国売りたまふことなかれ: 大蔵省にからめとられた日本

著者 :
  • 新潮社
3.50
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 4
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104354016

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  大蔵省がいかにして国を牛耳っているか、その表裏を書いた本です。

     大蔵省の力の源泉は「金と人」にあるらしい。この本を読むとその実体のいくつかをかいま見ることができる。

     「金」とは国の予算はもちろんだが、公務員の給与体系もいわばお手盛りで大蔵省に手厚くなるように管理している。また国税庁を使って、国民の財布の中も監視している。このことは権力者たちに対する大きな圧力となる。

     「人」とは人事権である。例えば官僚のトップの事務次官でみると、_こういうことに疎い私などは事務次官はその省庁の生え抜きがなるものだと思っていた_1953年大蔵省に入省したキャリア官僚は、大蔵以外に国土庁、防衛庁、経済企画庁、北海道開発庁の事務次官になっている。これ以外にも予算の査定件を持つ強みで、あちこちの官庁に様々なポストを確保している。

     傍目には明らかに官僚が謝罪すべきような事柄が起きても、彼らは決して謝らない。このことの原点は一体何なのか と以前から不思議に思っていたが、本書でその一つの理由を知った。その部分を引用する。

    *****引用開始*****

     高等文官試験に合格して、各省の高級官吏になった人たちは、「天皇の官吏」として、政治・行政の実権を握った。彼らは、試験によって選抜された「一代貴族」としての特権を享受していたのである。そして、戦前の高級官吏たちが忠誠を誓い、責任を負っていたのは、国民ではなく、天皇だった。天皇には政治的な責任がなかったがゆえに、官吏たちもまた、責任とは無縁だった。日本の官僚機構の無責任性は、「大部屋主義」と「稟議制」という二つの執務様式だけでなく、「天皇の官吏」としての歴史からもきている。

     * 一部省略 *

     それだけではない。官僚機構は、国民から選挙で選ばれた国会議員さえをも、表向きはともかく、腹の中では見下している。戦前にあっては、国会議員の宮中席次は中央官庁の課長クラスにすぎなかったため、今でもキャリア官僚たちは「国会議員はせいぜい課長クラスの存在」と見なしているのだ。

    ******引用終わり********

     そうか、今や主無き組織となった日本の官僚機構は将来正当な主が再び出現するまで、ただひたすらその組織防衛に努めているのか・・・

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

川北隆雄(かわきた たかお)
1948年、大阪市に生まれる。東京大学法学部卒業後、中日新聞社入社。同東京本社(東京新聞)経済部記者、同デスク、編集委員、論説委員、政府税制調査会専門委員などを務める。現在、ジャーナリスト、専修大学非常勤講師。著書に『日本国はいくら借金できるのか』(文春新書)、『財界の正体』『通産省』『大蔵省』(以上講談社現代新書)、『経済論戦』『日本銀行』(以上岩波新書)、『図解でカンタン!日本経済100のキーワード』(講談社+α文庫)、『「財務省」で何が変わるか』(講談社+α新書)、『国売りたまふことなかれ』(新潮社)、『官僚たちの縄張り』(新潮選書)『データベース早わかり』『通産・郵政戦争』(以上教育社)

「2014年 『「失敗」の経済政策史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川北隆雄の作品

最近本棚に登録した人

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×