- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104299041
作品紹介・あらすじ
高千穂岳に近い山荘で出会った一頭の鹿のこと、イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の初夏の風に吹かれながら友と交わした会話、トルコのモスクでのヘジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、少年少女による殺害事件への強い思い-喜びも悲しみも深く自分の内に沈めて、今いる場所から、一歩一歩確かめながら考えていく。待望のエッセイ。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
なのに僕は
こっちにいるからあっちに行けない
と言った黒木瞳の詩を思い出す。
詩の題は「境界線」だった。
このエッセーには著者が、深く丁寧に考えている物事が書かれていて
今ひとつピンとこない部分もあるが、たびたび出てくるのが自分と
他者の間にある「境界」のこと。お互いを理解するにはどうしたら
よいのだろう、そもそも境界というのはなぜ存在するのか、自分の境界を
押し広げて向こう側を覗くこと・・・奥が深い。
その後、小説「沼地にある森を抜けて」も読んだが、小説でも「境界」が
テーマの一つになっていて、はからずも「ぐるりのこと」を読んだことが
予習になった。 -
梨木香歩さんのエッセイ、というには少々重い著述されたもの。
先に読んだ『村田エフェンディ滞土記』に繋がる作者の思い、といったもの。
個を守るために確たる境界は必要だろうか?
生垣のように、その境界自体に色々なものを内包したあちら側とこちら側も
存在できるものは造り得ないのか。
中に、長崎の少年が幼児を殺害した事件について書かれた項がある。この作者の
見方はとても沁みた。
あれから何年も経つし、語られた事も多いけどこのようにストンとわたしの
心に受け入れられる気持ちや、考えはなかったように思う。
読み終わって、「ぐるりのこと」を思いながらこの装丁を見直すと、また
とても良い。買うなら単行本が良いなあ。 -
旅先で、風切羽の折れたカラスと目が合って、生き延びるということを考える。
沼地や湿原に心惹かれ、その周囲の命に想いが広がる。
英国のセブンシスターズの断崖で風に吹かれながら想うこと、トルコの旅の途上、ヘジャーブをかぶった女性とのひとときの交流。
旅先で、日常で、生きていく日々の中で胸に去来する強い感情。
「物語を語りたい」ー創作への向かう想いを綴るエッセイ。
ここまで深く考えることができるなんてうらやましい。
しかも、常識に惑わされることのない独自の視点で。
このエッセイを読んだあとに、梨木さんの小説を読むとまた違った感想を得られるかもしれない。 -
自分のみじかな社会や文化とそうでないものの間にある境界について、想いを巡らすエッセイ。分からないものに対しても、偏見を持たず心を開き理解したいと願う。何度も繰り返して読みたい。
-
すばらしく静かな本だと思った。
エッセイというには、硬いような、難しいような…誰かに勧める?と聞かれれば、答えはNOだけど。
わたしは、好きかもしれない。
硬質な文章は説明文みたいだし、考え方もわたしとは異なるタイプだし。この人の小説は好きなんだけどな、と最初はがっかりしたけれど。
少しずつ読む分には、嫌いじゃないかも。 -
タイトルから勝手に軽い内容のエッセイを予想していたんだけど、梨木さんに軽い内容などないのだった・・・。
連載時の時事が多少絡んでいる内容で、基本的にはなんだか変わってしまった日本や日本人、世界に対してどうにもならない思いがあるけど、やりきれなくて悲しい・・・というような感じ。
世の中みんながみんな自己中心的とは思わないけど、みんな多かれ少なかれそういった面は持っているものだし、それを隠すでもなくおおっぴらに欲望のままに行動しているから、それが問題なんだな。
かといって、何をどうこうしようとも思わないし、どうこう出来るとも思わない。だから梨木さんは悲しんでいるようだけど、
まぁしょうがないなぁなんだよ。 -
梨木香歩のエッセイ。ちょっと難しい。著者が様々な場所を巡り、様々なことを考え、思ったことが書いてある。
-
静謐な雰囲気のエッセイ集。
少し重い感じ。決して嫌な重さではないのだけど…。
草木や環境の事、そして宗教や事件(報道)に関しての考察に、色々考えさせられた。
あと、境界についての話も多くて、身の回りの事を“ぐるりのこと”というのが、なんだか凄くしっくりきた。