鐘」
社交辞令のつもりが相手は本気で受け止めていて…というのはよくある話。だがここまで来ると怖い。だがこういう話は現代にもありそう。この事件に何故か三千代と皐月の姿が重なって浮かぶ晃之助に彼の心の内が垣間見える。除夜の鐘が彼らの心の澱を払ってくれるのなら良いのだが。
「隠れ家」
古着屋に古い巾着を忘れてきた魚売りが、翌日忘れ物を取りに行くと、巾着ではなく中に入っていた金と巾着代を渡してくれたという噂話から、かつて逃した押し込み強盗に行き着くのだから吉次の嗅覚はさすが。
だがその古着屋の評判は誰に聞いても良く言う者はいても悪く言う者はいない。吉次に十手を預けている同心・秋山ですら吉次の言うことなど鼻にもかけない。
吉次の推理は当たっているのか、全くの的外れなのか。
シリーズを追いかけている者としては吉次の推理が当たって欲しいのだが、一方で手柄を立てて秋山らの鼻を明かしてやるのも吉次らしくないと思ってしまう。
結果オチは吉次らしいもので満足。吉次には可哀想だけど。
「今は昔」
江戸所払いを受けた元泥棒・作次に出会った慶次郎。行き倒れたところを助けた慶次郎は彼が名乗った「作兵衛」として藤沢へ帰そうとするが、同心・秋山忠太郎に見つけられてしまう。
この作品での秋山は吉次や慶次郎目線で見るので嫌なヤツになるのだが、きっと彼は出来る同心なのだろうなと思う。
それにしても江戸所払いを受けても親の墓参のためなら江戸に戻ってきても良いという慣例があったとは知らなかった。
※慶次郎縁側日記シリーズ一覧
全てレビュー登録あり
①「傷」
②「再会」
③「おひで」
④「峠」
⑤「蜩」
⑥「隅田川」
⑦「やさしい男」本作
番外編「脇役」 -
吉次に燻し銀の魅力あり2008.07.26
コメントありがとうございます。
私もこのシリーズ大好きです。特に吉次は嫌なヤツなのに憎めなくて。
私は図書館本で追いかけ...
コメントありがとうございます。
私もこのシリーズ大好きです。特に吉次は嫌なヤツなのに憎めなくて。
私は図書館本で追いかけてますが、ゆっくり読み返しています。
吉次わたしも好きです(〃ω〃)
また良い時代物あったら教えてくださいね♪
吉次わたしも好きです(〃ω〃)
また良い時代物あったら教えてくださいね♪
こちらこそ、よろしくです(^_^)
こちらこそ、よろしくです(^_^)