- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104598038
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
河合隼雄の箱庭療法、中井久夫の風景構成法、こういうのはもはやDSMやCBTの下にノスタルジーとともに語られるのみの遺物となってしまったのだろうか? 否、そういう風潮が軽症精神疾患の増殖を招来しているのではないか?
歴史に問いかけけてみる試みは、この世界でもおろそかにされてはならない。 -
最相さんのルポが好き。絶対音感も、星新一も素晴らしかった。この本も素晴らしいけど、他とはちょっと違うな、と思いながら読み進め、最後で納得。もっと人が生きやすい社会になったらいいよね…。
-
「絶対音感」「星新一」で有名なノンフィクション作家、最相葉月
その視点とこだわりの取材に圧倒された。
帯には河合隼雄、中井久夫という、最近私が関心を持っている臨床心理の大家お二人の名前がある。これは絶対面白いに違いない、ぜひとも読まねばということで、衝動買いした。
文献を読み込む、関係者にインタビューする・・・だけではなく、なんと臨床心理の大学院に入学してしまう。
フロイト、ユングをはじめとした欧米の心理学を如何に日本に持ち込んだかという考察があるが、中心は河合隼雄の箱庭療法、中井久夫の風景構成法である。
ただ黙って聞く、寄り添う・・・これがもっとも大事。
色々な厳しい症例、これが箱庭療法、風景構成法によって、どのようになっていくか。その時のクライエントとセラピストは・・・具体的な事例が迫ってくる。
中井久夫とは最初インタビュアーとして向かい、次に風景構成法によるカウセリングのクライエントとして接し、さらに驚くことに何とセラピストとしてクライエント中井に対して風景構成法を行うのである。
そのなかで著者は「いまだかって経験したことのない内容の濃い時間」を感じる。
最後に著者は告白する。
この本を書き上げる最後の段階で、精神科医を受診し「双極性障害II型」と診断された。ここではじめて自分の問題と向き合ったことになる。
単なる書き物ではない、自分自身をかけた本物を見たと思ったのである。 -
自分を知ること、苦悩を知ることがいかに困難か。著者も含めそこに向かい、働き続ける人がいる重み。時代と社会をあぶり出す視座もすごいが、沈黙を護る意義を示したことが大きい。
・中井:言葉はどうしても建前に傾きやすい。善悪とか正誤とか因果関係の是非を問おうとする。絵は因果から解放してくれる。メタファー、比喩が使える。
・山中:カウンセリングでの話の内容や筋は、実際は治療や治癒には余り関係がない。それよりも無関係な言葉と言葉の間とか、沈黙にどう答えるとか、イントネーションやスピードが大事。
・村瀬:精神的に追い詰められている人々は、健常者よりずっと鋭い眼力を持つ。
・普通ならば、大丈夫ですか、といわれるところ、お気を付けて、と声をかけられた。主語がYOUであるかどうか。
・絵は防衛手段。自ら絵を描きたいという患者はうまいと褒められる事への期待があった。
・心理臨床の営みの目的は悩みを取り去ることではなく、悩みを悩むこと。
・山中:言語化せずとも癒されることがある
・山中:言葉は無理矢理引き出したり、訓練したりする必要はなくて、それ以前のものが満たされたら自然にほとばしり出ていく。
・中井:先生は子どもの秘密を知りたがる。しかし、秘密を尊重するところから始める。
・因果律のないものをかたるのがいい。因果関係を作るのはフィクション、妄想。妄想は統合失調症の専売特許ではなく、自分との折り合いの悪い人に起こりやすい。
・構成がうまくできることは、ちゃんとご飯を食べる、寝るにつながる。構成法は日常をつなぐ部分を見る。
・受診拒否、言葉を発する恐怖、罰が当たると思う、緘黙も色々
・アセスメントは自分でやった方がエンパワーされる。
・物語を紡ぐということは、一次元の言葉の配列によって、二次元以上の絨毯をおる能力。無理もある。
・ストレスがあると緊張は高まって、しんどいということはわかる。だけど葛藤がなんなのかわからない。主体的に悩めない。
・よくしゃべるクライエントは、よくなってくると黙る。そんな人がキャンセルするようになる。ポジティブな意味もある。
・発達障害は社会の第三次産業化に応じて、可視化されてきた。
・人間の心には必ず二つの側面がある。良くなりたい、けど変わりたくない。
・深いところってどういうところかと突き詰めていくと、なかなか…。宗教はみなそうですが、籠もったり、沈黙したりとさまざまな方法をもっている。そこには表面を断つ、という意味がある。
・双極性障害は「気分屋的生き方をすると気分が安定する」(神田橋條治) -
単にノンフィクションを読んだというより、最相さんやセラピストの世界に潜っていく感覚になりました。
「セラピスト」という職業は、素人目に見ると結局何をする人なのかわからない存在でした。
医者とは違うのか、心理テストみたいなのをされるのか、なんか怪しいことをされて法外なお金を巻き上げられるのではないか…などなど。(ごめんなさい)
そんな、私にとっては謎に満ちた世界を覗くことができ、セラピストへのイメージがガラリとら変わりました。
こんなに研究を重ねられて体系だてられているとは思わず…。
言葉と心の関係や、パーソナリティについてドキッとさせられる文章が所々に書かれていて、自分自身のことやコミュニケーションについて考えさせられました。 -
なかなかの分厚い本で読みごたえがある。
箱庭療法の意味合いがなんとなく理解できた。
一人前のカウンセラーになるには25年かかるそうだ。
ながっ!!-
「一人前のカウンセラーになるには」
どうでしょう?
全うなカウンセラーって稀有なような気がするのは、悪く思い過ぎかな。。。「一人前のカウンセラーになるには」
どうでしょう?
全うなカウンセラーって稀有なような気がするのは、悪く思い過ぎかな。。。2014/04/21
-