- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104588039
作品紹介・あらすじ
「なぜ人間は人間を殺すとあんなにも動揺するのか、動揺しない人間と動揺する人間の違いはどこにあるのか、どうして殺人の感触はああもからみつくようにいつまでも残るのか」-死への恐怖、悪意と暴力、殺人の誘惑。ふとした迷いから人を殺した現代の青年の実感を、精緻な文体で伝え、究極のテーマに正面から立ち向かう、新・芥川賞作家の野心作。
感想・レビュー・書評
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ただただ、このようなものを書けることに驚きます。
読んでいるとき、“このまま「私」の悪意に引きずられてしまったら、自分はどうなってしまうだろう”と何回も思ってしまいました。
ビビりました笑 精神の健康によくないので少しずつ読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平坦な手記がずっと続くので、退屈になりそうだけど最後まですんなり読めてしまった。相変わらず、静かで、陰鬱で、くせになる。この陰鬱さは作者の自己投影だったりするのかな。
生死の間をさ迷うような重病に侵されながら、すべてを憎み、すべてをどうでもいいと考えることによって死の恐怖を克服しようとした主人公。普通の人ならその感情にどこかで歯止めをかけるんだろうけど、主人公はそのまま成長してしまった。衝動的に親友を殺し、後々も罪の意識に苦しめられることになる。
祥子の「簡単に死をほのめかすのって、卑怯な人間のすることなんだよ」という言葉と、リツ子の「どこかで、苦しんでいてもいいいから、生きていなさい」という言葉が刺さる。ずっと死を考えていた主人公が、最後に「まだ死ぬわけにはいかない、自分が殺人者であるということを意識し続けながら生きていかねばならない」とちゃんと答えを出しているところに少しだけ救いを感じた。
被害者側に立って読むと、全く違う感情が出てきそうだけど…。
最後の3行は何か怖い意味でもあるのかな??と深読みしそうになった。ただ単にそのままの意味なんだろうけど。 -
善と悪、人を殺した少年の手記。とても暗い話だが、少年の心情が良く理解できて、奥が深いと感じた。さすが芥川賞作家だなぁと所々で思わせる。ただし、少々無理な設定と展開があるのが難点である。
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まずテーマがあり、それに見合う物語を作ってみた。そんな感じがした。ストーリーというか、ことの顛末はあまり面白くない。無理な設定が多すぎです。この主人公にあってあのような親身になってくれる人と関われるとも思えないし、悪人のふりをしているけれど実はいい人なんです、みたいな設定は反吐が出る。
でも、でもね。でもとても面白い小説でした。社会に対する虚無や孤絶や疎外感を抱える人にとっては、中村さんの小説は聖書にも等しいのではないかと思うことがあります。この本は確かにまだ序章。あちらこちらに不完全燃焼な印象はありますが、その世界観は僕にとって常に◎です。 -
難病・自殺・殺人・贖罪〜15歳で難病TTP(紫斑病)に罹患した僕は死の恐怖から世界が壊れてしまえば良いとさえ考えるようになった。悪化して意識を失い,目覚めると難病は克服していたのだが,世界や他人が違うように見える。復学しても違和感は否めず,公園での首吊り自殺を実行しようと出掛けると,そこに親友のKがいて,このまま大人になっていくのはつまらないと云うので,自殺前にKを池に突き落として殺してしまった。首吊りは失敗し,Kの母親だけに疑われながら高校を卒業して,地方の大学に入学した。少年の凶悪犯罪はなぜ多発するかというゼミの議論で武彦と親しくなり,悪事を気にせず実行する武彦に引きずられていく。睡眠薬を呑んでの自殺は,僕を気に掛けてくれている女の子によって救われてしまった。大学を中退し,バイトで入った喫茶店の女主人が,自分の娘を殺した少年が退院してきたら殺してやろうとしている計画に僕は関わり,いざ実行しようとすると,相手の少年は幼い少女に手を出そうとする現場に直面し,女の子を救うことに切り替えてしまうが,少年は別の母親によって刺し殺されてしまう。僕はK殺しの犯人として自首する〜絶望・・・しか見えないのかと思ったら,最後に光明がさすのだねえ。途中までドロドロしていたのが,少しずつ澄んでくるような感じ。ドロドロが長いけど。土の中の子供に先行する作品
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絶対人殺してる
ってな事で、中村文則の『悪意の手記』
もうね、中村さん絶対人殺したとこあると思うんよ。
こんな感情、人殺さんと書けんと思うよ。
深い、深いよ…
実際にわしが殺られたよ
2022年49冊目 -
手記1,2,3で構成される犯罪者の物語。
手記1で、「死にたい」と言ってるのに人を殺してしまうクズぶりを発揮し、言い訳ばかりしているのに、手記2で、少しまともな人間に出会い、手記3では、急にドラマチックな展開になる。
今までの作者の小説の中ではかなりエンタメ性が強く、特に手記3は結末にドキドキしながら読んだ。
祥子の「理由なんてないよ。理由を作ると、必ずそれに反対する言葉が出てくるでしょう?だから理由を作ったら駄目なんだよ」というのがこの小説の本質かな?
本当に知りたい「なぜ人を殺してはいけないか」や、全ての人生に関する疑問には何も答えない。
なぜなら理由を作っては駄目だから、なんだろう。 -
結末は少し残念。 決して異常者の話ではなく誰でも起こり得る物語。+みんな、自分に降りかかった困難から逃れようといろんなことを考えてるはず。自分に嘘をついたり気を紛らわせたりすることはごく自然なこと。 みんなが持ってる内なる世界を小説として言葉として描ける才能はすごい。 只この作家、何を読んでもこんな感じ。嫌いではないが他の本も大体こんな感じ。(でも結構他も読んでるので、やっぱりこういった内容が好きなのかな!)
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「生きていて欲しいと思う。あなたが、過去に何をやったのだとしても」「どこかで、苦しんでいてもいいから、生きていなさい。私も、同じように、生きているから」